MOVIE      2009年映画館で観た感想 (基本的にレンタル等の鑑賞は含みません)

 


パイレーツ・ロック
カールじいさんの空飛ぶ家
空気人形

Disney'sクリスマス・キャロル
なくもんか
2012
ゼロの焦点
マイケル・ジャクソン THIS IS IT

サイドウェイズ
幸せはシャンソニア劇場にて

沈まぬ太陽
仏陀再誕
女の子ものがたり
      
ヴィヨンの妻
扉をたたく人
ウルトラミラクルラブストーリー
それでも恋するバルセロナ
セントアンナの奇跡
サンシャイン・クリーニング
レスラー
インスタント沼
20世紀少年<最終章>ぼくらの旗
サマーウォーズ
南極料理人
アマルフィ女神の報酬
いけちゃんとぼく
ディア・ドクター
ハリー・ポッターと謎のプリンス
チェイサー




ハゲタカ
グラン・トリノ
重力ピエロ
フロスト×ニクソン
天使と悪魔
カフーを待ちわびて
60歳のラブレター
ロルナの祈り
鴨川ホルモー
スラムドッグ$ミリオネア
シリアの花嫁
レッドクリフ Part II
ラースと、その彼女
ウォッチメン
イエスマン"YES"は人生のパスワード
釣りキチ三平

ホルテンさんのはじめての冒険
フィッシュストーリー
ZEN禅
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
エレジー
ザ・ローリングストーンズ シャイン・ア・ライト
少年メリケンサック
7つの贈り物
英国王その給仕人に乾杯!
わが教え子、ヒトラー
20世紀少年(第二章)最後の希望
チェ 28歳の革命
007/慰めの報酬
マンマ・ミーア!
K-20 怪人二十面相・伝
ワールド・オブ・ライズ








2009/12/20 【 パイレーツ・ロック 】
パイレーツ・ロック」を観た。
数年に1度、とんでもなく面白いイギリス映画に出会ってきているので(前回は3年前のキンキーブーツ)今回もそれに続くか?そもそも1966年のブリティッシュロックだし主演はフィリップ・シーモア・ホフマンだし・・・ある程度面白さはお約束されたようなもの。
親の目を盗んで深夜ラジオに耳を傾けるってのは通ってきた道であれそこ青春って感じで懐かしくもあり。
本編でのラジオはのっけからフィリップ・シーモア・ホフマンのDJによる♪All Day And All Of The Night( KINKS)だもの。他の曲もストーンズフームーディーブルースヤードバーズと懐かしさ全開。名曲プロコル・ハルムの♪A Whiter Shade Of Pale青い影♪で、しっとりさせるあたりも王道か。
他のDJのメンツも芸達者の実力派揃いだし、当時の女子のファッションもミニ全盛でそれはそれはカラフルでおっされ〜の域。真面目さ故の政府高官の可笑しさ ・・・これら最高の下地があるにもかかわらず 政府X海賊ラジオ曲・恋愛・DJ同士の戦い・タイタニック要素etcあれこれ盛り込み過ぎで全体的なまとまり感に欠けるような。イケメン青年の存在感も半端でなんとなく誰を軸にしているのかも伝わりにくい。
加えてそうそうたる60年代ヒットの中での違和感の極めつけはエンドロールの♪Let's DanceDavid Bowi)いくらダンスシーンはあるとはいえ何故にこれを使ったのか理解に苦しんじゃう。これは60年代というより80年代を代表する曲でしょ。あ〜惜しい。




2009/12/11 【 カールじいさんの空飛ぶ家 】

ディズニー・ピクサーのアニメ「カールじいさんの空飛ぶ家」を観た。
同時上映の短編「晴れ ときどき くもり」は、雲が産み出す色々な赤ちゃんをコウノトリが運ぶという話でクスクス笑える和み系。
そして続いて始まった本編は冒頭の10分で家が浮く前のカールじいさんが妻エリーと子供の頃に出会ってから共に過ごしやがて妻を見送り1人残されるまでを一切の台詞もなく描ききっている。この台詞のない走馬灯のような約10分の映像にジ〜ンとなってしまう。
いくらカールじいさんが偏屈そうでも少年カールが重なってしまって感情移入しまくり。妻との思い出がつまった我家を出るくらいないならと家に風船をつけて冒険に出るということ自体が切なくて。
特筆すべきはカラフルな風船をつけた空飛ぶ家の映像がとってもとっても印象的に描かれていること。加えてまぼろしの鳥をめぐっての探検家とのファイトに登場するワンチャン達を描くにあたって犬の習性をここまで観察できているとはたいしたもの。
妻を失った喪失感を乗り越えたカールじいさんは力強い。大事なのは決して思い出の詰まったモノじゃないってのはとても教訓に!!あの空飛ぶ家がラストに落ち着く先のドラマチックさもうれしい。





2009/12/1 【 空気人形 】

空気人形」を観た。
ラブドール登場といえば今年観た中で「ラースとその彼女」があった。あちらはラブドールを取り巻く人々を描いていたけれど、今作はそのラブドールからの視点で描いている。
この人形を演じたのが韓国人女優ペ・ドゥナ。出演作「リンダ リンダ リンダ」ではさほど印象的でもなかったけれど、本作での存在感といったらまさに人形と言えるモデル体型といい無垢な表情といい他にこの役を演じられる女優はいないのではというくらいのはまり役だった。
その人形と対照的に描かれているのが都会で取り残されたような人々。その中で人形の持ち主(板尾創路)が、人形が人形でなくなったと知った時の「面倒くさい」という台詞は予想外で驚いてしまったけれど、孤独だけれど煩わしい関わりを嫌う人々の本音を的確に表していて妙にリアルで印象的。
多分この映画のテーマに沿っていると思われる老人の詩と、人形が心を寄せる青年像(ARATA)が共に抽象的でよく伝わらなかったのが残念。青年が何気なく言った「自分も同じようなものだ」という言葉の末路についても自然の流れというには抵抗がある。
人間と人形の差を‘燃えるゴミ’‘燃えないゴミ’で分けちゃうあたりがシュール。





2009/11/30 【 Disney'sクリスマス・キャロル 】

Disney'sクリスマス・キャロル」を観た。 

チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」といえば、これまで何度か映画化されている中で、「ミッキーのクリスマスキャロル」は子供が小さい頃に繰り返し観た。なので馴染み深いものの、今作は3D鑑賞ということもあり予想以上の半端ないバージョンアップとなっていた。臨場感たっぷりで画面も暗いこともあってく幼児向けからも脱却し大人が楽しめる。
ロバート・ゼメキス監督は「ポーラー・エクスプレス」でも素晴らしいパフォーマンス・キャプチャー&CGアニメーションの技術を見せてくれたものだけれど今回3D映像となり更に極まった。
「ポーラー・エクスプレス」ではトム・ハンクスが1人5役分の声を演じたと話題になったが、今回はジム・キャリーが17役だという。私の観たのは日本語吹き替え版だったので、代りに山寺宏一の見事な声優ぶりを堪能できた。ジム・キャリー以外にもゲーリー・オールドマンも3役を演じるというのも見どころだったのだけれど、実際にはあまりにデフォルメされていて誰が何をやっているかよくわからなかったので、そこらへんも楽しみにしている方はあらかじめ情報を入れてから鑑賞したほうが無難かも。
空を飛ぶシーンなどはまるでディズニーのアトラクションそのもの。ただ3D映像も驚かされるのは最初であとは慣れるものらしく、観終わって‘疲れた’という感想があるのも納得。
『今のあなたは、昔‘なりたい’と願っていたあなたですか?例え今は「Yes」と答えられなくても、人は変わることができる』というメッセージは160年前も今も変わらず切々と心に響く。
ロバート・ゼメキス監督が「ポーラー・エクスプレス」に続きまたしてもクリスマスの名作を生んでくれた。





2009/11/26 【 なくもんか 】
なくもんか」を観た。
独特のテンションで芸達者の阿部サダヲ主演ということでさすがにそれだけで面白みがあるのだけれど、宮藤官九郎脚本の特色のひとつとも言えるのか、今回もまたしてもいろいろつめこみ過ぎな感がある。
阿部サダヲがキャラを活かしながら八方美人には八方美人になるだけの深い理由がある切なさも好演。「善人通り商店街」はお祭り騒ぎのような活気あふれる空気感がダイレクトに伝わってくるようで素晴らしい。
それなのになんか全てが中途半端になってしまったのは、態度を豹変させるご近所さんやハムカツ屋のエコ化など余計なものがあったせいかも。
それでも中盤までは商店街を舞台に人情を描いているのでまだ良かったものの、後半の沖縄を舞台にした段階で一気に失速。
瑛太演じる漫才師の弟は人気はあるものの芸は無いという設定ではあるにしても見ていて辛い。ここで絡むことで活きてくるハズの兄の‘週末の謎’もどうにも半端で肝心の漫才が全く面白くならない。
兄弟愛つながりで思い出すのは2006年の映画「手紙」。笑って泣かせる見事な漫才を見せてくれたものだけれど、今回はとてもあの域には及ばなかった。





