MOVIE      2007年映画館で観た感想

 


魍魎の匣
アイ・アム・レジェンド
ベオウルフ 呪われし勇者
ボーン・アルティメイタム
めがね
呉清源 極みの棋譜
ALWAYS 続・三丁目の夕日
リトル・チルドレン
自虐の詩
厨房で逢いましょう
未来予想図
onceダブリンの街角で
スターダスト
エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜
象の背中
ヴィーナス
題名のない子守唄
タロットカード殺人事件
この道は母へとつづく
      
クワイエットルームへようこそ
ヘアスプレー
幸せのレシピ
魔笛
ボルベール<帰郷>
ツォツイ
ミス・ポター
トランスフォーマー
ワルボロ
ハリーポッターと不死鳥の騎士団
恋愛睡眠のすすめ
黄色い涙
キサラギ
街のあかり
絶対の愛
善き人のためのソナタ
ブリッジ
ナンバー23
サン・ジャックへの道
ゾディアック
恋しくて

しゃべれどもしゃべれども
ブラックブック
ヘンダーソン夫人の贈り物
リーピング
パッチギ!LOVE&PEACE
長州ファイブ
ゲゲゲの鬼太郎
不都合な真実
エターナル・サンシャイン
あるいは裏切りという名の犬
バベル
クィーン
ハンニバル・ライジング
東京タワー
悪夢探偵
ブラッド・ダイヤモンド
ママの遺したラブソング
フランシスコと2人の息子
今宵、フィッツジェラルド劇場で

あかね空
アルゼンチンババア 
世界最強のインディアン  
さくらん  
千の風になって
キング 罪の王
バッテリー
蒼き狼
幸福な食卓
リトル・ミス・サンシャイン
ドリーム・ガールズ
ディパーテッド

ウール100%
墨攻
マリー・アントワネット
六ヶ所村ラプソディ

それでもボクはやってない
王の男
幸福のスイッチ
大奥



2007/12/23 【 魍魎の匣 】

魍魎の匣」を観た。原作は第49回日本推理作家協会賞に輝き、シリーズ最高傑作の呼び声も高い京極夏彦の同名小説。膨大な原作だけに映画化はさぞ大変だったのだろうが、途中まで展開も速ければ、俳優陣も早口でついていくのに息切れしそう。
ノスタルジックな雰囲気を出すために中国ロケを行ったそうだが、昭和20年代の日本というよりやはり中国そのもの。
京極堂という古本屋は中野の目眩坂を登り詰めたあたりにあるハズだが、今回中野はかなりの山の中だった(-_-;)なんで?
京極堂の古本屋自体は、たたずまいといい空気感といい「姑獲鳥の夏」の方がよりイメージ通りだったかも。
ただのはっちゃけた女優ファンとして描かれている木場刑事だが、原作のテーマであるだけに木場刑事の切ない物語がカットされたのは残念。
ただ全体的には「姑獲鳥の夏」には描ききれなかったおどろおどろしい京極ワールドっぽさは出ていたし、京極堂夫人と関口夫人の何気ない会話がラストの伏線になっている演出は良かった。





2007/12/16 【 アイ・アム・レジェンド 】

ウィル・スミス主演の「アイ・アム・レジェンド」を観た。「今年度を締めくくるにふさわしい、この冬一番の超大作」というふれこみと、面白そうな予告編につられて観たものの・・・大層な予告編ほど本編にがっかりというパターン。誇大宣伝に騙されたかも(-_-;) 
まるでバイオハザードの柳の下のどじょう。新鮮味が全く無し。
オープニングの廃墟と化したニューヨークの映像はかなり見応えあった。が、圧倒的な敵の数の割に無理のある展開・あまりにも都合良い女性の登場と神のお告げのような台詞などストーリーにつっこみどころあり過ぎ。主人公が宙吊りにされるシーンは、実は恋人を連れ去られたことと同じ手法で仕返しされているという背景があるそうだが何の説明もないまま描かれている。
意外にも謎の敵がホラーもどきでドキドキする内容だが、バイオハザードファンには平気かもしれない。





2007/12/9 【 ベオウルフ 呪われし勇者 】

ベオウルフ 呪われし勇者」を観た。ロバート・ゼメキス監督が、「ポーラー・エクスプレス」同様のモーション・キャプチャー技術を用いて西欧では良く知られた神話をアニメーション化したもの。一見するとまるで実写。
総じて透明感のあるお肌と肉体美が強調される中、見所の一つアンジェリーナ・ジョリーの姿は焦点の定まらない眼差しだけが浮いていたような。全体的にも最新テクノロジーの映像世界はすごいが必要な部分だけCGを使うほうが相乗効果があるかも。
あちこちのレビューにもあるように怪物グレンデルの戦いで、ベオウルフがなんのかんのともっともらしい理由を言いながらヌードになるのには絶句。なんじゃいこのシーンは・・・ぶっ 笑えたしぃ。
私が観たのは2Dバージョンだったが、一部の劇場では3Dメガネをかける3D版で上映しているそうなのでその立体感を体感できなかったことは残念。





2007/11/30 【 ボーン・アルティメイタム 】

ボーン・シリーズ三部作の最終作「ボーン・アルティメイタム」を観た。

劇場公開直前にTVで前2作を放映したのを観たので、記憶も新しいまま鑑賞できた。

世界の諜報戦に驚きつつ、その裏をかく完全無欠の立ち回りは目が離せない。何しろ暗殺者を送り込むのがCIAというのがミソ。

ロンドンのウォータールー駅の雑踏・モロッコタンジールの迷路のような街並み・NYのカーチェイスなど次から次と世界をかけめぐっては土地柄を活かし見せ場を作っている。

ジェームズ・ボンドと同じようにジェイソン・ボーンという役名を聞くだけで惹かれるカリスマ性のあるボーンに魅了された。猿顔マット・ディモンは抑えた表情と少ない台詞でcoolで好感が持てた。

但し、ボーンの資金源は?という大きな謎は残ったまま。





2007/11/23 【 めがね 】

めがね」を観た。
かもめ食堂」の空気感が好きだったので、のキャストとスタッフが再び集った作品ということで楽しみにしていたが、期待ハズレ。
登場人物の背景が不明なままなのは前作と同じで、それはそれでこの映画の魅力なのかもしれないけれどあまりに淡々としていて退屈の極みでうとうと・・・。なんとなくイメージだけを伝えているような感じがした。
‘黄昏る’って言葉がこの映画のキーワードのようだが、その癒しの要素に心地よい風景・おいしい食卓・素朴なインテリア・優しい音楽と前作に通じるようなわかりやすいものを集めたというただそれだけ。大きな海老とビールにだけは心が動いたものの、台詞も心に響くものはなく、「自転車の後ろ」・「メルシー体操」・「氷」これらはちっとも魅力的に思えなかった。良いのは絵葉書のようなキレイなシーンが次々映し出されるエンディングだけ。





2007/11/18 【 呉清源 極みの棋譜 】

20世紀最高の天才棋士、呉清源を描いた「呉清源 極みの棋譜」を観た。
冒頭、93歳を迎えれたというご本人・奥様・主演のチャン・チェンらとご自宅で談笑するシーンが映し出される。川端康成・坂口安吾・谷崎潤一郎からもその存在感を支持され続けたという吾清源の凛とした気品が感じられる。
中国から14歳で日本に渡り、日本人棋士に勝ち続ける一方で、緊迫した日中関係の狭間での苦悩や宗教に走る様子が静かに淡々と描かれ、ところどころ字幕のト書きにて本人の心情を表しているが、チャン・チェンのたどたどしい日本語も他の日本人俳優陣も総じて台詞が聞き取り難い。
ご本人のイメージを大切にした色あいの作品だということは伝わったがあまりにあまりに抑えて描いているためうとうとしてしまうかも。





2007/11/13 【 ALWAYS 続・三丁目の夕日 

2005年公開された「ALWAYS 三丁目の夕日」から2年、「ALWAYS 続・三丁目の夕日」を観た。
東京オリンピック開催が決定し羽田空港・東京駅・特急列車こだまetcと高度成長期の昭和34年が舞台。
前作はこれでもかというくらい涙腺を刺激しまくったものだが、さて今回は・・・?。
親戚の子供を預かる・戦友・同窓会・のら犬・給食・映画全盛時代・元恋人との再会・霜焼けetcと多くのエピソードを描きながらも何故かどれもこれも感動が中途半端。心にジンとくるのは軒並みところどころに織り込まれる前作の感動シーンというのもなんだかなぁ。
特に親戚の子供や許婚との再会はあまり必要性を感じなかったのでそこを削ってでも、逆にあまりにさらっと描かれていた戦友とのエピソードをもっと丁寧に描いてくれていたらと残念でしょうーがない。
ただ忘れたくない昭和のあの時代と「三丁目」の人たちに再会できたことだけは純粋に嬉しかった。





2007/11/11 【 リトル・チルドレン 】

アカデミーで3部門ノミネートした「リトル・チルドレン」を観た。

隣人に必要以上に関心を持つ郊外に住む人々で思い浮かぶのは「金曜日の妻たちへ」であり最近では米ドラマ「デスパレートな妻たち」。そしてこの「リトル・チルドレン」もまさにこのパターンと似ている。
夫との関係も冷え子供とは気持ちが通じないと思っている専業主婦・妻の期待を背負って司法試験勉強中も現実逃避気味の主夫・ロリコンで釈放されたばかりの元受刑者・トラウマをかかえる元警官etc 満たされない大人たちの行く末は・・・。
主演のケイト・ウィンスレットの不倫は短絡的でとても感情移入できるものではなかったのでどーでも良い(-_-;)
が、これに変わってロリコンの元受刑者の逸話が良かった。アカデミー賞助演男優賞ノミネートしたというロニー役のこのジャッキー・アール・ヘイリーは見事に異常さと葛藤を演じていた。この息子を嫌がらせから必死で守ろうとする母親の姿はあまりに痛々しく遺した手紙の一文には胸がつまった。
また、それぞれのラストはこれがベターと思える展開になりほっとした。





2007/11/10 【 自虐の詩 】

業田良家のベストセラー漫画が原作の「自虐の詩」を観た。

いつもとても役に立つ漫画を教えていただいているありがたたい方から薦められた漫画がついに映画化になった!!4コマ漫画をの常識を覆した‘日本一泣ける漫画’をどう映画化されるのかとても楽しみにしていた。原作で印象的なのは何度も登場する幸江の「私は私が嫌いよ」の台詞。
前半には日常にちゃぶ台をひっくり返す暴虐なイサオに耐える幸江を描き、後半にはこの2人の馴れ初めと中学時代の回想シーンとなりこれが前半の謎解きの役割を果たしている。
個人的には、幸江と熊本さんのエピソードが好き。駅での別れのシーンと再会には胸がつまった。後にこの熊本さん役で登場するアジャ・コングははまり役。
予告編で目にやきついている漫画のイサオに似ているパンチパーマの阿部寛はともかく、中学時代の幸江と友達の熊本さんまでもがイメージにぴったり。と、よくよく考えると総じてキャスティングは申し分ない。
「幸も不幸もないんだ。生きていることには明らかに意味がある」という幸江の言葉に救われた。