2009/11/21 【 2012 】
2012」を観た。
何しろ想定が3年後ということだし、天変地異危機説もささやかれているだけに‘あり得ない話’として娯楽映画として切り離せるものではなく話題性も注目度も高い。
こーいうパニック映画ではよく「人間が描けていない」という批評を目にするけれど、これでもかという大地震・地割れ・津波・火山弾・溶岩etc地球の崩壊シーンがこんだけ描けていればある意味充分なのではないでしょうか。
所謂‘すごい映像’というのには麻痺気味ではあるもののこの迫力の凄まじさには圧倒されちゃう。この高揚感はテーマパークのアトラクションに乗った気分にも似ているかも。
主人公(ジョン・キューザック)が直面していく危機や家族愛に関してはこの手の作品ではまさにステレオタイプなので良い意味でも悪い意味でもどんな場面でも‘安心’して観ていられる。こーいう作品にヒューマンドラマとしての感動を求めるものでもないでしょうし・・・
まぁ生死を分けた登場人物に関しても想定内ということで上手く収まったような。
人間は二の次という意味で印象の薄いキャスト陣の中で唯一ロシア人役の富豪を演じたジョン・ビリングスレイが際立っていたように思う。アニマル浜口似と思ったのは私だけ?
結果的に人類を救うことになったのが某国の技術によるものだったワケだけれど、「さすが○○だ」の台詞には苦笑。まぁ半端ない経済成長をしているから3年後の設定としてはリアルなのかも・・・とはいえ現段階では媚びてるような・・・(-_-;)




2009/11/17 【 ゼロの焦点 】
ゼロの焦点」を観た。
松本清張生誕100周年を迎えて名作が蘇る。アカデミー賞女優3競演ということもウリのようで「夫の足跡を追う妻」「秘密を守る受付嬢」「夢に挑む社長夫人」だけれど、実力の差が明白で、表向きの主人公とは別でこの映画の主人公はどう見ても中谷美紀でしょう。存在感と渾身の演技は圧巻。加えて脇役の木村多江も少ない出番ながら申し分なく実力を発揮。ということで不満はやはり主人公。他の2人が上手いだけにナレーションまんまの棒読み台詞まわしの物足りなさが目立つ。
原作は既読ということで展開は読めるものの、原作とはラストを変えているというので楽しみに鑑賞。が・・・原作に手を入れた箇所が活かされていないような・・・(-_-;)
ラストの室田社長の行動が唐突。犯人による告白シーンも真相にたどりつくということを台無しにして先を急ぎ過ぎ。そして中谷美紀の弟役ははっきりいって不要。
それに加えて、表情が分かりやすいようにドアップになるカメラワークや、いくら人物像がそうだからと言ってもやり過ぎ感のあるハデな衣装etc強調したかったんだろうけれど逆効果で過剰演出になんとな〜く 古臭さを感じた。
鉄道に詳しい人によると、東京〜金沢間を結ぶあの蒸気機関車C11は、地方のロ−カル線など距離が短いところを走る小型の機関車で特急列車を引っ張るという設定自体があり得ないとのこと。詳しくはよくわからないけれど昨今鉄道ブームもあるから観客の目線は思いのほか厳しいということで。

エンドロールの中島みゆきの♪愛だけを残せ ってどーなんでしょう。力強い歌詞ではあるけれど朗々とした歌い方も曲全体も大げさでどーも好きになれない。






2009/11/12 【 マイケル・ジャクソン THIS IS IT 】
マイケル・ジャクソン THIS IS IT」を観た。
7月に実施予定だったロンドン公演のリーハーサルを編集した貴重なこのフィルムが、今年20096月に急逝したマイケル・ジャクソン(享年50)の遺作映画となってしまった。世界中で大反響を呼び日本でも2週間限定だった上映期間が延長されている。
晩年のマイケルは、残念なことに様々なゴシップ報道で、まるで‘キワモノ’扱いされていたように思う。その半端ないバッシングをずっと見てきただけに、この「THIS IS IT」でのリハーサル風景を観て、まずそのクオリティの高さに驚くとともに、彼がどれほどこの公演にかけていたかを目の当たりにして、突然の死はその心半ばという意味で残念でならない。
なんでもLATV番組で天上のマイケルと交信した霊能者が「THIS IS ITについてはあまりにリハーサル過ぎる映像なので観てほしくない」とマイケルの気持ちを泣きながら代弁したという。とてもリハーサルとは思えない本番さながらのシーンもあるけれどあくまで「ウォーミングアップ」と本人が意識しているだけに、完璧な本番は‘こんなもんじゃない’という披露できなかった悔しさが伝わり今回ばかりはサイキックな言葉も納得してしまう。

余談ながら私が一番マイケルの曲を聞いたのは、♪スリラーから始まった記録的な大ヒット曲の数々ではなく、それ以前の「オフ・ザ・ウォール」。もうアルバムは手放してしまったけれどチャーミングなルックスもあいまって何度も聴いたもの。なのでマイケルの死を惜しみ改めて購入したCDはやはり懐かしい「オフ・ザ・ウォール」となった。
私程度のファン(と呼べるかもビミョウ)でさえ、胸をよぎるものがあるだけに、ファンはもちろん世界中からマイケルを崇め集まったダンサー達や一体となって作り上げてきたスタッフ達がマイケルの死をどう受け止めそしてこの映画をどんな気持ちで観たのかに思いを馳せると胸がつまる。

マイケル・ジャクソンは数々のスキャンダルにまみれ誹謗に耐えながらも、進歩し続け手を抜かないまさに最後まで商戦的な人生を貫いた。拍手。





2009/11/6 【 サイドウェイズ 】
サイドウェイズ」を観た。
200477回アカデミー賞脚色賞受賞作の「サイドウェイ」を日本映画としてリメイク。ハリウッド版のオリジナルはレンタルで鑑賞したのだけれど劇場公開を見逃したのを後悔させるに十分な面白さだった(サンドラ・オーの大ファン)。
今回リメイクに当たりユーモアを入れたかったのかもしれないけれどオリジナルからぬくもりや哀しみを取り去ってまるでお子様向けにしただけのよう。
オリジナルでは一番のとっておきのワインを飲む主人公の姿にやるせなくなったものだけれど、あのほんのり渋くてほんのり漂う哀愁はどこにも見当たらない。
小日向文世・生瀬勝久・菊池凛子・鈴木京香はオリジナルのイメージを大切にしてのキャスティングというのは伝わるけれど、総じてハイテンションで浮いていた感があるしワイナリーで働く痲有子(鈴木京香)はヒステリックなくらい気が強く魅力に欠けていたような・・・総じて‘たで食う虫も好き好き’ってとこか。
決してはスマートとはいえない情けない大人の悩める姿は、それなりの面白さはあるものの、リメイクに当たり変えたのは日本人のキャストだけということに意味はあるのでしょうか。これだったらはるかに出来の良いオリジナルを観れていれば良い話。
ワインのうんちくを語るについても違和感があって、ここも上っ面をなでた程度。
オリジナルでは「今日開けたワインは別の日開けたら別の味がするハズ」「ピークを過ぎたら枯れはじめていくその味もたまらない」とワインを人生になぞった台詞が印象的だったが、本作でも「どんなワインを飲むかではなくて、誰と飲むかが大切だ」というとても素敵な台詞があったのは救い。





2009/11/1 【 幸せはシャンソニア劇場から 】
幸せはシャンソニア劇場から」を観た。
コーラス」の製作者ジャック・ペランとクリストフ・バラティエ監督が再タッグを組みスタッフ・キャストが再集結したもので本国フランスでは130万人を動員し大ヒット。
1930年代の世界恐慌の影響を受けたシャンソニア劇場にまつわる人間模様の中で、主人公ピゴワル(ジェラール・ジュニョ)と息子ジョジョ(マクサンス・ペラン)の親子愛を描いている。

ピゴワルの‘the庶民’という風貌がいかにも味があって応援せずにはいられないし、ジョジョ君は「ニューシネマ・パラダイス」でトトを演じたジャック・ペランの実息だとかで活き活きと奏でるアコーデォオンの音色はパリの下町にとっても合う。世界観はまさに「ニューシネマ・パラダイス」路線でじんわりあったか〜い作品だった。
登場人物の 飲んだくれのだらしない父親ピゴワル・ストを扇動するうさんくさい男ミルー・あやしげな者まね芸人ジャッキー・ラジオ男こと引きこもりの音楽家 という面々が徐々に愛すべき人情味あふれる違った側面を見せていくという描き方が秀逸。
似たようなタイトルの「今宵、フィッツジェラルド劇場で」では舞台そのものがつまらなかったけれど、こちらの舞台はなんて夢のようで楽しいことか。ここでも登場人物の描き方と同じく、最初客受けの悪いダメダメステージを見せておいた上で後半の夢のようなみんなキラキラ輝いているミュージカル仕立ての舞台を見せてくれるので感慨もひとしお。♪パリ〜パリ〜のドゥース役ヒロインも魅力的。
舞台以外では、近所迷惑かえりみずピゴワルの家の下で、ジョジョがアコーディオンを弾きジャッキーとミルーが歌うシーンが特に好きで 笑わせて泣かされた。
原題は「FAUBOURG 36」で、ファブールとは街外れという意味とのこと。冒頭のピゴワルの台詞で「出身はフォブール」「フォブールはひとつしかない」とあり劇場そのものを指していると思われるので、タイトルはこのままの方が良かったかも。