2007/11/9 【 厨房で逢いましょう 】

厨房で逢いましょう」を観た。

ドイツでレストランを営んでいる天才シェフのグレゴアが平凡な主婦に恋をするほろ苦い物語。料理絡みの話というと最近の「幸せのレシピ」など他にも沢山の作品がある中で、異例ともいえる鴨の毛をむしったり鹿の皮を剥ぐという生々しいシーンまでみせてくれる。この器用な手さばきに期待はふくらむ。
「美食と料理が生きがい」という太っちょのシェフの来年の2月まで予約でいっぱいだという6席までしかないテーブルに座れたお客の顔のなんて幸せそうなことか。芸術的なお料理の数々を見せられて、拍手でシェフを迎えるお客達と気持ちは一体になりそう。
この厨房にグレゴアの料理の虜になった主婦エデンが夫の不在の晩を見計らっては味見をしにやってくる。一言でいうと「図々しい食いしん坊主婦が2人の男の運命を変えた」ってとこでしょうか。このエデン夫妻は似た者同士なのかともにもっと後先考えて行動してほしかった。
ってことで太っちょシェフのグレゴアだけが大人に見え、料理に拍手グレゴアの人柄に拍手 の作品だった。





2007/11/7 【 未来予想図〜ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜 】

未来予想図〜ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜」を観た。

ドリカムの曲「未来予想図」「未来予想図II」の世界観をモチーフにしたラブストーリーだという。

正直ドリカムの曲はほとんど聴かないので、曲のイメージとこの作品を比べることもなく鑑賞した。

スペインの未だ未完成のサグラダファミリア教会やちょっとした路地裏のシーンはなかなか素敵で楽しめたが、内容はトレンディドラマなどで使い古されたステレオタイプのラブストーリーで映画化するほどのものでもないような。ドリカムのファンになら受けるのかな?
ラストの横浜の花火大会の不自然なシーンは誤解が解けないままの展開とあいまってとっても違和感が残った。
あっエンドロールの後にも映画は続くので席を立たないように。





2007/11/5 【 onceダブリンの街角で 】

アイルランド映画「onceダブリンの街角で」を観た。

全米で2館の公開から口コミで132館まで上映館を増やしたそうだ。アイルランドで絶大な人気のザ・フレイムスのボーカルが主演。監督はザ・フレイムスの元ベーシスト。
ストリートミュージシャンとチェコ移民の2人は音楽を通し、恋とも友情ともつかない感情を歌が代弁している。心を打つメロディーと身近な言葉で綴られる歌詞で表現した歌がいくつも挿入される。まさに愛より強いメロディだ。そしてこの男女には役名がない。有名になるにはアイルランドからロンドンに出て行く。
ギターひとつで飛び立とうとする彼も、無償で積極的にその手助けをする彼女も、市井の人々へのさりげない希望の象徴。





2007/11/2 【 スターダスト 】

冒険ファンタジーの「スターダスト」を観た。

様々な困難にあいながら流れ星を探すため、壁の外に広がる魔法の国を旅する青年の冒険を描いている。

頼りない青年が冒険を通してたくましくなっていくのはまぁお約束ながらもヒロインに華やかさが足りなく、この主演の2人にあまりにオーラがない。何故か主演をくっている超豪華な脇役は見応えあった。若さと美貌を手に入れようとする魔女役のミシェル・ファイアーの容貌が醜く崩れていく過程はリアル過ぎ。っていうかつい先日「ヘア・スプレー」を見たあの美貌のイメージをかなぐり捨ててここまでやるかと畏れ入った。そして空飛ぶ海賊のロバート・デニーロもやってくれた!ということでこの2人のユニークな存在感ばかりが印象に残った。





2007/11/1 【 エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜 】

エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜」を観た。

「バラ色の人生」「愛の讃歌」など、数々の名曲で世界中を魅了したフランスのシャンソン歌手エディット・ピアフの生涯を描く伝記ドラマ。

孤独な天才の姿回想シーンを挟みこみながらすすんでいくので、そこいらへんの時系列が混乱してしまいがちになるが、見えるのは愛に傷つき、希望を失いながらも歌への情熱だけは決して失わなかったピアフ像。
ピアフ役のマリオン・コティヤールは実は正統派美人だというが、薬物中毒や不摂生がたたってその姿はヨボヨボの老婆そのものに見える47歳までのピアフを見事に演じきる。子供時代に極貧の生活から始まり路上で歌いはじめやがて成功をつかみスポットライトを浴びる表向きのキレイなイメージが覆されるほど、酒癖が悪く下品で傲慢な姿を熱演。これは怪演とも言えるほど。
何があっても歌い続け、「水にながして」の♪いいえ私は後悔していない♪の歌詞はなんとも重みがある。





2007/11/1 【 象の背中 】

秋元康が新聞に連載した小説を映画化した「象の背中」を観た。
タイトルは、死期を悟った象が群れを離れ死に場所を探す旅に出るという言い伝えに由来。
久し振りに不愉快な映画を観た。
これまで一流企業の一線でバリバリ働いて、円満家庭で、愛人までいる恵まれた?サラリーマンが突然死の宣告をされるのだが、有り得ない程話が綺麗過ぎ。あまりに主人公に都合の良い妻・子供・愛人etcなので安っぽいセンチメンタリズムにしか見えない。現実離れした出来過ぎた妻、キレイ過ぎる不倫etc数々の恋愛本の筆者でもある秋元康の理想世界かぃ。
甘すぎるっ!





2007/11/1 【 ヴィーナス 】

ヴィーナス」を観た。
主演はかの‘アラビアのロレンス’の名優ピーター・オトゥール。受賞ならずも本作で8度目のアカデミー賞ノミネートを果たす。

20代の奔放な女性を求める老練なプレイボーイの姿を切なく描いている。年齢が年齢だけにエロ爺と切り捨てることもあるかもしれないけれど主人公モーリスは人生を謳歌し、「快楽の追求のために生きている」と言い切る。先の見えた老人に‘ヴィーナス’と思われる若い娘は美人でもなく教養もない若いだけが取り柄のいまどきの女性という設定がミソ。精神的には老いを感じさせない情熱もヒロインにすっぽかされた姿なんて気の毒でなんかど〜んと暗くなってしまった。、この作品はあくまで淡々としていてそれだけにリアルさが重い。
本来ヒロインがもっと魅力的で全体的にコメディータッチに描いてくれたら観やすかったかもしれない。





2007/10/30 【 題名のない子守唄 】

伊映画「題名のない子守唄」を観た。
かの「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督最新作。
あるウクライナ女性の哀しい秘密を巡るサスペンス。この監督の「「ニュー・シネマ・パラダイス」や「海の上のピアニスト」とは大違いで、回想画面のショッキングなフラッシュバックで描かれる過酷な現実に言葉を失う。人身売買をさせられた若く美しい頃・家政婦時代・そして老年までを見事に演じた主人公イレーナを演じたロシア人女優クセニア・ラパポルが素晴らしい。残酷で悲劇的な人生をじっと耐え忍び淡々と演じきっている。エンニオ・モリコーネの音楽もこの映画のオリジナルだという子守唄も良かった。
映画のオープンニングで「結末は誰にも話さないで下さい」というメッセージが出るので何事かと思うが、結局大したオチがあるわけでもなかった。イレーナにかすかな一筋の光をあてたのではと思わせるが説明し過ぎることなく結論を観客に委ねている。わざわざ断り書きをつけなくても良かったような・・・。





2007/10/29 【 タロットカード殺人事件 】

ウディ・アレンの「タロットカード殺人事件」を観た。
原題「SCOOP」なので、この邦題はいかにもアガサクリスティを思わせる色を出している。「マッチポイント」に続いて再びロンドンを舞台にした犯罪ミステリー・コメディ。ウディ・アレンは監督脚本に加えマジシャンとして出演。「マッチポイント」に続き出演のスァーレット・ヨハンセンとの息もぴったりで、2人の丁々発止のやりとり漫才コンビのよう。貴族階級への憧れや交通規則の違いなど・・・etcアメリカ人の抱くイギリスのイメージがよく描かれていた。ウディ・アレンが出演というと本人は恋の張本人というパターンが多かったが今回はとうとう保護者に回ったのがミソ。冒頭とラストに出てくる三途の川のシーンも死者の人間くささをユーモラスに描き可笑しかった。
ちょっと残念だったのは犯人自らの告白と予想がついたオチ。
全体的には70歳を過ぎても老いを感じさせないところはGood





2007/10/29 【 この道は母へとつづく 】

ロシア映画「この道は母へとつづく」を観た。

「母をたずねて三千里」が代表的で‘母を訪ねて・・・’というのは物語の原形。「お涙ちょうだい」要素が濃いとおもいきや、この作品はわざとらしい泣かせは無く、子供達の目を通して現代ロシアの暗い社会問題をリアルに織り込んでいるのが意外だった。

独学で読み書きを覚え、孤児院を脱走した顔も知らない母親を探し求めた少年の実話を、ロシアの新鋭アンドレイ・クラフチューク監督が映画化した感動作。

寒々とした景色が広がるロシアを舞台に6歳の少年が一人で顔も知らない母親を探し求めた旅をする。現実に負けることなくひたむきな少年の姿にジンとなる。金銭絡みで少年を追いかける養子仲介業のマダムでさえ、養子に出して幸せにしてあげたいという気持ちもあるので、この作品には救いのない悪人が出てこないのも良かった。





2007/10/28 【 クワイエットルームへようこそ 】

松尾スズキが、芥川賞候補となった自身の同名小説を映画化した「クワイエットルームにようこそ」を観た。
精神科の病棟といえば「カッコーの巣の上で」「17歳のカルテ」があるが、こーいう難しい世界をなんとも上手くリアリティを出しながらもコメディーに仕上げている。
内田有紀演じる主人公が睡眠薬とお酒を一緒に飲んで意識不明となり、目覚めたら手足を拘束され、点滴されながら精神病院の閉鎖病棟の一室に居た。周囲の人々の無理解や診断ミスによって自分自身がここにいるのだという主人公が、少しずつ記憶を戻して次第に現実が明らかになっていく14日間が描かれる。コミカルに描きながら反面切ない入院生活は個性的な患者たちの‘正常’‘異常’のビミョウさが興味深く、主人公に翻弄される相手役の宮藤官九郎も好演。
行き詰って「クワイエットルーム」に行くことは誰にでもかけ離れたことではないようだ。





2007/10/28 【 ヘアスプレー 】

ヒット・ミュージカルを映画化した「ヘアスプレー」を観た。

舞台は人種差別が残る60年代のボルチモア。「ハマる!ハジケる!ハチキレる!?」の言葉通りにハイテンションで元気になる作品だった。

ヒロインは1000人を超えるオーディションから選ばれたという主役の女の子(ニッキー・ブロンスキー)で、少し前までアイスクリームショップでバイトしていたという。この作品自体がおデブちゃんのサクセスストーリーだけにまさに実生活もヒロインを地でいくシンデレラ。当時の人種差別などの問題も取り入れ、天真爛漫でおしゃれでポジティブ思考のヒロインは本当に魅力的。
母親役のジョン・トラボルタはメイクに5時間もかけ13`もの肉布団を着たというからこちらも見事な存在感。軽やかに踊る姿は「サタデー・ナイト・フィーバー」!!
母娘をやさしく見守る父親役のクリストファー・ウォーケンも敵役のミシェル・ファイファーなどの豪華な脇役陣も含めキャステングが申し分なく楽しめた。