2009/10/30 【 沈まぬ太陽 】

沈まぬ太陽」を観た。
山崎豊子原作の途中休憩を挟む上映時間3時間22分という長編大作でしかもずっしりとした重厚作品。
一応「フィクション」とはなっているけれど会社から理不尽な不当待遇される主人には実在したモデルがいたというし「御巣鷹山の墜落事故」や会社経営陣vs労組 の図から、モデルとなった国民航空=JALだということは明らか。
社内部の派閥やら政治家や官僚との絡みが赤裸々に描かれる。
日本航空の経営問題がクローズアップしているまさに渦中だけにとても興味深い。しかも日航が映画制作の中止を求め拒否反応したという‘おまけ’つき。
10年近くもカラチ、テヘラン、ナイロビと赴任させられ家族を巻き込んでも、それでも会社の意向をそのまま受け入れる主人公恩地演じる渡辺謙は不思議な透明感をかもし出していた。
今の時代ならさっさと見切りつけちゃうでしょ・・・ しかも東大法学部出だし・・・。その胸の内を ‘矜持’と言って理不尽なことでも受け入れる主人公は昭和ならではの企業戦士なのでしょう。世代が違うこともあってその生きざまは全肯定はできないけれど、こーいう人材が会社の宝だとJALは気づいて膿を出すべき。
上映に圧力かけるなんてナンセンスだしそんなことしているなら再建も無理でしょう。





2009/10/24 【 仏陀再誕 】
仏陀再誕」を観た。
大川隆法(幸福の科学)が製作総指揮として、自らのベストセラー を息子の大川宏洋脚本でアニメ化したものだという。
劇場に足を向けたのは、公開後の興行成績がなななんと2位と大ヒットしていたという驚きから。
つい観客に興味がいってしまいきょろきょろしたけれど、信者さんらしき方以外に学生も多く、もしかしたらこれは宗教映画としてよりアニメとして一般受けしていたのかもしれなく、確かに実力派声優陣と業界有数のVFXスタッフをそろえた点ではクオリティは高い。
内容的には宗教ということで文学的な落ち着いた作品かと思いきや、ロマンスに加えなんとUFO・大津波・電波ジャックetcSF要素まで盛り込んでいたとは想定外。
大川隆法がモデルと思われる人物が美形に描かれていて、決して好みの外見ではないけれどハニカミ王子こと石川遼に似ていると思ったのは私だけ?対する操念会のトップはいかにもおやじギッシュに描かれているのがあまりにも露骨で苦笑。
一番受けたのが、仏教なのに天使がいっぱい しかもスーパーモデル並みの天使まで登場するくだり。
韓国人歌手によるエンディングテーマ曲「悟りにチャレンジ」はもしかしたら韓流ファン狙い?いやぁ手ぬかりない。エンドロールのすっごい数の自営業を含むスポンサー企業名にも見入ってしまった。
これだけお金をかけた大作が作れるのであれば、宗教映画じゃないところでもアニメやっていけば選挙やるより良いのではないでしょうか。





2009/10/17 【 女の子ものがたり 】
女の子ものがたり」を観た。
西原作品ではお馴染みの貧困と逃げ場のない閉塞感を背景に、この映画ではたまたま移り住んだ町ってことになるけれど、「生まれた土地は選べない。なんでこんな町に生まれちゃったんだろう」「運命を変えるにはこの町を出るしかない」・・・みたいな発想がベースの 原作者の自叙伝的なストーリー。
「貧乏」をユーモアで包み生きるたくましさとして描く西原漫画の世界を映像で描くには限界があるのかもしれない。そして今回はその「貧乏くささ」さえもきちんと描かれていない。前作の「いけちゃんとぼく」では主人公の友達の‘うどん屋の子供’の描き方が完璧だっただけに残念。
主人公なつみを黄・みさちゃんを水色・きいちゃんをピンクにキャラを色分けしていたのが、なんともファッショナブルでおされ〜にさえ見えるし、いじめられっ子の2人は「顔が変だの汚いだの」からはかけ離れていた。
成長した高校時代から結婚後に至っては思慮が浅く愚かな道を歩んでいくけれど、モデル並みに美人でスタイル良くイケテルお姉ちゃん達なのでリアリティが全くない。
同じことがきいちゃんの母親役の風吹ジュンにも言えてあの無駄なきちんと感には首をかしげてしまった。
脇役だけじゃなく、主人公なつみに関しては子供時代も高校時代も素朴な外観で華やかさがないのが逆にリアリティがあったとしても、将来的にどこがどうなれば深津絵里につながるのかとっても疑問。
なつみが描いた「女の子の前にいくつもの道があってその道はちゃんと前に延びている」絵だけは素敵。





2009/10/14 【 ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜 】
ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」を観た。
太宰治生誕100周年記念作として作られ、第33回モントリオール国際映画祭にて監督賞を受賞。
タイトルの「ヴィヨン」は高い見識がありながら放蕩な人生を送ったフランスの詩人フランソワ・ヴィヨンに由来しているということで、太宰が自らをモデルにしたと思われる小説家の大谷は、まさに破滅願望が強く自分勝手な放蕩者なんだけど、なんともはかなくて口から出る言葉は知性があって品がある。
「女には幸福も不幸もないものです」「男には不幸だけがあるのです」「生きるのは怖い、死ぬのも怖い」「佐知はだる〜くなるほど素直です」「生まれたときから死ぬことばかり考えて」「やっぱりコキュに成り下がった」のコキュ(cocu)はフランス語で妻を寝取られた夫のことだというからついその文学的な台詞の数々には思わず聞き入ってしまう。
絶望的な中でも妻が全てを受け入れ続ける理由は、純粋にただ一人自分を理解してくれた2人の出会いにあるのかも。小料理屋から金を盗んで逃げたと聞いて高笑いするシーンにめげない妻像が凝縮されていたように思う。さりげないラストシーンにホっとさせられた。
副題の「桜桃とタンポポ」は大谷の作品の「タンポポの花一輪の誠実を僕は信じたい」に由来しているのかと思いきや、主人公の大谷(浅野忠信)と佐知(松たか子)を例えたということ。
痛みやすいけど甘みがあって愛される‘桜桃’が大谷、どんな環境にも対応して成長し華やかではないけれど誠実な美しさを持った‘タンポポ’が佐知ということらしい。
そんな説明文を読まないと伝わらないようなことを敢えて副題にした意味あいに疑問。





2009/10/11 【 扉をたたく人 】
扉をたたく人」を観た。
ある移民との出会いが社交的とは対極にある男に変化をもたらすという意味では「グラン・トリノ」に通じていて、今回は不法移民にスポットを当てる。偶然とはいえ異民族のシリアとセネガル出身者との出会いがあるというのが多民族国家アメリカらしい。
何といってもこの邦題に感心。
原題は「the Visitor」とあるので主演の大学教授を演じるチャード・ジェンキンス宅の訪問者というのがストレートなんだろうけれど、Visitorは移民のことでもあり、扉は9.11以降に不法滞在者に不寛容になったアメリカそのものであり、また無気力で閉ざした主人公の心そのものとも言える。
果たしてそれぞれの扉は開かれるのでしょうか・・・。世の中には開かない扉もあるけれどラストの主人公の姿に何かつきぬけたものを感じた。
心を通わせるきっかけになったジャンベ(アフリカンドラム)の音色は当初ノリノリで軽快だったけれどラストになんとも言えない哀愁を帯びたように思えた。





2009/10/1 【 ウルトラミラクルラブストーリー 】
ウルトラミラクルラブストーリー」を観た。
映画との相性もあり、イマイチだと思ってしまう作品というのは少なくないものだけれど、これほど不快になった作品は珍しい。
横浜聡子監督は青森出身で同郷の松山ケンイチに出演をオファーしたということ。人気実力俳優松ケンが主役な上、他の主演者も麻生久美子・原田芳雄・渡辺美佐子etcと何気に豪華。
さすがに松ケンの津軽弁は半端なく、地元の子供の台詞もよくわからないので途中まで字幕が欲しいと思ったけれど、もし仮に台詞を理解出来たとしてもこの監督の意図することはわからなかったと思う。
常識を蹴散らした前代未聞の“ウルトラ”に“ミラクル”なラブストーリーということだけれど、何をどう考えたらこの監督が故郷を舞台にこんなブラック過ぎる悪趣味な要素をちりばめたのか理解できるようになるのかわからない。
メジャー・デビュー第1作ということだけれど今後が気掛かりで危ぶまれる。