2007/10/20 【 幸せのレシピ 】

ドイツ映画「マーサの幸せレシピ」をハリウッドリメイクした「幸せのレシピ」を観た。書評ではオリジナル以上にアニメ「レミーの美味しいレストラン」との比較がなされているみたい。こーいうのは映画に限らずTVドラマでもよく登場するテーマなので新鮮味はないものの、料理を目で楽しむという意味合いでは外れはない。
思いがけず荒川静香のイナバウアーの曲プッチーニの♪トゥーランドットbyパバロッティで聴くことができたシーンがあった。
「リトル・ミス・サンシャイン」の子役のアビゲイル・ブレスリンが愛らしく、相手役のアーロン・エーカットの陽気さも心地よかった。
それにしても美味しかったら伝えるのはシェフではなくてもお店のスタッフで良いし、まして不味かったら何も言わずもう2度と行かないというスタンスだけに、美味しかったらシェフに挨拶とか、気に入らないとクレームをつけるというのは国民性なのかちょっと驚いた。





2007/10/13 【 魔笛 】

モーツアルトのオペラを映画化した「魔笛」を観た。

舞台は古代ローマではなく第一次世界大戦のヨーロッパ。

冒頭15分のモーツアルトの音楽に凄まじい戦闘シーンは圧巻。こーいう手法もかなり効果的。

とにかく演じているのが世界の一流オペラ歌手だけあって魅せられる。真面目に筋を追うというより笑えるシーンも多くオペラに馴染みがない身でも楽しめた。

一目で恋に落ちる夜の女王の娘も主人公の兵士も歌詞にあるような美貌ではなかったのはまぁ実力派歌手起用という意味では仕方ないかも。パパゲーノとパパゲーナのシーンがなかなかコミカルで良かった。夜の女王と娘と暗黒卿ザラストロの関係に含みを持たせたのが特徴。歌唱力は圧巻ながらも全体的には一人が何曲も歌うので長く感じた。





2007/10/6 【 ボルベール<帰郷> 】

アルモドバル監督の「ボルベール<帰郷>」を観た。

これはこの監督の「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」に続く女性賛歌三部作の最終章になるらしい。

まるでこれはベネロペ・クルスのプロモーションかぃ。主演だけ華やか顔で色彩豊かな衣装を着て、巨乳を強調して、半端なく歌が上手い。脇役の女性陣があまりにも地味。この対比があまりにも露骨。3世代の女性が似たような辛い境遇というのは感慨深い。ながら・・・肝心な点を娘や母親の自らの台詞によって明らかにさせる手法はいただけない。よくサスペンスでも犯人自ら告白みたいな展開がとても嫌いなだけにこの映画もそれが最大のネック。予想がつく展開だけにそれが尚更気になった。





2007/9/29 【 ツォツィ 】

2006年アカデミーで外国語映画賞作品「ツォツィ」を観た。

アフリカ映画としてアカデミー賞ではじめて外国語映画賞を受賞したこと以外に、少年の更生物語なのに、映倫が少年が見られないR15指定にしたことで物議をかもし話題になった。
タイトルの「ツォツィ」=不良。
自分の過去も名前も捨てて「ツォツィ」と呼ばれる主人公が南アフリカの劣悪な境遇の中生き延びるために身についた冷たい目と鋭利な存在感に圧倒される。
ツォツィが住む家やそのコミュニティは、撮影セットではなく、実際に人々が生活しているヨハネスブルグの一角の場所だというのも驚くが、95分という短い時間の中に、土管で暮らす身寄りのない子供達・犯罪に手をそめる少年達・貧困・エイズなどこの国がかかえる問題をこでもかと画面は映し出し、ところどころにはさまれる子供の頃の回想シーンに胸がつまる。
その中でも特に印象的なシーンは、足の悪い物乞いとの「何故生きたいのか」という会話。そしてもうひとつ、授乳するシングルマザーに母を、赤ちゃんに自分を重ねたツォツィの表情だ。
どんな過酷な現状でも人間にとって大事なのは、「DECENCY(品位)」でその先には希望があると信じさせてくれるパワフルな作品だった。





2007/9/26 【 ミス・ポター 】
ピーター・ラビットの原作者ビアトリクス・ポターの若い頃を描いた「ミス・ポター」を観た。
主演はレニ・ゼルウィガーで前半は編集者のユアン・マクレガーとの恋愛を、後半はピーターラビットを生んだ故郷を開発から守る様子が描かれる。
恋愛はあくまでもピュアーで微笑ましく、幼いポターが自然や生き物をスケッチし、後にそれがピーター・ラビット誕生へとつながっていく様子やアニメーションを取り入れたシーンは大人向けファンタジーそのもの。
この作品は全体にピター・ラビットのイメージそのもののやさしいタッチを感じ取れるものになっている。
結婚適齢期を逃した独身女性への厳しい目と、絶対的な親の存在など、当時のブルジョアジー階級の生活感は興味深い。それだけに上流階級を気取る両親に反発したり、絵本作家としての道を自立したのは計り知れないくらい大変だったことだろう。
それにしてもミス・ポターが過ごした湖水地方はなんてきれいな場所なんでしょう。トゲや悪意とは無縁の絵本を読んだようなほのぼの感が残った。




2007/9/17 【 トランスフォーマー 】

スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮、マイケル・ベイ監督の、SF超大作「トランスフォーマー」を観た。

CGのすごいものは過去にもあったので今更何を観ても驚くことはないという予想は見事に覆る程映像が凄い。

こんなCGとアクションを観てしまったら今度こそもう何を観ても驚かないかも(-_-;) 携帯やラジカセや車がロボットになるところなんて面白すぎて目が釘付け。

ベタと言ってしまえばそれまでだけれど、さえない少年がマドンナをgetするのも、ジャンク食で太ったハッカーも、「24」を彷彿させるCTUまがいの情報部etc。これでもかというくらいアメリカ一色カラーは多分にマイケル・ベイの持味と思える。
ラストの善悪の戦いはどっちがどっちがわらないくらいに作ったのは制作サイドの意向なのか・・・凄すぎておいてけぼり。つっこみ所としては、悪サイドが飛んでくるのに対して、善サイドは地道に車で道路を走っているとか・・・(-_-;) 細かいことはまぁいいかぁ。





2007/9/10 【 ワルボロ 】

原作からのファン「ワルボロ」を観た。
原作は「これからオレの話をしようと思う」から始まっている言葉通り原作者のゲッツ板谷自身を投影している。タイトルの「ワルボロ」は「みんなワルくてボロかった」という言葉から。
1980年代の立川市を舞台にしたヤンキー仲間の友情と勢力争いの日々を描いている。当時の「陰気で退廃的でどうしようもない町」に生まれた人間はダメな町から飛び出すために勉強するかバカな喧嘩を繰り返してグダグダの人生に突入していくかのどちらかだったらしい。
そしてなんとぬあんと影武者さんは世代も近くまさにその立川で暮らしていた。ということでこの映画には記憶にある懐かしさも期待したようですが、・・・今でこそ小ジャレた街になり当時の面影も消え、立川ロケはほとんどできなかったそうで残念。その代わりどーしようもない街として多くのロケは高崎で行われたそうだ。高崎・・・そんなに酷いところなのか 高崎市民 ビミョウだわねぇ(-_-;) 
あと影武者さんが通学したショー中(昭和中学)は原作に登場する立川狩り」企てた首謀ながらカットされていた(-_-;)

肝心の映画は、中学時にツッパリボンタンを知っている世代にはかなり楽しめる。今じゃ見かけないボンタン世代って何歳くらいなのだろう。

学ラン屋のピエール滝のきれぶりは圧巻。が、どうも印象が違うのが主人公の伯父でヤクザを演じた中村トオル。圧倒的な恐怖感を与える毒蝮のような人物であるハズがピラピラしたチンピラに描かれていてイメージと違った。
メインの錦組の6名は似たり寄ったりのつっぱりルックなので1人1人のキャラをもっと丁寧に描いてくれたほうが良かったかも。

最後に「そんなに立川市民は立川を嫌っていたの?」という質問に影武者さんは「立川以下なのが国立!お高くて何様ょ フン」と切り捨てた。原作にある三多摩のスラムと呼ばれた立川とおよそ三多摩らしからぬ国立の民度意識の違いが映画ではカットされたのも残念。だけど、影武者さんが根っからの立川人ってのが判明。

サントラは ブルーノート→ハイロウズ→byクロマニヨンズ ♪ギリギリダダダン がまさしく直球。




2007/9/7 【 ハリーポッターと不死鳥の騎士団 】

シリーズ第5弾「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」を観た。 
内容はともかく注目したのが今回の登場人物で2人。
1人はもしかしてハーマイオニーを食っているんじゃないかというくらいルーナ役の不思議少女。そしてもう1人はホグワーツ教師のアンブリッジ役のイメルダ・スタウントンで「ヴェラ・ドレイク」の大女優。リボンや猫ちゃんだらけの部屋やピンクの服の可愛いらしさと本人の嫌な性格のギャップがコミカルで、「ヴェラ・ドレイク」から想像もつかない嫌われ者を完璧に演じていて圧倒された。
他ではシリウスがハリーを見て「ジェームズ」と言ったシーンはポイント高い。もはや子供ではない生徒達の成長ぶりには毎回驚くにしても、ハリーとチョウとのキスシーンはなんか妙に生々しかったような気がするのは私だけ?
あっそうそう予告編の「ついに明かされるハリーの秘密」って?
観終わってもわからなかった(-_-;)





2007/9/5 【 恋愛睡眠のすすめ 】

ミシェル・ゴンドリー監督の「恋愛睡眠のすすめ」を観た。この監督の「エターナル・サンシャイン」がとても好きなので期待大。が、期待に反してイマイチだった。
「エターナル・サンシャイン」は別れた恋人の存在した記憶を消す物語。
本作はプロットが似ているような存在しない夢を作る物語。
本作をステップとして「エターナルサンシャイン」が生まれたなら分るが前作の完成度の高さからすると後退している。
主人公のガエル・ガルシア・ベルナルはもちろんヒロインのシャルロット・ゲンズブールが中性的でなかなか良かったけれど、原題の「THE SCIENCE OF SLEEP」のニュアンスからちょっとズレてるっていうかこの邦題変!!
ダンボールの車・セロファンの水など手作りのかわいらしさはあるものの、非現実的な夢は暴走としか思えない。そういえば人の夢の話ってちっとも面白くないもんだっけ・・・(-_-;)





2007/8/19 【 黄色い涙 】
永島慎二のマンガを映画化した「黄色い涙」を観た。
「嵐」のメンバー揃ってと言っても2人くらいしか知らないので目的はそちらではなくあくまで昭和30年代のノスタルジーな青春群像がお目当て。
東京オリンピックを翌年にひかえた1963年の東京で、漫画家志望・歌手志望・小説家志望・画家志望の夢を追う4人とそれを見守る勤労青年の話。
日本が高度成長に沸いていた頃に、世間と折り合いをつけられるギリギリまで夢を求める若者の姿はこの「あの頃の僕らはいつもいつでも笑っていた 涙がこぼれないように」の言葉が凝縮している。
ラストの夢を追った側と、それを見守りながら堅実に地道に生きた側のその後が対照的だった。
昭和の描き方は良かったけれど全体的に淡々としてインパクトが弱く間延びした感があり長く感じた。