2009/9/28 【 それでも恋するバルセロナ 】
ウディ・アレン監督の「それでも恋するバルセロナ」を観た。
ウディ・アレン監督もすぐに気に入ったという「♪バルセロ〜ナ」と繰り返し流れる主題歌のまさに「BARCELONA」という曲は一度聞いたら忘れられないくらい印象的で、まさにこの映画にぴったりの曲。
登場人物の性格や心情を第三者のナレーションでわっかりやすく語る演出はウディ・アレンらしさ。
タイプの違う親友が同じスペイン男を好きになるっていうことだから友情どころじゃない泥沼バトルになるかと思いきやひとひねり加えているところが面白い。まぁこの二人の性格は違えどもアメリカ女ってのは一般的にストレートで感情的なイメージが強いんだけれどスペイン女はその比じゃないってのがミソ。自分はどのタイプなんて考えながら見ても面白いかも。
スペイン男女の両人の「成就しない愛だけがロマンティック」との意味深な台詞はストーリー展開の伏せんになっていたような。バルセロナという魅惑的な土地で情熱のバカンスを過ごした2人からはなんとなく大きな‘ため息’が聞こえてくるような気がした。
アメリカ女もたじたじになるくらい激情的でエキセントリックなスペイン女を演じたペネロペ・クルスはアカデミー賞助演女優賞を受賞したけれど う〜ん それほどかなぁ。オスカーはやっぱり先日観た「レスラー」のマリサ・トメイに軍配あげちゃうなぁ。




2009/9/26 【 セントアンナの奇跡 】
セントアンナの奇跡」を観た。
人種問題を鋭く描き、黒人社会を代表する社会派監督、スパイクリーの初めての戦争映画。これは2時間43分という時間を感じさせない力強さで骨太作品だった。
冒頭の不可解なNY郵便局での殺人事件と犯人宅から見つかった貴重な彫像で謎を投げかけ 一気に惹き込む‘つかみ’は最高で、その後彫像が消えた40年前のイタリアへ遡るという展開もお見事。
戦闘最前線の
黒人兵だけで組織されたバッファロー・ソルジャーの4人が中心なんだけれど、‘チョコレートの巨人’以外の3人は見分けがつかなかったのが残念(-_-;)
この4人の目を通し、米軍の上官・ドイツ軍の上官・トスカーナの人々・アメリカ南部の白人と様々な視点から単なる敵味方では割り切れない人種差別も浮き彫りにしていくのはこれぞまさにスパイク・リー色。
イタリアで起きたセントアンナの大虐殺を背景にトスカーナの村やパルチザンを絡ませ凄惨な戦闘シーンも多いけれど、トスカーナの素朴な風景と人々や‘チョコレートの巨人’になつく少年の様子も印象的。
冒頭の謎が繋がってむかえたラストはちょっぴりファンタジックでもあって感動的で爽快。





2009/9/21 【 サンシャイン・クリーニング 】
サンシャイン・クリーニング」を観た。
ラストのはっちゃけが爽快で愉快だった「リトル・ミス・サンシャイン」のプロデュースチームが再び集結したという触れ込みの本作にかな〜り期待したのだけれど・・・盛り上がりに欠けユーモアも半端で肩すかし。
姉妹の事件現場のクリーニングの仕事自体は怖いもの見たさも手伝って面白くなりそうな設定にもかかわらず、孤独死した故人の娘とのエピソードにしても、母の自殺にしても、華やかな高校時代とのギャップにしても、どれもが中途半端で上手くかみあっていない。
終盤に姉妹が「TV画面で見る若き日の母」は重要なシーンなんだろうけれど 心象がイマイチ伝わってこないのもマイナス。
やはり「リトル・ミス・サンシャイン」にも出演していたメアリー・リン・ライスカブの仏頂面が、ドラマ「24」のクロエ・オブライアン役にそのままリンクしてここだけちょっと苦笑。





2009/9/11 【 レスラー 】
レスラー」を観た。
かつてセクシー俳優ということで絶大な人気があったのにいつの間にか顔を見なくなったと思ったらミッキー・ロークは、なななんと15年もハリウッドから干されて失業中の過去の人だったとは・・・。久々なミッキー・ロークは、以前の色男の面影はなく、マッチョでパンパンのおっさんだった。ここにいるのはまさに老いた落ち目のレスラーとして生きるランディにミッキー・ロークの人生をシンクロするように乗り移った男。
過去の栄光は遠く、冴えない日常の中で、他の何を失ってでもひたすらレスラーとして生きる主人公の人生の悲哀をしみじみと演じる。レスラーとして生きる地味な舞台裏も興味深かった。
若い頃には人気があったにも関わらずさほど魅力を感じなかったけれど、むしろ色んな意味で崩れた今の方がずっと哀愁漂って人間的で魅力的じゃなの。この役にめぐり合うまでの年月は無駄じゃなかったと思えるくらいのはまり役。
渾身の演技という意味では主演のミッキー・ロークが81回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされたのと並んでストリッパー役のマリサ・トメイの助演女優賞ノミネートも十分納得。44歳でこのリスキーな役をよく演じたもので、形は違えども両者の体を張った演技に圧倒される。
唯一残念だったのが、手持ちカメラを多様した映像だったこと。
ある種ドキュメンタリーの要素を醸し出したかったのかもしれないけれど、主人公と一緒に階段を下りるような揺れのある映像が多く酔ってしまった。





2009/9/9 【 インスタント沼 】
インスタント沼」を観た。
主人公ハナメは、‘ジリ貧OL’という設定で仕事も恋愛も家族もトラブルに巻き込まれていく。
台詞+ナレーター+独り言・・・ととにかくしゃべりまくるハナメは向こう見ずで思い込み激しく周囲に媚びないというか振り回すキャラが際立っていて、一見好き嫌い別れそうなんだけれど意外とイラッとしなかったのは麻生久美子のキャスティングが正解だったからかも。
胡散臭い骨董屋の風間杜夫・要所に登場する通行人役の温水洋一・三木聡監督作品では常連のふせえりのキャラも面白い。そんな個性的なキャストの中でもぶっとびだったのがモヒカンのパンクロッカー役の加瀬亮で周囲が変過ぎるせいか一番まともなのが妙に可笑しい。
ということで面白い要素はいっぱいなのに活かされていなく後半に失速。「困った時は水道の蛇口をひねるといい」という発想はまぁ良しとしてもインスタント沼の件に至ってもかっぱの件も釘の曲がり具合の感性にしても、ちょっとついていけなかった。「ひらけ、ぬま」と言われても(-_-;)ハナメが毎朝飲む‘シオシオミロ’にしてもミロを10に対して牛乳を1で粉っぽく見るからに不味そうだったのも残念。
ただハナメの衣装は文句なくどれもおっしゃれ〜。





2009/9/7 【 20世紀少年<最終章>ぼくらの旗 】
20世紀少年<最終章>ぼくらの旗」を観た。
ここまでひっぱってきた‘ともだち’の正体がシリーズの最終章ということでいよいよ明かされる。
なななんと肝心の正体が判明するのは・・・155分とやたら長い本作のエンドロール終了後の10分程の本編続きの中。いくらなんでもここまでひっぱるとは(-_-;) エンドロール後も席を立たないで下さい的な作品は他にもあるけれど、なんか今回はおまけ的なものではなく この10分こそが要なのでこの演出はかなりのサプライズ。 
ともだちが誰かと犯人探しが目的だったけれど 結果的にはこれよりも ともだちが何故生まれたのか ともだちは何だったのか に重きを置いていたので感慨深かった。
この最終章では映画オリジナルの結末の情報漏れを防ぐためにエンドロール後のラスト約10分をカットした特別編集版が上映された為、劇場公開以前で、製作スタッフの中でも結末を知っていたのは監督含めわずか数名に留まったという。製作スタッフなのにこの10分を知らされてないって…いったい・・・お気の毒。
相変わらず豪華なキャスト名が続くエンドロールで「あれ?出ていたっけ?」という気になる名前が・・・その後の10分で彼に会え納得。子供の成長は早いっ。お楽しみに。





2009/9/6 【 サマーウォーズ 】
細田守監督のアニメ「サマーウォーズ」を観た。
観客動員100万人突破の異例の長期興行展開となっている。正直それほど期待していなかったけれど、劇場も混んでいて確かな人気を実感。
アニメといえば重鎮は宮崎駿なんだけれど、宮崎アニメにはないデジタルの世界観まで見事に表現されていて斬新。
そういえば鳩山夫妻も鑑賞したと話題になって「友愛だね。デジタルの時代になってもね、一番大事なことは人間のきずな、愛だなと思いましたね。」との感想を言っていたっけ。「友愛精神」にも通じてタイムリーということか。
古き良きこれぞ正しい日本ならではの普遍的慣習と家族像vsバーチャルの世界という対極の対比がお見事。おばあちゃんを中心にした普遍的な親族の集まり・夏の風物・大勢で囲む食卓・田舎の風景・現代っ子の孫達・ネット上での危機・シャープな頭脳 と「セカンドライフ」を彷彿させる仮想都市OZがとても上手く絡み合っていて完成度が高い。
忙しいだの遠いだの言いながら親族が一堂に会するって大切だなぁとノルタルジックな気持ちになった。
今やアニメーターの憧れの第一人者細田守監督は半端ないですね。今後も大注目。





2009/9/3 【 南極料理人 】
テアトル新宿で大ヒットとなった「南極料理人」を観た。
ドームふじ基地での南極越冬観測隊8人の ある意味閉鎖空間での生活をユーモラスに描く。個性の強い隊員が毎日同じ食卓を囲み一緒に食事をしながら不思議な連帯感でつながっていくのをメンバーの家庭での微妙な立場のシーンと絡めることで効果的に描いている。
主演の料理担当の西村演じる堺正人をはじめ 生瀬勝久・きたろう・豊原功補・高良健吾・・・etc8人のメンバーのキャスティングも良い。個人的には、今年特に大活躍の高良健吾がこーいうコメディタッチの映画でも味を出していて注目度高い。
特異な共同生活の中で自然に生まれたであろう暗黙のルールや数少ない気晴らしの娯楽を楽しむための工夫や特別な日のとことんのこだわりが半端ない。特にほぉ〜と驚いたのが「ミッドウィンター祭で、正装してフレンチを頂く慣習」。こーいうのがどれだけ単調な毎日かということの裏返しなのよね。一見むさい世界なのに 時に大はしゃぎする様子にこちらもついニコニコしちゃう。
そして見どころはなんといっても、西村の料理で、自らの「おいしいもの食べると元気が出る」という台詞、これこそ基本なのよね。家庭料理から特別の日のご馳走までみんなの心を豊かに幸せにしてくれる料理の力ってホント素晴らしい。
もしラーメンが食べられない状況になったら・・・なんて今まで考えたこともなかったけれど、これが隊員の状況をダイレクトに計り知れるような重要なシークエンスになっている。
何の心配もない日常の食生活がどれだけ恵まれて幸せかをほのぼのと気づかせてくれるあったか〜い作品でした。





2009/8/26 【 アマルフィ女神の報酬 】
アマルフィ 女神の報酬」を観た。
フジテレビが開局50周年記念映画。allイタリアロケで名所を次々まわり観光気分を味わえる。
ローマは見慣れたものとしてもタイトルにもあるアマルフィの美しい景観はため息もの。
ということで観光地巡りに重点を置いたせいか、それに伴ったご都合主義の展開はつっこみどころ満載。綿密に計画を練ったであろう犯人サイドが、たまたまイタリア旅行中の母子を巻き込んだり、親の心理につけこんだとしても警備会社での母の行動を‘予定調和’として計画性を持たせるには無理がある。
主演の織田裕二のクールな外交官はともかく、天海祐希はサバサバした印象が強いせいか役柄に違和感があったし、‘特別出演’の福山雅治も無理やり華を添えた感のある登場で、豪華キャストの割にちょっと残念。更に華を添えるソプラノ歌手サラ・ブライトマンに関しては、♪Time To Say Good By♪ をじっくり堪能できたので、とてもお値打ち感が高い。ということで、いかにも‘お金かけました’という作品だった。





2009/8/22 【 いけちゃんとぼく 】
いけちゃんとぼく」を観た。
西原理恵子に はまったきっかけになった名作の映画化「ぼくんち」は期待を裏切って超がっかりしたものだけれど・・・果たして本作は・・・。
ルーツの高知にこだわって撮影したということで地方ならではの逃げ場のない人間関係なども描かれる。
キャスティングも良く、特に主人公の友達の‘うどん屋の子供’は、西原漫画ではお馴染みのキャラだけにあまりにイメージのまんまで拍手モノ。「いけちゃん」はCGのかわいらしさより声優の蒼井優の声が印象的で、そういえば「鉄コン筋クリート」のシロの声もぴったりだったなぁ。ということで「ぼくんち」のような失望感はないものの、「絶対泣ける本第1位」という割に・・・全く 全く泣けなかった・・・(-_-;)
やや脱線しますが、「絶対に泣ける本」というのはこの「いけちゃんとぼく」ではなくむしろ「毎日かあさん4」だと思う。加えて「好きな人の子供のころに会う」という本作のテーマは「パーマネント野ばら」に登場するワンシーンとおもむろにリンク。この当時、西原理恵子がプライベートで愛する元夫との死を意識しどんだけ深く想いを馳せていたかを考えるとなんとも切ない。





2009/8/19 【 ディア・ドクター 】
ディア・ドクター」を観た。
あの完成度の高かった「ゆれる」の西川美和監督の新作だということで期待大。
突然失踪した医師 伊野(笑福亭鶴瓶)の謎を、2ヵ月前に赴任してきた研修医 相馬(瑛太)からの目線も絡め「過去」の回想シーンと、警察の捜査を中心とした「現在」とを交差させながら真実に迫っていく。
鶴瓶の持味のあの柔和なあたたかさが活きて存在感となっているのでキャスティングは良かった。
のどかな田舎の風景と人々を丁寧に描くことで伊野の人物像を浮かび上がらせ、謎めいた空気感を深めたいのはわかるけれど、どうにも引っ張り過ぎ感があり途中うとうとしちゃいました。(-_-;)新米研修医の志・事務的な都会の医師像・資格など考えさせられるものを織り込んでいるものの予定調和な話なので ぬるい感が否めない。
ラストシーンは「ゆれる」同様にこの作品のテーマがぎゅっと凝縮されていて印象的で、これぞまさに西川監督色と思われる。





2009/8/4 【 ハリーポッターと謎のプリンス 】
シリーズの映画版第6弾の「ハリー・ポッターと謎のプリンス」を見た。
主人公達もお年頃ってことで、これがハリーポッター映画ということさて置いて恋愛ものの色合いが濃い。意外にも苦戦するハーマイオニーや意外にもモテモテのロンを中心に描かれる。
またマルフォイはこれまでずっと嫌な同級生として登場してきたけれど、本作で重大な使命に苦悩する様子を丁寧に描いていてスポットが当たっている。まぁここらへんまではキーパーソンとなるホラス先生の登場に伴ってそれなりに謎解きとしての面白さもあったのだけれど、失速したのは、ラストのダンブルドアとスネイプの決闘シーン。
なんというか凝った映像から一転して舞台が安っぽいというか・・・あのダンブルドアならではの法術が乏しかったというか・・・。これは最終章「死の秘宝」につながるとはいえ、今までにないくらいあまりに中途半端。
ってことでこの不満は次回への期待にさせてもらいます。





2009/7/4 【 チェイサー 】

韓国映画「チェイサー」を観た。
陰惨な狂気殺人事件を追うってことで思い浮かぶのが「殺人の追憶」。こちらは、10か月に21人を殺害した疑いで逮捕された、韓国で殺人機械と言われた連続殺人鬼ユ・ヨンチョルの事件をベースにしている。すさまじく緊迫感あふれてショッキング・・・監督・脚本のナ・ホンジンはこれがデビュー作というから驚く。
最初うさんくさい金の亡者だったのが次第に嗅覚鋭く変わっていく主演の元刑事(キム・ユンソク)も、一見フツウな外見の奥に潜む狂気も得体の知れない不気味な犯人(ハ・ジョンウ)もはまり役。警察に勾留されようが取り調べ最中だろうがまだこの犯人の一挙一動がコワイ。
これがハリウッドでリメイクされるらしいけれど、ディカプリオがこの味を出せるのかなぁ。だいたい、ソウルの路地の坂道を舞台にしているからこそシチュエーションに泥臭い雰囲気と迫力が出たと思うのよね。
チェイスシーンはこれまで何度も観てきたけれど、ハラハラドキドキで、これぞ`名チェイス‘と言えるかも。血どばっの凄惨なシーンが多いので苦手な方にはきついと思うけれど完成度が高い。





2009/7/1 【 ハゲタカ 】

NHKテレビドラマの劇場版「ハゲタカ」を観た。
大手自動車メーカーに中国系ファンドが買収を仕掛ける。天才ファンドマネージャー「ハゲタカ」こと鷲津(大森南朋)vs中国系ファンドを率いる「赤いハゲタカ」こと劉一華(玉山鉄二)。
この激しいマネーゲームの手法やホワイトナイトとかの知識はなくても実際のニュースで現実に起こった金融危機に沿って素人にもわかりやすく描いている。ありがちな恋愛なども一切なくあくまで経済ドラマを軸として劉のミステリアスな生き方を絡め骨太。
「人生には悲劇が二つある。カネのない悲劇と、カネのある悲劇」が、劉と派遣社員の青年とのばらまかれた札束のシーンでも印象的に描かれ、この2人の`その後‘も意外性で良かった。
ただテレビドラマを観ていないと銀行の貸し剥がし・貸し渋りで辛酸をなめた栗山千明や何故か旅館で働いている松田龍平の立場がわかり難いかも。