2007/8/12 【 キサラギ 】

キサラギ」を観た。タイトルは自殺したとされたアイドルの名前「如月ミキ(キサラギミキ)」に拠ると思われ。

予告編を観た時は、全く興味を惹かなかったので公開してもパスするかなぁと思っていたケド、予想に反したネットでの評判の高さに、半信半疑で映画館へ。

売れないアイドルの一周忌にネットのファンサイトを通じて集まった香川照之、ユースケ・サンタマリア、小栗旬、小出恵介、塚地武雅の5人による密室会話劇。

アイドルオタクの生態を描きながら、彼らだからこそ生み出せる笑いをちりばめている。

なんでも脚本は「ALWAYS 三丁目の夕日」で日本アカデミー賞獲っている古沢良太氏によるものだとか...。まるでゲームに入り込んだように次々テンポ良くはりめぐらされた伏線二転三転する展開を楽しめる。すす  すごい!
もしかしたらこれは・・・」と自分で読める箇所があっても、更にその先はどうなるかという期待につながる。評判の高さの意味はこれだったかぁ・・・。

ミキちゃんの歌もビミョウ〜だけに逆になんかクスクス(^^)。今まで類がないような無駄な台詞を省いた会話と申し分ないキャスト陣の演技は意外性在り過ぎでレベルがとってもと〜〜〜っても高い





2007/8/10 【 街のあかり 】

フィンランドのアキ・カウリマスキ監督の「街のあかり」を観た。

「浮き雲」「過去のない男」に続く『敗者三部作』ということだ。この監督の特徴ともいえる、無表情の出演者の面々・最小限の台詞・独特の間・美人がいないetcは今回も健在。

主演のヤンネ・フーティアイネンはそれなりの外見ながら、何故か同僚から相手にされず、バーでも鼻つまみで、銀行でもまともにとりあってもらえず、人に利用され といった『負け組』として徹底的に救いがなく描かれる。

監督によると「ラストシーンは希望で光輝いています。」ということだが、う〜ん ラストのあのワンショットだけではそれは大袈裟かも。光輝くといいうよりほんのり灯りがともった程度でしょうか。

これが現代の不条理というものかもしれないけれど、お人よしで不器用で非現実的な夢ばかり追っているという主人公の人物像は決して否定はしないけれど、自分の身に何が起きても受け入れるだけという意味ではあまり共感できなかった。でも、この監督の作品では珍しく主人公が笑うシーンが一箇所ある故に、逆に主人公の悲哀と孤独が大きく伝わってきた。





2007/8/4 【 絶対の愛 】

韓国映画「絶対の愛」を観た。

整形をして好きな人と新しく出会いたいという思いはわからなくもないけれど、っていうかその気持ち現実的かはさておいてフツウにわかる って言うか とってもわかる

TV「ビューティコロシアム」でも整形後に告白なんてのもよく見るパターンだし・・・。

但しこのヒロインのあまりのひとりよがりの気性の激しさにはドン引き。彼氏がこの性悪に振り回させているだけ にも見えた。ってことでまとめると 極度のヒステリー焼きもちやき女と青年の風俗映画。是非内面も磨きましょうネ。ビューティーコロシアムだったら和田アキ子に一喝されているかもよ。

山本文緒の文の「愛は人を壊す」ってのが浮かぶ。

何度も登場する喫茶店でこのカップルがどんだけ店の迷惑になったことか・・・それでも何度も来店する神経をまず疑うし、顔に布や写真を貼り付けて歩くのも、整形がばればれの派手なマスクも違和感あり過ぎ。彼氏に近寄る女性がトイレで見たものはさて何だったのかも最後まで謎。

監督自身は「顔が変わったら愛は変わるのだろうか?」あるいは「愛というものは永遠のものだろうか」問いかけをしたものと主張しているようだけど、全体的に否定的な作品に仕上がっている為、どうしてもアンティテーゼの感を受けてしまう。

大統領もやるくらいの整形王国の韓国で、ヒロイン演じたソン・ヒョナはなんと自らの整形をカミングアウトしている。なんとまぁ 潔い女優じゃないの。パチパチ。がこの作品の全顔整形が一般ピープルの成人にできちゃう金額のものなのかはかな〜り疑問。リアルな整形手術シーンはインパクト大で、キム・ギドク監督らしい展開が読めないというか一筋縄ではいかない面白さはあったかも。





2007/7/22 【 善き人のためのソナタ 】

2007年アカデミー外国語映画賞のドイツ映画「善き人のためのソナタ」を観た。

主人公ヴィスラー大尉は旧東ドイツの国家保安省(シュタージ)の職員で、家族もなく、職務に忠実で、感情のかけらも表情に出さない。孤独な堅物といったところか・・・。(ちなみにシュタージは、10万人の職員、17万人民間の協力者がいたとされる秘密警察)

ヴィスラーは、成功すれば出世という前提で、芸術家ドライマンを監視する。国家に忠実な主人公がヘッドフォン越しで知る監視相手の豊かな会話・西側の国の本・上司の卑劣な行動etcによりおきた心の変化。それと対照的に、どんな時代や状況でも変わらないのが、余計な事を言わず背筋を伸ばし良心に従って生きる主人公の高潔さ。

このタイトルの「善き人のためのソナタ」に関しては、監視される側のドライマンがこれをピアノで弾き「この曲を本気で聴いた人は悪人になれない。」という台詞が印象的で、これはこの作品のエンディングの付箋となっている。

このエンディングでのヴィスラーの「This is for me これはわたしの本だ」の台詞と小さいながら晴れ晴れとした表情は圧巻。

たった20年前の監視国家の恐ろしい真実を描きながら深く感動的な余韻を残したなんとも素晴らしい作品だった。

このヴィスラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエ自身が彼の女優である妻により、10数年間自らの行動を密告され国家保安省(シュタージ)の監視下に置かれていたという。そんな彼がこの作品で逆に国家保安省(シュタージ)の職員を演じたというのは驚く。そう 実人生で彼はドライマンだったとは・・・。

そしてなんと 私がこの作品を映画館で観たのと同じ2007722日、ドイツ東部ザクセン州で胃がんのため54歳で亡くなったそうだ。残念としかいいようがない。御冥福を祈ります。





2007/7/21 【 ブリッジ 】
毎年900万人の観光客が訪れるサンフランシスコの象徴、ゴールデンゲート・ブリッジが観光地であると同時に世界最大の自殺の名所ということを描いた「ブリッジ」を観た。
1937年の建設以来、約1300人が自殺したといわれる ってことは・・・なんとびっくり2週間に1人の割合らしい。
橋のたもとにカメラを添え2004年から2005年までのこの橋を撮り続けた中リアルな自殺者が映し出される。ある者は躊躇なく、ある者は迷っているらしく歩き回った後に・・・。
自殺者の理由は様々だ。残された遺族や友人が亡き人を語る様子もまた様々ながらも、残されたものは自分自身が何かできたのでは・・・と、一様に大きな傷を負ってしまう。
この残された人々の話を聞く限りではこんな理解ある人が近くに居ながら何故・・・と思ってしまう。それでも届かない生への絶望を持ってこの橋の上に立つ人々と、対照的にレジャーを楽しんでいる美しいだけの観光名所のゴールデンブリッジとのあまりの落差。
残念ながら秋田県の自殺率は、12年連続で全国ワースト1になった。(尤も自殺だけではなくあれもこれもワースト1が並んだケド)。
何が最善の自殺防止になるかは断定できないながら、まずは残された者が背負っていく痛みを知ることかもしれない。




2007/7/20 【 ナンバー23 】

夏に国際線にて「ナンバー23」を観た。

ジム・キャリーが「エターナル・サンシャイン」に続き今回もシリアス一辺倒の役。
ジョエル・シューマカー監督は本作が偶然にも23本目の作品だという。
主人公はある本を手にとって以来「23」というものに神秘性を求め「23」が破滅に導くということにとらわれていく。あらゆる数字をばらしたり足したりなんだりするとこれでもかと「23」という数字につながっていくのは、途中からあまりに強引なこじつけと思えとにかく映画が長く感じた。
公開は1123日だそうで、ここにもこだわりが・・・。
因みに「23」ってそんなに不吉?誕生日23なのよね(-_-;)





2007/7/16 【 サン・ジャックへの道 】

仏映画「サン・ジャックへの道」を観た。

フランスからスペインまでのサンティアゴ巡礼路の1500qの旅。「サンティアゴ」と何度も出てきてアレ?と思ったが、フランス語では「サンジャック」と言うそうだ。

メンバーは仲の悪い3兄姉・若い女の子2人組・アラブ系移民の少年2人・単身参加の女性1人・ガイドの9名。

冒頭の郵便物が仕分けされ3兄姉にこの旅の通知が渡るまでのテンポ良いシーンから引き込まれた。その3兄姉の救いのない持ち味は強烈で楽しめた。

まとまりのなかったメンバーだったが、言葉に問題をかかえ「頭が弱い」と見られていた少年の無垢さが見えてくるようになったり、最初見えていなかった内面の痛みが見えるかのように眼差しが優しくなっていく。

日常で背負っているそれぞれの背景やトラウマが「夢」という形で描かれていて抽象的でちょっと分かり難いシーンもあったがスパイスになっている。

あれもこれも詰め込んだ重いリュックから余計な荷物が捨てられて、その分得たものは・・・到達した先には達成感や連帯感という言葉以上の何かがあった。生き方や考え方って自分次第でどうにでもなるってことをこの9人の愛すべきメンバーから教えてもらった。





2007/6/30 【 ゾディアック 】

実在したアメリカの犯罪史上初の劇場型殺人事件を描いた「ゾディアック」を観た。
犯人から新聞社へ暗号文書を送ったりとマスコミを翻弄したこの事件は未だに未解決。
予告編では「その暗号を解いてはいけない」と、一体どんな難解なものだろうという印象を与えているのに、本編ではあっさり暗号は解読されている(しかもたいした暗号ではなかったというオチ付)(-_-;)。またしても予告編の影響でゾディアックと名乗る犯人は一体どんな猟奇殺人犯かと思いきや・・・そこらへんも期待外れで、犯人そのものよりこの事件に関わった男たちに重心を置いて描いている。
つかまりそうでつかまらない壁にあたりながら、新犯人かという人物の登場の場面ではドキドキ恐怖感を煽ったのは良いけれどよくよく考えるとあれは意味があったのかかな〜り疑問。それでいて科学捜査でも断定できなかった犯人をエンディングで「容疑者は○○」と言ってしまう映画を製作してしまうのはある意味すごいことかも。
登場人物の中で特筆すべきは刑事役のマーク・ラファエロ。寝込みを訪ねてきた主人公にファミレスで説明を聞き終えた後に、淡々としたハスキーボイスで「いい朝食だった」とお金を置いて立ち去るシーンが印象的。
主人公を演じたロバート・ダウニーJr.が若い頃のアル・パチーノに似ていると思ったのは私だけ?





2007/6/17 【 恋しくて 】

中江裕司監督の「ナビィの恋」「ホテル・ハイビスカス」に続く沖縄を舞台にした最新作「恋しくて」を観た。

沖縄色を出すにかけて中江監督とBEGINがタッグルを組んだら最強よね。

これは決してBEGINの成功を語る提灯持ち作品ではなく、中江監督が創作した架空のバンド「ビギニング」の石垣島での青春物語だ。

加那子、栄順、マコト、浩の4人を演じるのは、3500人のオーディションで選ばれた沖縄県在住の現役の高校生で、演技はもちろんギターもキーボードも触ったことがなかったというから驚く。

ゆっくりと流れる心地よいユルイ空気感の中、健康的で天真爛漫な加那子と栄順の恋を絡めて、バンドメンバーの成長を描いている。

懐かしい70年代歌謡曲・奄美民謡・♪What a Wonderful WorldBEGINと全編に音楽が溢れ、伝説の深夜番組「イカ天」が三宅裕司本人の司会で観れたのはうれしいサプライズ。ナビィおばぁの平良とみも今回も健在でほっとした。

今回も、沖縄の方言が手ごわく全然わからない箇所が沢山あったので、是非是非字幕を付けてぇ〜。お願いでスっ。





2007/6/14 【 しゃべれどもしゃべれども 】
97年「本の雑誌」ベスト1の小説を映画化した「しゃべれどもしゃべれども」を観た。
東京には400人以上の噺家がいる中で寄席は4軒のみだという。いかに厳しい世界かということだ。
私が初めて行った寄席は新宿末広亭。自分の誕生日を選んで行ったものだ。当日誰が出番か知るよしもなかったのにTVで見たことがある噺家さんがいてしかもぬぁんと柳家小さん師匠がいたことは今振り返ってもラッキーだった。
うだつのあがらない二つ目の落語家三つ葉を演じるのはTOKIOの国文太一。そしてそこの話し方教室に集まる生徒は、無愛想な美人、学校に馴染めない関西から転校してきた小学生、会話が苦手な野球解説者の元プロ野球選手。下町を舞台にばらばらな人々が心を通わせていく。
本作に出てくる落語は「まんじゅうこわい」と「火焔太鼓」。「まんじゅこわい」は子役と鼻歌代わりの八千草薫、そして「火焔太鼓」は師匠役の伊東四郎と国文太一と香里奈の3者が演じる。
圧巻なのはさすがの伊東四郎!そして予想外に国文太一凄い!レギュラー番組いくつもかかえ一体どんな練習をしてきたのだろう。本当に感動モノ。
見所はここに限らず、ほおずきとおみくじのシーンにはじ〜んとなった。参りました!!心が温かくなり、寄席に行きたくなった。




2007/6/8 【 ブラックブック 】

女性ユダヤ人が復讐のためにレジスタンスに入り、敵であるナチス将校に近づいていく話「ブラックブック」を観た。

冒頭、イスラエルのキブツが映し出される。スクリーンにキブツと出た瞬間、20代の頃ヨーロッパ方面を周って来ると言った友達から届いた絵葉書の中に「今イスラエルのキブツで働いています」というのがあったのを思い出した。彼女が居たキブツってどんなところだったのだろうということがほんのちょっとでも目にできたのは個人的に嬉しい。

オランダを舞台にレジスタンスの中にも裏切り者がいるということを描いていてサスペンスタッチになっている。

聞き流しそうな台詞のあちこちが伏線となって先が読めないのも面白かった。

何年も調査をし史実に基づいているというだけに、これでもかというくらい痛いシーンは目を覆う。凄惨という以外にも露出もこれでもかというくらい多かったのでR12指定でもゆるいかも。

イスラエルのキブツでの主人公の回想で始まり、生き延びたのが不思議なほどの苦労を描いた後で、再び描かれる冒頭とは全く違うキブツの状況を映し出す演出は素晴らしい。





2007/6/1 【 ヘンダーソン夫人の贈り物 】

2005年度アカデミー賞で主演女優や衣装部門でノミネートされた「ヘンダーソン夫人の贈り物」を観た。

資産家未亡人がイギリス初ヌードレビューを登場させたという実話に基づいている。なのでヌードシーンはバンバンですがホントにまさにアートのようで「芸術」と証する台詞に違和感がない。が、ボブ・ホスキンを初めとする男性人のスッポンポンには正直ビックリ。これを制作したBBCって国営放送じゃなかったけ・・・す すごい。でもまぁ全くいやらしくないけど。(ボブ・ホスキンズはどっかで観たことがあると思ったら「フェリシアの旅」のおっさんでした)。

イギリス英語は徹底していて、主人公を演じたジュディ・デンチのスピーチは大女優の貫禄で圧巻。

この2人の名優のあーいえばこーいう的な掛け合い気が絶妙。

ステージもので最近観たアメリカ映画の「今夜フィッツジェラルド劇場で」のアメリカンジョークが全く楽しめなかったのと比べてもこちらのユーモアは充分に楽しめた。意外だったのが予備知識がなかったとはいえこれは実は堂々たる反戦映画だったということ。





2007/5/25 【 リーピング 】
ホラー映画専門のダークキャッスル・エンタテインメント(Dark Castle Entertainment)の制作した「リーピング」を観た。
Reapingとは、刈り取り・収穫する・報いを受ける 以外に世界の終末における最後の審判という意味があるそうだ。
実はこわい系は超苦手。でもおすぎが見逃がせないと絶賛していたし、これはホラーの霊的というより悪魔系なので意を決して観た。
まずこの作品は旧約聖書の出エジプト記の「十の災い」1.血の災い2.蛙の雨3.ぶよの災い4.あぶの災い5.疫病の災い6.腫れ物の災い7.雹の災い8.いなごの災い9.暗闇の災い10.最後の災い(長子の殺害)がベースとなっている。
この現象がルイジアナの保守的な田舎町でこの順番通りに起こる。のっけの血の川の映像に圧倒され、その後もウジや腫れ物やいなごetcとこれでもかというグロい映像が続く。怖くもあり思わず目をふせるのだが音もそーとーに怖い。
この系列「エンド・オブ・デイズ」「コンスタンティン」と比べて断然迫力があった。悪魔信仰ときいてもピンとこないながら、超常現象を科学で解明しようとする人物が主人公という設定も、目力のある少女の怖さと可愛いらしさも良かった。最後の最後まで見応えあったのは少女の言葉を聞いた主人公ヒラリースワンクの表情だ。
手に汗にぎってへとへとになった。誰にでもお薦めはできないけれど・




2007/5/19 【 パッチギ!LOVE&PEACE 】
ネットでの鑑賞レビューがあまりに酷評だらけで、なんだかためらいながらも「パッチギ LOVE&PEACE」を観た。酷評のほとんどが間違った韓国サイドの主張に沿う歴史を湾曲したものだということと井筒監督によるプロバガンダ映画だというものだった。
この作品の藤井隆以外の日本人は、徹底的に在日韓国人を差別する。確かに今の韓流ブームが想像もつかないくらい日本と朝鮮半島の間には溝があり在日が苦労したのは本当だと思うが、ここまで容赦なく日本人が酷かったとしたらあまりに胸苦しく、けな気な在日に対する日本人の容赦ない差別用語に頭が痛くなった。
一方韓国では「よくぞ制作してくれました」と間違いなくヒットするだろうな。ケンカのシーンが多いし、在日の皆さんがこれを観たらますます日本を嫌いになるだろうなと思えるだけに何故LOVEPEACEなのか・・・とってつけたようなこの単語が意味不明。監督はその奥に愛のPEACEが見えれば良いと言っているけれど見えないのよ。
子役が愛らしいだけに残念なのが、不治の病という設定がステレオタイプだったとこ。




2007/5/12 【 長州ファイブ 】

幕末、外国を排斥するだけでは何も変えられないと敢えて敵を知るためイギリスへ行った若き長州藩士を描いた「長州ファイブ」を観た。

1863年、山尾庸三(松田龍平)、井上勝(山下徹大)、伊藤博文(三浦アキフミ)、井上肇(北村有起哉)、遠藤謹助(前田倫良)は高い技術を持ち帰るため幕府の禁を犯して荷物と化して英国へと旅立つ。

「生きた機械」となるという決意はなんという強い志だろう。

ロンドンに到着した彼らのカルチャーショックを観て、初めて海外へ行った時を思い出す。着いた時の空気の違いに、はっとしたものだったが当時のそれは空気感どころか比べられないくらいの衝撃だったことだろう。

造幣、造船、鉄道、手話等の技術を日本に持ち帰りこの日本の発展の礎を作った彼等にただただ頭が下る。長州の方言が聞き取り難かったが、140年前の日本とイギリスの描写も良く、まるで特番の「その時歴史は動いた」を観ているよう。鑑賞前にこの5人の‘その後’を頭に入れておくのも良いかもしれない。

進路で迷う学生にも、留学生にも、そして無気力なサラリーマンにも是非見て欲しい。モチベーションが上がるのでもちろん子ども達にも観て欲しいだけに、遊女とのシーンがあるのが残念。





2007/5/11 【 ゲゲゲの鬼太郎 】

子どもの頃にかかさず見ていたアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」が映画化。

鬼太郎のウェンツはともかく(-_-;)キャストのねずみ男・猫娘・砂かけ婆・子泣き爺等申し分なかった。

そして目玉おやじ・一反木綿・ぬりかべもよく描いていた。が、が、が、これはあの怪しくおどろおどろしいアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」とは別物だ。

そういえば妖怪大戦争も後半からSFアクションになったのが不満だったけど今回もそのパターン。中盤からアクション映画になっているし、だいたいポップな曲に合わせてファンキーなダンスをする鬼太郎なんて見たくもないのよ。もっともっと重厚に描いてよぉ。

♪カラ〜ン コロ〜ン カランコロン♪の主題歌by憂歌団もそれなりながら やっぱここはオリジナルと言えるby熊倉一雄できて欲しかった。





2007/5/9 【 不都合な真実 】
元アメリカ副大統領アル・ゴアが地球温暖化の危機を訴えた「不都合な真実」を観た。
アカデミー長編ドキュメンタリー部門でのオスカーの他に、なんと「ドリームガールズ」を抑えてのオリジナル歌曲賞「I Need to Wake Up」(メリッサ・エセリッジ)でも受賞している。
世界中で1000回以上のスライド講座をこなし精力的に環境問題を考えるこのアル・ゴアという人格に圧倒される。政治家の中にここまで地球単位でものを考えられる人物がいるということに驚き惹きつけられた。
1997年当時副大統領だったゴア氏が京都議決書にサインしたにもかかわらず、ブッシュ政権になってアメリカは議決書から離脱した。2000年の大統領選挙で得票数ではブッシュを上回っていた上にし、勝敗の鍵となったフロリダでの投開票は疑惑を持たれている中での落選だっただけに、もしこの人が大統領となっていたら・・・と思わずにいられない。少なくても京都議決書は締結されたことだろう。
やはり考えてしまうのはブッシュを認めたアメリカ国民の選択は果たして正しかったのかということだ。この映画の説得力はやはり利権主義代表のブッシュと戦った正義代表のゴア氏ならではによるものだろう。エンドロールのメッセージを個人単位で実戦しようと思う。




2007/5/8 【 エターナル・サンシャイン 】
2004年アカデミー賞脚本賞受賞のラブロマンス「エターナル・サンシャイン」をDVDにて鑑賞。
変顔のジム・キャリーはともかく相手役のケイト・ウィンスレットは超苦手な女優。太めなのに気が強そうで・・・(太めが嫌いなのではなく太い程におおらかでヒトが良さそうな先入観がある為)。今回の役はまさにイメージそのものの役
(-_-;)・・・・・・・ながら・・・以外にもなんとすっかりはまってしまった。
過去・現在・未来の時間軸の他に脳内の世界も交差しまくるのでわけわからなくなりがちながら、あまりのリアルさにいつの間にか引き込まれる。
喧嘩や気持ちがずれると相手を許せないと冷静に欠点を並べあげて分析することはできるけれどこれは心の芯とは別ものだったりする。ジム・キャリーとケイト・ウィンスレットの2人も決して羨ましくも理想のカップルでもないながらその苦悩する気持ちに完全に感情移入しまくった。お互いに相手をなじるテープを聞き恋の痛みも喪失感も知った上でこれからの2人の恋がはじまろうとしている。
時間軸の交差を知った上で繰り返し鑑賞したい作品だ。
因みに私のprofileページのfavorite musicにもある♪Everybody's Gotta Learn Sometimeby Korgisはこの映画ではBeckバージョンだが、これもたまらなく良い。この素敵な曲にぴったりのラブストーリーだった。