2009/5/29 【 グラン・トリノ 】

監督・主演がクリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」を観た。
本作で俳優業のリタイヤということで、ラストにふさわしい素晴らしい作品だった。
イーストウッド演じるウォルト・コワルスキーは朝鮮戦争に行き、フォードの工場で働き、いまは年金暮らしをしている。最初毛嫌いしていたお隣のモン族の少年とかかわっていく。
白人vs移民・フォードvsトヨタという象徴的な偏見や差別感を敢えて出し誰にも媚びない姿に今は失われつつある古きアメリカの魂を描く。これに通じるのが信頼に裏打ちされた友人達との悪口の応酬の会話。優しくて誰にでも好かれるタイプと対極なのに偏屈な頑固ジジイの気骨にぐいぐい引き込まれていく。終わりが見えない暴力に未来ある少年がさらされていることを直視し鉄拳を振り下ろすようなウォルトはカッコ良すぎてただただ敬服。
脱線するかもだけれど、実は15年ほど前に知人が口論の末にアメリカの退役軍人に撃たれ事件となった。アメリカの退役軍人を怒らせたらコワい。
タイトルの「グラン・トリノ」はウォルトが40年間勤務したフォード社の名車。そのカッコ良さは主人公の姿と重なる。





2009/5/27 【 重力ピエロ 】
伊坂幸太郎原作の「重力ピエロ」を観た。
今年観た「フィッシュストーリー」があまりにストライクで良かっただけにこちらも期待。ただ先に原作読んじゃってるので映画に辛口になりがちなのが心配。
兄役の
泉水加瀬亮と弟役の春の岡田将生のも父の小日向文世のキャストも申し分なし。
この作品の魅力は何と言っても印象的な台詞にある。冒頭とラストにも登場する「春が二階から落ちてきた」 「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」 「おれたちは最強の家族なんだ」 「楽しそうに生きていれば、地球の重力なんてなくなる。」 「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」etcこれらの珠玉の台詞がさりげなく実はとても深い意味を持って語られている。
おっとりした兄と実はとんがった弟の偉人の名言がちりばめられた博識な会話も魅力。ということで大幅にカットされていたものの原作の空気感を基本的には損なっていなかった。
ただ・・・これを言っちゃお終いなんだけれど、登場人物の苦悩は理解できても、ここまで回りくどいやり方をするに至ったことにはなんとなく違和感が残る。タイトルは、どんなに悲しくてもどんなに重いものを背負っていてもいつも笑っているピエロに自分たちを重ねている。





2009/5/25 【 フロスト×ニクソン 】
フロスト×ニクソン」を観た。
昨年度のアカデミー賞で作品賞を始めとする主要5部門にノミネート。
コメディアン出身でジャーナリストでもないフロストと政界復帰を狙うニクソンによる77年に実際TVで放送され4500万人が観た歴史的インタビューの映画化。
「勝てば英雄 負ければ愚か者」のとんでもない賭けに出たフロスト役のマイケル・シーンも良かったけれど、それ以上にニクソンを演じたフランク・ランジェラは舞台版でもニクソンを演じトニー賞を受賞しているだけあって役作りの見事さといったら・・・。
ウォーターゲート事件の真相などに触れてはいないけれどニクソンの語り口にはその器の大きさが現れていて`策士‘として風格十分。映画でこそ、一人の時間を過ごす両者の心の闇も描いていて人間くささを感じられたけれど、やっぱリアルタイムで実際のインタビューを見たかった。





2009/5/21 【 天使と悪魔 】
ダ・ヴィンチ・コード」の続編となる「天使と悪魔」を観た。
今回もトム・ハンクス演じる宗教象徴学者ラングドンが大活躍。っていうか謎解き映画なのに、矢次早に教授が解読しちゃうのは前回同様だし、実行犯があまりに緻密に計画を遂行していく件は出来過ぎで、つっこみどころもあるけれど、見方を変えるとスリリングで展開が速いので実際の上映時間より短く感じた。
ヴァチカンに、400年前に弾圧された秘密結社「イルミナティ」が復讐を開始するというストーリーなので、知らざる
サン・ピエトロ寺院内の宗教儀礼をはじめとしてヴァチカンの様子を垣間見れたし、ローマ市内の旧跡もてんこ盛りという意味では興味深かった。場所が場所だけに映像も重厚で綺麗。
「宗教と科学」という対比がタイトルの「天使と悪魔」という対極を想像させて、実行犯のゆがんだ行動の基本には、神への確かな信仰心があるっていうのも表裏を描いているという意味ではリンクしているのかも。





2009/5/18 【 カフーを待ちわびて 】
カフーを待ちわびて」を観た。
1回日本ラブストーリー大賞を受賞した小説を映画化。
「カフー」とは沖縄の方言で‘しあわせ’‘良い知らせ’という意味で、主人公の愛犬の名前も「カフー」。
沖縄の離島を舞台にの〜んびりしたなんともファンタジックなラブストーリーを島が抱える問題も絡めて描く。
不器用で純朴な主人公をさらっと演じている玉山鉄二がとってもナチュラル。方言がまた素朴さをかもし出す中、特に字幕がないと全くわからないおばあの方言が強烈。ふわっとした幸福感につつまれるような優しい映画。
それにしても・・・「60歳のラブレター」の原田美枝子の富良野のシーンもそうだったけど、ここぞ というシーンではやっぱ女性は白い衣装なのね。この作品ではヒロインが登場シーンの白い衣装がとっても印象的。
モノクロの画面にブルーの字のエンドロール+その後を描いたカラーのエピローグの色彩の変化も効果抜群。





2009/5/16 【 60歳のラブレター 】
60歳のラブレター」を観た。
中村雅俊・原田美枝子、井上順・戸田恵子、イッセー尾形・綾戸智恵の3組のカップルをうまく絡ませながら描く。家族として破たんしている中村雅俊・原田美枝子の夫婦、恋愛に慎重にならざるおえない井上順・戸田恵子のカップル、イッセー尾形と綾戸智恵の口が悪いながら仲が良い理想の夫婦、この3組3様の事情が身近にもありそうで中盤までとってもしんみりと感情移入できた。
それぞれのビミョウな心情を見事に描いていたと思う。が、ネタばれになるので詳しくは言わないけれど、3話とも泣き所のクライマックスへの展開が強引過ぎて後半に失速したような。
特に違和感あったのは3組の中でメインの中村雅俊・原田美枝子のカップルで、なんか男目線の願望映画・・・ってことで思い出したのが「像の背中」。耐える妻にかなり同情したものの・・・結局あの選択とは う〜ん やっぱわかんない。





2009/5/10 【 ロルナの祈り 】
ロルナの祈り」を観た。
カンヌで2度もパルムドールを得たダルデンヌ兄弟作品。「ある子供」に続きジェレミー・レニエが登場しているけれど、‘ヤク中’を演じることで体重を15キロも落としたそうで、確かにうわっというくらいガリガリ。
奇妙な夫婦関係に見える事情が徐々にわかってくるという構成。移民のロルナが夢を叶えるためにギリギリの状況にいるのも伝わるし、夫のクローディもどーしようもないヤク中なんだけど必至に立ち直ろうとする姿勢に次第にこの2人から目が離せなくなくなってくる。
ほとんど暗い表情のロルナがクローディのバイクを追いかけるシーンで見せた唯一のはじける笑顔は、束の間だけれどこの2人に確かな愛があったことを物語っている。
妄想が絡んでいようと事実がどうであれロルナが当初の目的や夢よりずっと大切な自分の良心に目覚めて行動しようとするのは救いでもあったりしてなんとも言えない余韻を残してくれた。
しかもヒロインのロルナはガーリー系じゃなくて,ベリーショートヘアでおまけに超貧乳でボーイッシュなのが結構好きかも()





2009/5/5 【 鴨川ホルモー 】
鴨川ホルモー」を観た。
京都に住む大学生が「ゲロンチョリー・グェゲボー・フギュルッパ・パゴンチョリーetc」の意味不明の『オニ語』を言いながらお独特のポーズで対戦するという・・・オニ?ん〜この発想は何なんでしょうねぇ・・・なんというか おバカ映画。大体「ホルモー」って何? 
という訳で観る人を選ぶかなぁと思いきや、京都市内の名所やらお祭りやらのシーンが満載な上に、いかにものボロい大学寮(京都大の現存で日本最古の学生寮とされる吉田寮)やレトロなアパートや、趣ある居酒屋「べろべろばあ」でのサークルのコンパの雰囲気があまりに懐かしくてなんだか胸をくすぐられた。くだらないことにムキになるこころになんか通じるものがあるのよね。
「アヒルと鴨の・・」「フィッシュストーリー」に続き今回もヘタレ大学生役として濱田岳が好演。
何故に大木凡人?何故にちょんまげ?と小ネタがちりばめられ、発想もやっていることもクダラナイんだけれど・・・この面々が憎めない。ラストは「アビーロード風」でなんとも青春って感じ。