2007/5/1 【 あるいは裏切りという名の犬 】

仏映画「あるいは裏切りという名の犬」を観た。なんともしゃれた邦題に感心する。
原題は「オルフェーヴル河岸36番地」つまり「パリ警視庁」。
実際に警察官だった監督と共同脚本として関わったのが元刑事であり、実体験のエピソード(捜査班BRIBRBの確執・手柄を立てるための独断介入・刑務所への投獄etc)が元になっている。この映画製作で自身の辛い過去とパリ警視庁の内部をさらすことで長年耐えてきた痛みが軽減されているよう祈るばかりだ。
主演のダニエル・オートゥイユが演じた寡黙で陰のある男が最高に渋い。これと対極なのが宿敵のジェラール・パルデューだ。権力志向で、どんな手でも使う自分勝手な嫌な男ながら警官という職業にしがみつくしかないのは哀れにも思える。なんともいえない重暗い空気感と緻密な伏せんと先の読めない展開が、警察を舞台とした哀しく切ない男同士の対立も含めて「インファナルアフェア」に通じるものがあった。
ロバート・デニーロがジョージ・クルーニーを相手役にリメイク中ということなので楽しみにしたい。





2007/4/29 【 バベル 】
2007年のアカデミーでは6部門ノミネートされ無名の菊地凛子を一躍‘時の人’にした「バベル」を観た。
神の怒りにふれ違う言語を使うようになった人類だが、異なる国で起きたことが最終的にリンクしてくるという演出は好きなので楽しみにしていた。が、あれほど話題になった菊地凛子はトラウマを抱えた障害者というよりアタマがおかしいとしか思えなく、今どきの女子高生像が想像を超えるとしてもこれは行き過ぎだ。現実がこ〜んなに腐っているとしたら世紀末だ。
この監督の「アモーレス・ペロス」「21グラム」が好きだっただけに今回は失望。名古屋でこの映画で吐き気を催した観客が複数出たとニュースになっていたが、音楽ガンガンの目がチカチカするクラブシーンが長かったのは確かに苦痛。
モロッコとメキシコはともかく日本のエピソードは必要性があるのか?菊地凛子のこれでもかと露出するシーンも含めこれは全体的に無駄が多く行き過ぎと思えた。




2007/4/28 【 クィーン 】
2007年アカデミーでヘレン・ミレンが主演女優賞に輝いた「クィーン」を観た。ダイアナ元妃の悲劇の事故からまだ10年も経っていなく、登場する人物が存命している中で、どーやってこの映画が作れたのか・・・お..おそるべしイギリス。
王室の威厳を守ること最善と考え頑なに生きてきたエリザベス女王は、スキャンダルにまみれた元嫁を毛嫌いし、葬儀についても「王室とは無関係」と黙殺する。ブレア首相や夫のエディンバラ公との会話を通しても埋まることのない嫁姑の溝がうかがい知れる。
国民が「称号がなくてもプリンセス」と言ったのはダイアナ元妃 という世論を目の当たりにしたエリザベス女王の苦悩を描き、結果的に女王とブレア首相の株は上がっているのはすごい。
あまりに冷たく辛辣に描いているエディンバラ公やチャールズ皇太子やブレア首相夫人のイメージはダウンしたが、それにしても女王のヘレン・ミレンも首相のマイケル・シーンもチャールズ皇太子もまぁ実物に良く似ていた。英王室の日常を垣間見るというワイドショーを観るような面白さもあって興味深かった。




2007/4/22 【 ハンニバル・ライジング 】

「羊達の沈黙」「ハンニバル」「レッド・ドラゴン」に続きハンニバル・レクターのルーツが明かされる「ハンニバル・ライジング」を観た。

知的な精神科医と冷酷な殺人鬼をあわせ持つ人食いレクターの人格がどうやって形成されたかが哀しい過去とともに描かれていた。

アンソニー・ホプキンスの印象が強すぎて若き日のレクターを演じるギャスパー・ウリエルはどうかと思ったが予想以上に知的でcoolで良かった。ただ人格形成に重きを置いた分、残念ながら描ききれなかったのが、何故美術への造詣が深く、何故美食家で、何故頭脳明晰なのかだ。

コン・リーが演じた日本人Ladyムラサキは豪華でレトロなFENDYの衣装を見事に着こなして、「武士道」をレクターに伝授したキーパーソンとなっている。が、日本的?なあの家の演出は日本人が見たらアレレレだ。先祖供養に拝むのは鎧かょ(-_-;)





2007/4/15 【 東京タワー 】

210万部を売り上げたリリーフランキーの自叙伝の映画化「東京タワー」を観た。
原作、TV連続ドラマ、TVスペシャルとすっかり馴染んだストーリーで、今更映画化までするかという感ではあったが、それでもやはり胸に沁みた。この物語はリリーフランキーだけのものではなく、この母子を自分とだぶらせられる、1人1人にある「オカンとボクと、時々、オトン」の話だからだ。
オダギリジョーはどーしようもないけれどフツウな主人公を、小林薫は自由奔放で晩年はひとまわり小さくなった父親を見事に演じていた。
そして予想を超えたのがオカンだった。樹木希林はボクからの本が届いた時「(明るく)ありがとうね」の台詞を、涙ぐみながら「ありがとうございました」と頭を下げるように台本を換え、また、体の不調を告げるシーンは茹でた栗と包丁を持参して臨んだという。見舞いに来るオトンとの再会や病気と闘うシーンもボクに手をひかれ歩く横断歩道のシーンも圧巻だ。
夫に頼らず子育てをし、そして子どもを東京へ送り出し、あの年齢で息子以外知り合いのいない東京へ出てくるということがどんなに大変なことか・・・さりげなく優しくたくましく誰からも好かれるオカン像にただただ「ありがとう」と言いたい。





2007/4/14 【 悪夢探偵 】
「悪夢探偵」を観た。大手ハリウッド社からリメイク・オファー殺到だという。
「ああいやだ、ああああいやだ、ああいやだ。」と言いながらも他人の夢に入り謎を解く主人公は松田龍平。
お役に立ちたいというより嫌々巻き込まれていく様子が上手かった。
冒頭の原田芳雄が夢でよく見るという髪の長い少女のあたりで、ぞっとするようなホラー系を漂わせているところまではすごく良かったが、その後はまるでスプラッターじゃん(-_-;)。これR12指定だけどこれじゃ緩いんじゃないかというくらい耐えがたいショッキングなグロなシーンのてんこ盛り。ヒロインのhitomiはミニスカートと脚と顔のアップシーンが多くてくど過ぎ。
血飛沫映像は、ああいやだ、ああああいやだ、ああいやだ。




2007/4/13 【 ブラッド・ダイヤモンド 】
ブラッド・ダイヤモンド」を観た。
アカデミーでの「ディパーテッド」ではディカプリオは猿顔にしか見えなく作品賞オスカーがどーしても納得できなかったが、この作品は間違いなく「ディパーテッド」を超えていると思う。ずーっと謎だったディカプリオ人気もこの作品では納得。今更ながら「ディパーテッド」が作品賞オスカーをgetしたのもこの作品が作品賞候補にさえノミネートされなかった背景(利権)を思うと複雑だ。でもまぁダイヤのデ○アス社の告発も含めた本作が制作できただけでもすごいと言うべきかもしれない。
とにもかくにもローデシア(ジンバブエ)で生まれた南アフリカで育った傭兵役のディカプリオは素晴らしい。アフリカ訛りの英語も、隠された哀しい生い立ちも全身全霊で表現できていた。
そして息子を思うジャイモン・ハンスウも圧巻だ。
未だにアフリカでは少年兵が20万人いるという。ドラッグを使ってまで子どもが洗脳され殺人傭兵にされていく様子を目の当たりにしてショックを受けた。シエラレオネという聞きなれない国でこんな内戦による殺戮が行われていたとは、今更ながら何も知らないトホホな日本人そのものの自分の無知さを実感する。この大作はありがちなラブシーンがなかったのも功を奏して、2時間半だれるところもなく一気に話は進んでいく。




2007/4/7 【 ママの遺したラブソング 】

ママの遺したラブソング」を観た。
母親の死を聞きニューオーリンズの生家に戻った娘とそこに住む母親の友人だった元教授と作家志望の青年の共同生活。正直人間関係がよくつかめなくてこんがらがること数回。
それにしてもジョン・トラボルタが良い意味で老けていた。一時は顔が膨張してどーなるんだろうと思った時もあったけれど白髪の似合う渋めのおやじになっているではないの。大学教授という役柄か会話に引用を交ぜているが、それがすぐピンとくるようなら台詞も楽しめたのかも。これはこちらのアタマの問題ではあるけれど。(-_-;)
展開はありがちで、ここでも「秘密」が存在する。最近観た「あかね空」ではこの秘密に対して説明的な描き方は一切していなかったが、この作品では知らすべき人には全部伝わって終わる。これは仕方ないとはいえいかにもという感じがした。
ただ満喫できたのはニューオーリンズの街並み。津波後、復旧はどーなったのか気になるところだが、私の記憶にあるニューオーリンズだった。市電から見える高級住宅街もCanal Streetもデッキのある南部風の家の造りも・・・。南部の空気を感じられたことはとても嬉しかった。





2007/4/6 【 フランシスコと2人の息子 】

本国ブラジルで500万人以上が鑑賞し映画史上最高の興行成績を上げたほか、アカデミー賞外国語映画賞のブラジル代表作品の「フランシスコと2人の息子」を観た。

このモデルとなったゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノって、ブラジルでは誰でも知っている超人気兄弟デュオだそうだ。
この成功までの家族の苦労はパンパない。貧困と家族愛と夢と喪失と努力etc・・・。ちょっとやり過ぎではあるけれど人からどう見られようが言われようが信念を持って子どもに愛を注ぐ父親が後半とった行動にはこれが親ってものかと感動した。幼い時から父親に応えようとする2人の息子の一生懸命さも、優しく見守り黙って夫についていく母の姿も良かった。貧しさと困難の中で家族はとても愛にあふれている。父親のお陰でヒットした曲もとても良い。
ラストシーンは圧巻。拍手だ!!もっと聴いてみたくなった





2007/4/5 【 今宵、フィッツジェラルド劇場で 】
2006年に亡くなったロバート・アルトマン監督の遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」を観た。
ミネソタのフィッツジェラルド劇場での最後のラジオ公開生放送番組「プレイリー・ホーム・コンパニオン」の様子と舞台裏を描いている。
これ書評ではかなり評判が良いのだが、アメリカンジョークは笑えないし曲のノリもイマイチで実は前半うとうと・・・。ハイ眠ってしましました・・・しかも熟睡(-_-;)。 面白さも良さも分からなかった。
現代の設定なのにラジオ・カントリー&ウエスタン・ハードボイルド・フォークとおおよそアナログでショーも一時代昔風な雰囲気。決して若くはないミュージシャン達のたわいのない楽屋裏を絡ませ淡々と描いた群像劇。失われゆくたそがれゆくアメリカの華やかさへの愛着だろう。メリル・ストリープの歌が上手いことも驚きだが、娘役のリンジー・ローハン♪はさすがに聞かせてくれる。
劇中登場する死神が、老シンガーの死の際に言う「老人の死は悲劇じゃない」という台詞があるが、これは監督の心情だったのだろうか




2007/4/3 【 あかね空 】

直木賞受賞の山本一力原作の映画「あかね空」を観た。
京都から来た英吉(内野聖陽)と明るい江戸っ子のお文(中谷美紀)の豆腐屋とその家族の絆を中心に江戸の深川を舞台に庶民の暮らしと人情を描いている。
当時は豆腐には何もつけないでそのまま食べたのも発見。
「あかね空」というタイトルだけあって夜明けを告げるあかね空は印象的。冒頭の永代橋のセットも素晴らしく、また深川蛤町の裏長屋も情緒たっぷりで江戸の雰囲気がたっぷり味わえた。
主人公以上に印象的なのが傳蔵親分。凄みは半端ないながら品があって知恵があってなんて粋な・・・と思ったらなんと内野聖陽が一人二役。畏れ入りました。ラスト傳蔵親分が帰って行く時もあかね空だった。
隠された秘密 が当人へ伝わるか伝わらないかが謎解きないまま終わるし全体的に説明的に描いていないところがとても好感。





2007/4/2 【 アルゼンチンババア 】

よしもとばななの同名小説を映画化した「アルゼンチンババア」を観た。
タイトルがインパクトあって興味をひかれたけれど、アルゼンチンタンゴとかの場面も中途半端でアルゼンチンと付いている割にリンクは少ない。
主演の掘北真希はとても透明感があり、役所広司はダメ親父ぶりが良かった。けど、この作品の最大の失敗がアルゼンチンババアの鈴木京香のミスキャストだと思う。白髪でボロ服で臭くても綺麗過ぎ。何故あそこまで完璧メイクしている必要があるのかも疑問。ということで誰が演じれば良かったかというと例えば故岸田今日子、夏木マリ、吉行和子etc 。あまりに綺麗で若いババアの為、過酷な人生経験などが伝わって来ず全く感情移入できないのが残念だった。





2007/3/29 【 世界最速のインディアン 】

21歳で「インディアン」という名のバイクと出会い63歳で世界最速に初挑戦した実話を描いた「世界最速のインディアン」を観た。
ニュージーランドからやってきたバート・マンローを演じるのはアンソニー・ホプキンス。資金も心臓もガタガタな中、アメリカユタ州へ向けてのロードムービーでもある。世界記録を出す夢を追い続ける主人公は少年の心そのままで純真で、人懐っこく、人々に愛される。やっぱり人間は人柄よねぇ。こーいう歳の重ね方って素敵。
旅の途中、出会う人々があまりに絶妙なタイミングでしかも良い人ばかりだったのが出来過ぎな感はあるものの、人間としての温かさがあふれている。
それにしても廃品利用で時速288キロというスピードを出し今でも破られていないとは驚くと共に希望を与えてくれる。





2007/3/25 【 さくらん 】

江戸吉原を舞台に花魁を描いた「さくらん」を観た。

原作は安野モヨコ。写真家の蜷川実花監督とあり、映像だけは最高にきれい。特に赤が印象的でどこれもこれも写真集の1ページのよう。
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歳で吉原へやってきた少女が花魁にのぼりつめる中で味わう裏切りや陰謀を絡めて描いている。

「てめぇの人生、てめぇで咲かす」という人に媚びず真正面な主人公を演じているのはヤンキーさではピカイチの土屋アンナ。さすがにモデルだけあってショットショットはとても綺麗 なんだけど・・・、演技がずっと一本調子で半端な印象。しかも椎名林檎の歌は主張が強くて映像の邪魔に思えた。ベルリン国際映画祭に出品されたそうだが、この音楽じゃ受け入れられなさそう。

映像は濃いけど内容は薄いってとこでしょうか。





2007/3/22 【 千の風になって 】

千の風になって」を観た。

客層は年齢層が高く満席状態だった。

タイトルを聞くだけで「♪私のお墓の前で泣かないで下さい。そこに私はいません♪」の同名の曲がリンクする。

死んだ人はお墓にいるのではなくほらそこにいるのだ。秋には光になって・冬は雪になって・朝には鳥になって・夜には星になって・千の風になって吹きわたっています の歌詞のように大切な人はいつでも傍にいるのだ。この映画はまさにこの曲そのもの。エンディングに流れるこの曲の意味の大きさに胸がつまった。

人生避けて通れないものが身内の死だ。これはある意味精神的にかなりのダメージがあるとともに生活そのものを変える場合もある。だけれど「人生に無駄なことはない」という言葉もあるようにこの痛みを乗り越えることは強烈なバネになる。悲しみを知った人は知らない人より器もでかくなると思われる。

幸せって何?死って何?が息子を失った母親・自らの過ちで親を失った子ども・病に倒れた夫を看取った妻の3話を通し生前に伝えられなかった手紙と来るハズのない天国からの返事で綴られていく。

子どもから大人まで生命のルフラン・バトンタッチを堪能できる作品だった。





2007/3/18 【 キング 罪の王 】

キング 罪の王」を観た。

まだ見ぬ実の父親に会いに行った青年が、父に拒絶されたのを機に復讐していくスキャンダラスなサスペンスドラマ。

主人公演じるガエル・ガルシアの瞳はなんて強くて綺麗なんだろう。正常ではありえない邪悪さと無邪気さを兼ね備えた心に闇を持った主人公はつかみどころがなく、不気味さもあいまって大変な存在感だ。あくまでも無表情ながら一点の曇の無い透明な瞳がものすごい冷酷さをあらわしているかのよう。

偽善の象徴として描かれる父親の職業が牧師で聖職者もまた感情を持った人間であるということも含め、信仰そのものへの警鐘をならしている。キリスト教での「罪」の曖昧さも投げかけながら、罪を告白して懺悔すれば救われるんだという考え方へのアンチテーゼだ。

このような映画がアメリカで作られたというのは感慨深い。

「罪の子」として拒否され「神の子」として受け入れられたのだが、そもそも「罪」とは何なのだろうか?余計なものを省いて淡々と先が読めない展開も良くぐいぐい引き込まれた。





2007/3/11 【 バッテリー 】

文庫5巻が累計380万部を突破した、あさのあつこの人気小説を映画化。児童文学ながら年代を問わない感動ドラマ。

野球について興味も知識も無くても充分楽しめる。映画館は坊主刈の野球少年でいっぱいだった(^^)

3000人のオーディションから選ばれたという強い眼差しの主人公の巧のもちろん、現役キャッチャーだという永倉豪役は「投げろ、巧!俺が全部、受けちゃる!」が頼もしく、笑顔が素敵で主人公を支える存在感間が抜きん出ている。弟役はあくまでも純真で天真爛漫。なんといってもキャステングが素晴らしい!!決してプロではないはずのこのメンバーの演技に脱帽。

敢えて言うなら、中学の野球部監督が恩師を訪ねた際にたまたま聞いていた弟の台詞があまりにタイムリー過ぎた点と、終盤の試合に来た人物の応援の演出が大げさと思われるシーンはあったものの、素晴らしいロケーションを背景に、野球を軸にした家族の葛藤や誰もが辿ったような中学時代の校則や教師への反発、部活での上下、淡い気持ち等を描いていて笑って泣ける清々しい作品だった。





2007/3/4 【 蒼き狼 】
遊牧民の騎馬軍団を率いて至上最大のモンゴル帝国をつくったチンギス・ハーンを描いた「蒼き狼」を観た。
主人公の反町隆史はワイルドさはよく出ているもののあれだけの民を率いた指導者として人間的なカリスマ性が感じられない。
女性陣は軒並み? 妻役の菊川玲の演技力の低さ、つたない日本語を話させてまでの韓国人Araの起用が理解できない上に女兵士としての不自然な存在感、母親役の若村麻由美は演技派ながらナレーションはあまりに説明的で誰がどういう感情かまで語ってしまっている。この母親役だけは確実に老けていくのに他の出演者は比例していないのは不自然。
角川春樹が構成27年も掛け、予算30億で制作した作品の割には、何も残らない。何度もある戦闘シーンはどれも似たり寄ったりだし、27,000人ものエキストラを使ったというシーンもCGと代わり映えない。CGで良いじゃん。これって無駄使いといえるかも。
但し、雄大なモンゴル高原の風景だけはとても見応えあった。




2007/2/22 【 幸福な食卓 】

幸福な食卓」を観た。

母親は家を出て、父親は「父さんをやめる」と宣言したフツウじゃない家庭で、それらを静かに受け入れる主人公の少女の中3から高校生までを描いている。

タイトルにあるように食事のシーンが印象的。この映画も朝食シーンから始まる。何があっても、この家族が守り続けている食卓を囲むということが、形はいびつでもそれぞれを尊重し合っているということを感じさせる。

学校のシーンも多いのでなんとなく「中学生日記」的な雰囲気。

彼氏役の勝地涼と母親役の石田ゆり子に明らかに年齢的な違和感を感じたけれど、あったかい存在感が良かった。

この作品の最大の特長は説明的じゃないところ。特にお風呂関係の場面に強く感じた。ヒロインがお風呂場を見るシーンが複数あったり、別居中の母が何故銭湯に行くかも台詞では一切説明がないのも良い。

兄の彼女の台詞「家族は作るのは大変でも、一旦出来たらそうそうなくならない。だから甘えたら良い」がとても深い意味がある。

高校入試用の勉強「切磋琢磨」と「臥薪嘗胆」が果たして私に書けるかな?ちょっと焦った。





2007/2/19 【 リトル・ミス・サンシャイン 】

79回アカデミー賞にて、作品賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞の4部門にノミネートされている「リトル・ミス・サンシャイン」を観た。
全米ではクチコミで予想外の大ヒット、サンダンス映画祭では異例のスタンディング・オベレーションで、日本でも満足度ランキングが高い。
アリゾナから美少女コンテストの地のカリフォルニアまでポンコツバスで向かうロードムービー。一家の主の成功論者の負け組み否定のパパの考え方がアンチテーゼとなっている。バラバラの一家を乗せたバスは旅の途中、各人の夢や希望を砕き、バスの乗客は1人ずつパパの言う「負け組」になっていく。9歳のミスコン優勝を夢見るオリーブにも勝ち目はない。だけどこのイタイ家族がなんとも癒してくれる。そう、パパのいう勝ち・負けの定義は必要ない。

パパ以外のおじいちゃん・伯父さん・お兄ちゃんもみんなグダグダになりながら9歳のオリーブを守っている。お兄ちゃんの「僕の妹を採点させてたまるか」という言葉が妙に嬉しかった。幼い子供を大人顔にして競わせるミスコンそのものへも疑問を投げかけている。
クスクス笑えじ〜んとさせてくれるハートフルな作品にあったかくなった。