2009/4/27 【 スラムドッグ$ミリオネア  】
スラムドッグ$ミリオネア」を観た。
イギリス人ダニーボイル監督が有名スターを誰も出演させずインドを舞台に1500万ドルという低予算で製作。にもかかわらず200981回アカデミー賞で作品賞をはじめ最多8部門を受賞。
青年ジャマールの半端ない生い立ちが回想されて「スラム育ちの少年がなぜミリオネアの難問題に答えることができたのか。」が解明されていく。
インドの最下層の過酷な暮らしの中、スラムの路地を縦横無尽に駆け抜ける子供達のなんてエネルギッシュなことか。スラムのトタン屋根が引きながら広がり無数に立ち並ぶ風景・ヒンズー教徒によるイスラム教徒への襲撃etcよくここまで描いたというくらい強烈なシーンが続く。どんな状況でも生き抜くその底抜けな力強さにこれぞ生命力というものを見せつけられる。
インド・・・半端なくマジすごっ!
子供時代いつも行動を共にしていたジャマールとその兄のサリームがいずれ対極の人生を歩んでいくことになっていく過程を平行して描くとともに、幼い頃知り合った少女ラティカへの純愛が軸になっていて、この三者三様の生き様も見どころ。
兄サリームが弟のことを「決して諦めない男」と言っているとおり一見ひ弱そうなジャマールのバイタリティあふれた行動には不屈の精神がみなぎっている。
エンディングはいかにもインドらしい踊りでサービス満点。




2009/4/25 【 シリアの花嫁 】
シリアの花嫁」を観た。
岩波映画を近所の映画館で観れるってのは嬉しい。イスラエル占領下のゴラン高原を舞台にささやかな結婚式の1日を描く。
このゴラン高原は、もともとシリア領だったのが、第三次中東戦争でイスラエルが占領後、この高原の住人がイスラエル国籍取得と拒否した為、無国籍となっているという。シリアに嫁ぐことは、2度とイスラエル領地の故郷に帰ってこれない為、家族との今生の別れになるとは・・・なんとも不条理な話。
不安な花嫁モナ・警察に目をつけられている反イスラエルの父・温かい母・夫との関係が悪い姉・ロシア人と結婚し父に勘当されている長男・イタリア帰りのお銚子者の次男・その次男の元恋人の国連事務所職員etc多国籍の人々の微妙な感情が特殊な国情と絡まって描かれる。軍事境界線をはさんでの国が、いかに頭が固くばかばかしいものかをユーモアを交えている。
こんな複雑でも‘お祝い事’の元で人々の気持がつながれていくのだから結婚式ってステキ!
ラストの意外な展開で、腹をくくって自分から人生を踏み出したモナはなんともたのもしく当初の不安な表情が消えていた。お幸せに。





2009/4/24 【 レッドクリフ Part II -未来への最終決戦-  】

レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―」を観た。
曹操軍(80万の兵、2000隻の戦艦)vs劉備・孫権の連合軍(5万の兵、200隻の戦艦)の圧倒的な戦力差の中での赤壁の戦いを描く。Part1で周瑜を演じるトニーレオンと
孔明を演じる金城武が双方秀でていたけれど、Part2では断然に周瑜の比重が高い。
‘デブ助’尚香ヴィッキー・チャオと曹操軍の千人隊長の叔材の友情は想定外ながら観る側の力を抜かせてくれてほっとするものだった。曹操も適役ながらカリスマ性あるし一様に魅力ある俳優陣は今回も健在。頭脳戦も奇策も良かったし見どころの水上戦はスピード感あって壮大だった。
でも、話が話だけに2話になったのは理解できてもそれでもPart1で145分Part2で144分と合わせて5時間弱(4時間49分)というのは長い。
それにしても・・・この後、三国志では最終的に中国を支配していくのはこの赤壁の戦いで負けた曹操になっていくとはいえ、ここまでバブリ〜に殺しまくった流れのラストに「2度と来るな」で帰しちゃうってのは映画的にはどーなんでしょうか?





2009/4/14 【 ラースと、その彼女 】
ラースと、その彼女」を観た。
人付き合いが極端に悪い男が主人公といえば「イエスマン“YES”は人生のパスワード」のジム・キャリーを思い浮かべる。共通するのは、人間嫌いの主人公を見つめる周囲の目が超が付くほど温かいってこと。
変質者扱いされてもおかしくないあの状態の主人公を実は‘引いてしまい’ながらも、あくまでも‘良い人’として見つめ、主人公ラースを傷つけることもなく、大らかにラースとビアンカを受け入れている。
もし自分の周囲に万が一似たようなことがあった時にどうしていくべきかについて、こ〜いう方法もあるんだと指針してくれているような。
人間その気になればこ〜んなに優しい気遣いができるってことをユーモア交え温かく綴っている。
話が荒唐無稽ではあるけれど、ビアンカとの出会いはラースにとって必要なことだったと納得できた。「良い恋愛したネ」って言ってあげたい。
カナダのトロント郊外の風景も優しかった。





2009/4/3 【 ウォッチメン 】

アメリカでは36日に公開されるやいなや初登場第1位を飾っており、全世界のボックスオフィスでも1位にランクインしている「ウォッチメン」を観た。
以前「ステルス」を観た時に、なんでもごちゃまぜ映画で「ハロハロムービー」とレビューしましたが、いやぁ今回の「ハロハロ」度はそれをそうとう上回るものでした。史実を絡めながらのヒーロー映画に、SF・サスペンス・スプラッター・アクション・Love・ひねった親子関係・猟奇殺人これに量子力学に相対性理論までなんでもかんでも織り込んでの163分。長いのよ(-_-;) 
2世代に渡るウォッチメン達ということで人間関係が複雑になったのかもしれないけれどせめて登場人物の背景だけでももっとシンプルにできなかったものかしら・・・。
ヒーローものでありながらR15指定ということで相当きわどいシーンもあってターゲットをどこにしているやら・・・冒険してるわねぇ。とにかくスプラッター系シーン苦手なのできつかった。
青人間?Dr.マンハッタンの超人ぶりはともかく覆面顔で孤高の現役ヒーローであるロールシャッハが「ダークナイト」のバットマンの悪役ジョーカーに通じるなんともいえない薄気味悪さが他のメンバーから秀でていたような。
「正義」って何なのか?とんでもない方向から問いかけている映画でした。





2009/4/2 【 イエスマン"YES"は人生のパスワード 】

イエスマン“YES”は人生のパスワード」を観た。
ジム・キャリーならでは笑いは随所に垣間見られ、ここらへんはお約束とはいえ安心。
銀行の融資係で付き合いの悪いネガティブな主人公が、ポジティブになっていくという展開なのだけど、きっかけとなる自己啓発集会がなんか新興宗教みたいで洗脳されていく様子は見ていて気持ち良いものではなかったような。あのテレン・スタンプが教祖というのはまぁ意外性あるけれど・・・。
主人公の周囲の人は離婚をきっかけに心を閉ざしたいきさつを理解できているからこそ優しく主人公を嫌っていないのでしょうけれど、そこら辺の経緯をもっと丁寧に描いていれば何故あれほど良い上司や友人に恵まれているのが納得できたかも。
エンドロールの斜面を腹ばいで滑るシーンが楽しいのでお見逃しなく。





2009/3/31 【 釣りキチ三平 】
釣りキチ三平」を観た。
かつて一世を風靡した矢口高雄によるコミックを、原作登場から35年の月日を経て実写映画化したもの。アカデミー外国映画賞で時の人となった滝田洋二郎監督で出演者は須賀健太・渡瀬恒彦・塚本高史・香椎由宇etcと豪華。
原作者の矢口高雄の故郷 秋田での全編ロケ。マタギ小屋・のどかな田舎道・吊り橋・山の深さ・夜空の深さ・美しい渓流etcの秘境の美しい映像はもちろんのこと、岩魚の塩焼・骨酒・タタキ(刺身)はそ〜とうに美味しそうで当地の良さを改めて実感。
釣りを背景に家族内での確執から絆を得るまでを描いていた中で、何気ないシーンでの姉の愛子の変化の描き方がよかった。
「釣りとはただのくだらない遊び」と言いながらも祖父である釣り竿師・有名な海外のプロの釣り師・未だ何にも縛られない純粋無垢な三平の三者三様を比較するのも面白い。





2009/3/27 【 ホルテンさんのはじめての冒険 】

ル・シネマにてノルウェー映画「ホルテンさんのはじめての冒険」を観た。
‘真面目’としか言いようのない勤勉社会人ホルテンさんが定年ラストDAYにちょっとしたhappeningに見舞われ歯車がどんどん狂いだし非日常といえる出来事に遭遇していく様を描く。
ほとんど表情を変えることもない超実直男だけにトホホな場面でもマイペースというのはそれだけで何かしらユーモアがあるものだけれど正直言ってエピソードが弱いかも。クスクス感はそれほどでもなく思った以上に淡々としていたような・・・。
でもホルテンさんの鉄道マンとしての生活のリアリティーや送別会や表彰式シーンも含めこの映画の別の見どころの名列車とも言われているというノルウェー鉄道「ベルケン急行」のトンネルを抜けて大雪原を走るシーンは素晴らしく世の鉄ちゃんには興味深いものかも。
ラストに何故かキーワードとなってくる‘スキージャンプ’は北欧発祥でノルウェーではとてもポピュラーなスポーツだそうで、ベント・ハーメル監督はスキー・ジャンパーだった母を偲び本作を「亡き母とすべての女性スキージャンパー」に捧げている。
思いがけない出来事があるから人生は面白いもの。平常心を乱した出来事が何やら良いことありそうなホルテンさんの新たなスタートへの応援歌となっていた。