2007/2/18 【 ドリーム・ガールズ 】
本年度アカデミー賞に最多(6部門)8ノミネートされ話題の「ドリームガールズ」を観た。
ブロードウェイでは伝説のミュージカルの映画化。
1962年ダイアナ・ロスら4人から誕生した「シュープリームス」がモデル。ジェームス・ブラウンをモデルにしたと思われるエディ・マーフィを始めみんな芸達者。これでもかというくらい贅沢なステージはまるでライブ会場にいるように堪能できる。さすがにショービジネスを描いたらハリウッド映画はすごい。
ダイアナ・ロスを演じたと思われる主演のビヨンセは確かに綺麗でショーも楽しめるけれど、対比されるエフィを演じるジェニファー・ハドソンはもちろん、エディ・マーフィにさえ比べても存在感が足りない。加えてプロモーターのジェイミー・フォックスもかなりのクセ者だけに、濃いキャラクターの中で主演のキャラが薄いのがなんか違和感。
ベテラン勢の中、主演をくっているジェニファー・ハドソンが新人とは畏れ入るばかり。ブラックカルチャーや人種差別もきちんと描きながら、心情をこれぞプロというしっかりとした歌で訴えてくるのは圧巻。それにエフィの子どもに関しても余計な台詞での説明を省いていたことも好感が持てる。





2007/2/17 【 ディパーテッド 】
「ディパーテッド」は香港映画「インファナル・アフェア」のハリウッドのリメイク版。評価も分かれどうやらオリジナルのファンには酷評らしい。(因みに私はインファナルの大ファン)。
で、観終わった感想としては・・・情緒も哀しみも絡み合う人間模様も剥ぎ取ってオリジナルをすっごく分かりやすいようにう〜んとシンプルにした感。こんなに単純な話だっけ?
ディカプリオのギブスの意味にも触れていないし、女医に渡した茶封筒のその後もないし、あのラストは一体何?だし、おまけに何故か三角関係にした恋愛も大味でで、どうしてもオリジナルを軽〜くなぞっているとしか思えない。
一番言いたいのはアンディ・ラウとトニーレオンという目に優しい眉目秀麗なキャストから、ディカプリオ・マットディモン・マークウォールバーグまでall猿顔のキャストになっているとは・・・なんなんでしょう。




2007/2/13 【 ウール100% 】

ごみ屋敷と言われる家に住む姉妹役が、岸田今日子・吉行和子で面白さが確証されているものと思って観たら・・・全く面白くなかった。

なんじゃ「アミナオシ」・・・。これが登場した段階で一瞬にして引いてしまった。もし1人だったら確実に途中で劇場を後にしていた。最後まで頑張って観たのは連れがいたせい。

「アミナオシ」がこの2人の姉妹の若き日のトラウマが呼び起こしたとしても監督の観念が説明不足のまま進展していって全くついていけない。加えて音楽も途中で挿入されるアニメも全部気持ち悪い

最近日本映画頑張っているだけにこの面白そうな邦題で騙された気分。大人のファンタジーという感想を多く聞くけれどこの空気感は私には全く合わなかった。





2007/2/12 【 墨攻 】

伝説のコミック「墨攻」が映画化。中国・香港では驚異的な興行記録を出したそうだ。

紀元前の中国の戦国時代の墨家といわれる思想集団の「墨家」という思想集団のひとりの革離という男が主人公。正直この革離を演じたアンディ・ラウが目当て。期待以上のなんてぴったりのはまり役。この主人公の命懸けで平和を説く人間的な魅力にはカリスマ性を感じる。

4千に対する10万の兵を持った国に、たった一人の知略で戦いを挑むという難題に知恵を駆使した防御戦が見もの。墨家十論の中で特に「兼愛」という言葉が繰り返し登場する中で、恋愛は無理やりつっこんだようで違和感が残った。説明不足なのは、墨家の人々は梁救出に反対したにもかかわらず何故革離は1人でやって来たのか?梁を占領した趙の将軍が死ぬことになったのか?etc大事な随所に疑問は残るものの次々と情勢が変わる展開に目が離せない。

原作は日本漫画でスタッフも日本人、監督は香港のジェイコブ・ジン、俳優陣には中国・韓国・台湾を多数器用ということでアジアの粋を集めた超大作。中国4千年の歴史を垣間見たよう。もしシリーズ化してくれるならアンディ・ラウが出る限りは観たい。





2007/2/11 【 マリー・アントワネット 】

マリー・アントワネット」を観た。監督ソフィア・コッポラの「教科書に出てくるマリー・アントワネットを撮る意味はない」の言葉通り、この映画のヒロインは、悲劇の王妃として描かれていない。
14歳での政略結婚、親元離れた異国の地、孤独、オーストリア女との陰口、ばかげたがんじがらめの風習、無関心な夫、世継ぎのプレッシャー、同じことの繰り返しの日々・・・、こんな中買い物三昧、贅沢三昧になっていくのはある意味精神状態として健全かも。なんとなくふつうの女の子にみえちゃった。
何も分からず遊び呆けていたらフランス革命が起きギロチンに行くはめになったってことでしょうか。
歴史ものだけにいくらでも重厚に描けたものを敢えてポップに作ったのは私には新鮮だけれど、カンヌではブーイングだったという。「キャンディーとケーキの世界」のイメージのとにかく明るい豪華衣装やお菓子やインテリアは飽きることなく目を楽しませてくれる。
消化不良なのは、ラスト近くのヴェルサイユに押し寄せる民衆の怒号の中で両手を広げ大きく頭を下げるシーンは予告編で観て印象的だったけれど本編では何の肉付けもなかったこと。加えてこのポップな演出でこの王妃のラストをどう描くのか観たかっただけにあのラストは肩透かし。断頭台シーンまでは引っ張って欲しかった。
アメリカ映画で全編英語。





2007/2/9 【 六ヶ所村ラプソディ 】
上映会で「六ヶ所村ラプソディー」というドキメンタリー映画を観た。上映前の監督の挨拶によると、東京では最初観客がパラパラだったもののクチコミなどによって5週間の上映終わる頃には満席が続いたそうだ。
青森県六ヶ所村に建設された放射性廃棄物を処理する為の再処理工場が今年20078月に本運転を予定している。それにともなって放出される大量の放射能が海と空に捨てられるのだ。なんてこと・・・。海は青森から岩手を通って千葉まで流れ、空からはいくつもの村が影響を受ける。推進派の考えは「薄まるから大丈夫」。(-_-;)有り得ない。こーんな大変なことが起きるっていうのに冒頭で無関心な青森県人が映される。大丈夫か青森人!!
花とハーブの里の菊川さんをはじめとして有機栽培や無農薬に徹して農業に従事している人々の真っ直ぐな志が無駄になっちゃう。
反対派だけでなく工場専属のクリーニングを請け負うことができれば一生仕事は保証されるという人や家族を養う為に工場という働き口は不可欠という危険な中に身をおいた人々のやむにやまれぬ側面も含めて、六ヶ所村の暮らしを偏らないで描いている。みんなそれぞれの立場があって一生懸命生きている。
終盤何故六ヶ所村だったのかという答に「ヘンピだから」というのがズキッときた。いつもいつも損をするのは弱い者。
青森県人はもちろん全国的にこれは観るべき作品。




2007/1/21 【 それでもボクはやってない 】

Shall We ダンス?」(1996年)以来の周防正行監督作品の「それでもボクはやっていない」を観た。

痴漢冤罪事件を通して見えてくるのは日本の問題あり過ぎる裁判。

周防監督は実際に200回も裁判を傍聴し、経験者等からの取材を元にしただけあって、リアリティーあるシーンの連続。主人公と一緒に戦っている気持ちになった。

刑事事件で起訴された場合、裁判での有罪率は99.9%だそうだ。ろくに調べようとしない警察、投げやりな調書、検事の証拠隠蔽、そして極め付きはあの裁判官。駅員も警察官も検事も裁判官もみんなに腹が立つ。これに問題提起をした周防監督の勇気はたいへんなものだ。

無駄な時間とお金をかけても無罪を主張するか or やってもいない罪を認めて簡単に済ませるか?どっちの選択もこの嫌な現実に失望感でいっぱいになるけれど、それでもこれは観るべき作品。

後日、顧問弁護士にこの映画の話をした時に「無罪を多く出すような所謂人権派の裁判官は出世しない」という更に落込むような話を聞いた。2年後に始まる裁判員制度で何かが変わってくれたらいいのだけれど・・・。





2007/1/19 【 王の男 】

韓国のアカデミー賞と言われる大鐘賞では史上最多10部門受賞。本国韓国では2006年に、観客動員数1230万人で4人に1人が観たという歴代興行ランキング2位の超大ヒットの「王の男」を観た。

予告編とタイトルではそれほど期待していなかった・・・が、これは面白い!韓国史上最大の暴君といわれた燕山君(ヨンサングン)とチャンセンとコンギルという2人の宮廷芸人の三者を中心に描いている。

王はその狂気・残虐・幼さ・孤独・悲しみが、チャンセンは正義・男気が、そしてコンギルは美しさ・優しさ・純粋さを この三者それぞれの俳優陣の演技がお見事!脇役陣も芸達者で層が厚く見応え充分。

絢爛豪華な宮廷を舞台に入り乱れる人々の感情に笑ったり、泣いたりした。最下層の身分ながら二人の芸人の崇高な生き様と真っ直ぐな気持ちがいつまでも心に残った。





2007/1/7 【 幸福のスイッチ 】

長女ちょこと一緒に「幸福のスィッチ」を観た。

サブタイトル「家族の絆はプラスとマイナス。くっついたり、離れたり」とあるように、反発したり認め合ったりのよくある家族を描いた作品。

何が良かったってこのヒロインなる次女の怜(上野樹里)のキャラが、隣でこの映画を一緒に観ている長女像とかな〜りの割合で重なったこと。これは笑える。ふてくされては騒ぐところ、「最悪」「もうヤダ」が口癖なところ、自転車を爆走しているところ、そして極め付きは父親の「長女は何も言わんでもしっかり、3女は言うと直した、ケド、次女(ヒロイン)はいくら言うても電気はつけっぱなし水は出しっぱなし」という台詞。そのまんまじゃん。上野樹里=ちょこ?いえいえ 稲田怜=ちょこ でした。更にヒロインの着ていたチェックのシャツまでが本日のちょこの着ている服と檄似。

不器用な親子関係をユーモアを交え優しく描いている。父親役の沢田研二もガンコ親父像がマッチしていて、主人公との台詞の応酬は楽しめた。舞台となった和歌山ののどかな風景も地元の人々も含めなんとも温かい愛すべき家族映画でした。





2007/1/3 【 大奥 】

女たちの愛憎劇を描いた時代劇「大奥」が、三度のテレビシリーズを経て映画化。大奥史上最大のスキャンダルと言われる「絵島生島事件」を中心に様々な人間関係を描いている。

絵島(仲間由紀恵)、月光院(井川遥)、天英院(高島礼子)の三者三様の恋の対比の中、「絵島生島事件」の実行犯を演じた宮路(杉田かおる)の複雑な情念としたたかさが特に印象的だった。

華やかだったという江戸の町人文化の演出が見事で歌舞伎や祭は見応えあった。そして次から次に女優陣が身に付ける打掛という着物は一億以上かかっているだけあってまぁ呉服展示会をみるがごとく豪華でため息が出るほど絢爛豪華で冒頭の城内の花そのもの。

何故生島新五郎が絵島に恋したのかと、同じ役者同士の天英院の恋人と生島の葛藤がもっと丁寧に描かれていたらもっと良かった。そして、主演の仲間由紀恵はどうしても「巧妙が辻」の千代のイメージがだぶるようなキャラ(しっかり者)だった為、アレ?同じじゃん みたいな印象になったのは残念。


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