2009/3/27 【 フィッシュストーリー 】
シネクイントで「フィッシュストーリー」を観た。
「アヒルと鴨のコインロッカー」と同じく伊坂幸太郎原作+中村義洋監督ということで、やっぱこのコンビは予想を上回る面白さだった。
一見別々のような1975年、1982年、1999年、2009年、2012年の5つの時代が交錯してストーリーがつながっていく。
いい曲なのに売れないとわかっているバンドメンバーの「曲が回りまわって、世界のためになる。そういうこともありえるってこと」という台詞がこの映画を一言で言い表している。発売当時だれにも聞かれなかった曲が、時空を超えて人々をつなぎ、世界を救う! 
後に原作を読むと何ページもないようなショートストーリーだっただけに映画化にあたってこれほど壮大に世界感をふくらましたとはもう驚くしかなくただただ脱帽。
「アヒルと鴨・・」にも出演していた相変わらずの気弱な大学生の濱田岳・伊藤淳史・森山未来・大森南朋etcと魅力的俳優陣の中でも特に目が釘付けだったのがパンクバンド逆鱗のボーカル高良健吾。レコーディングのシーンは鳥肌もののカッコ良さ!どっかで見たことあるなぁと思ったら「ZEN禅」の俊了役じゃん。
幻のパンクバンドといえば今年観た「少年メリケンサック」があることだし今年はパンク年?
それにしても斎藤和義作のテーマ曲「フィッシュストーリー」はカッコ良い!♪俺の孤独が魚だったら、巨大さと獰猛さに、鯨でさえ逃げ出す きっとそうだ オレは死んでないぜ オレは死んでないぜ 音の積木だけが 世界を救う♪ この映画に登場するバンド逆鱗がスクリーンから飛び出しデビューしたというCDを即買い。
音楽も含めて本当にストライクの作品でした。





2009/3/10 【 ZEN禅 】
道元禅師を描いた「ZEN禅」を観た。
規制仏教に疑問を抱き‘只管打座’ を説きその時代を導いた曹洞宗の開祖道元の生涯を描いている。まず驚いたのは日本人俳優の中国語。笹野高史も然りでどんだけ苦労して習得したことやら・・・特に主演の中村勘太郎にいたっては台詞の3分の1が中国語だったとか。その台詞がどれほどの完成度かはわからないけれど、それでも重厚感たっぷりで全く違和感がなかった。
歌舞伎界の伝統芸能で生きているだけあって中村勘太郎は映画初主演とは思えない存在感であの声の張りはさすがだった。
禅語は難解だし専門用語も多いけれど道元という人物の凛としたぶれない生きざまに心が洗われるような気持ちになり映画を通じて成長できたような・・・。
「春は花、夏ほととぎす、秋は月、冬雪冴えてすずしかりけり」と詠んだ代表的な和歌にリンクする映像美も見応えあった。たまには日頃の毒を消してくれるような映画も良いものです。
おりん役の内田有紀絡みで寺を去る俊了役の高良健吾が、この数日後に観た「フィッシュストーリー」でも抜群の存在感があった。





2009/3/8 【 ベンジャミン・バトン 数奇な人生 】
ベンジャミン・バトン 数奇な人生」を観た。
原題「The Curious Case of Benjamin Button」とスペルが同じ‘バトン’と‘ボタン’をかけていて、主人公の父親の「ボタン工場」の職業を表しているのは上手い。
ブラピの老けメイクと若返りメイクはこの映画の最大の見どころで、特に10代のメイクはお見事。
でもなにせこの映画は167分(2時間47分)という時間以上に長く感じた。いろんなエピソード (時計職人の話・船乗り・ロシアでの恋愛・第二次世界大戦etc)をもっとサクサクまとめて欲しかった。
冒頭の時計職人の話に関しては「時間を逆に」ということで主人公の人生とリンクさせているのだろうけれど、このエピソードが直接に主人公の誕生とはつながっていないのもなんだかなぁ。
相手役のケイト・ブランシェットも相当な幅の年代を演じきっているのはさすがだけれど、若い頃が高慢ちきで調子こいているヒロイン像なので、それでもベンジャミン・バトンがずっと想い続けるのかが理解できなかった。でもまぁ後年でその分の埋め合わせは出来た人生だったのはヒロイン像として救いかも。





2009/3/8 【 エレジー 】
エレジー」を観た。
30歳の年の差カップルの大人の愛を静かに描く。
インテリで人生も達観している有名な大学教授デヴィットが、理性を超えた恋愛で恋愛の基本の‘き’さえ抑えられなくなっていく・・・。。年齢関係ない証拠ネ。TVで偉そうなことさんざん言っている割にタマの頼みという息子の相談にもたいしたこと言えないし、自由を謳歌しているようでいて恋愛に幼いインテリ教授をベン・キングスレーがとっても上手く演じていた。
30歳も年下で恋愛には優位なハズの彼女も「愛されているのは私がキレイだから。キレイじゃなくなったら・・・」とわかっている。
ここらへんのお互いの気持ちがすっごくにじみ出ていて、この二人のそれぞれの思いにとっても感情移入しちゃった。
脇役の教授の親友で「傷つく前に見切りをつけろ」とアドバイスするデニス・ポッパーもキャリアウーマンでいながら一人じゃ寂しい年代にかかったパトリシア・クラークソンもとっても存在感ある。
とっくに達観しているかのような若い彼女に対して、やっと年上の大学教授が本当に大人として歩み始めるのかということをラストで描いている。
ゴヤの「裸のマハ」にリンクさせた展開は秀悦。全般が文学的で、エンドロールもアメリカ映画じゃなくヨーロッパ映画みたいな余韻があった。
教授役のデヴィット役のベン・キングスレーはなんとなく「LOST」のロックに似ている。加えてデヴィットの息子役が「24」のジャックバウアーに似ているような・・・。こう思ったの私だけ?




2009/3/4 【 ザ・ローリングストーンズ シャイン・ア・ライト 】

ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」を観た。
ミック・ジャガーとはお互いrespectしあっているマーティン・スコセッシ監督。
「ライブ以上の興奮を体感できる」というだけあって映画は最高!!いやぁ良かった。
2003年のストーンズの東京ドームコンサートでは豆つぶ大の大きさにしか見えない席だったにもかかわらず大興奮したものだけど+スコッセッシ監督の凝ったカメラワークでもう目が釘付け。
曲順どころか曲名さえ知らされていないスコセッシ監督の困惑顔の奮闘振りも、コンサート前に時間を設けられたクリントン大統領一家をはじめお偉いさん方との挨拶シーンも映し出す。

このライブの2006年当時、ミック・ジャガー63歳・キース・リチャード62歳・ロン・ウッド59歳・チャーリー・ワッツ65歳だというから驚き。顔は皺だらけで、まんま歳を重ねていながらパワフルでセクシーなのは驚異。そして見るからに歳相応のスコッセシ監督(64歳)とミック・ジャガーが1歳違いというのも思いきり驚かされる。
若き日のメンバーの映像も織り込みながら60代になっても変わらないカッコ良さがあふれている。若きミック・ジャガーが「60歳になっても、バンドを続けていますか?」という質問に、当然のごとく「続けているよ」と答えるシーンがあるけれどまさにこの映画の為の貴重なワンシーン。
カメラはライブの全体像から舞台裏までを映しだしていて、ドラムのチャーリー・ワッツが曲が終わってふぅふぅしているサービスシーンも見ることができて笑ってしまった。
メンバーから「ライブコンサートではなく、これは本当にマーティンの映画で、僕らは単なる主役にすぎないんだ」と言われちゃうなんて監督冥利につきると思われる。





2009/3/3 【 少年メリケンサック 】

少年メリケンサック」を観た。
宮藤官九郎の、「真夜中の弥次さん喜多さん」に次ぐ監督2作目。はっきり言って1作目はひどかった(-_-;)
でも今回パンクバンドだし、去年鑑賞したのデスメタルバンドのDMCが思いきりストライクだったので、そっち系に通じるものがあるかと期待しての鑑賞。
アキオ役の佐藤浩市は「ザ・マジックアワー」以上の変役が良かったし、ジミー役の田口トモロヲは実際にパンクバンドのボーカリストだけあって上手い!!宮崎あおいは「篤姫」と平行しての撮影と思えないほどはじけていたし、ガクトっぽい田辺誠一のTELYAも相当のインパクトだし、宮崎あおいと彼氏とのバカップルぶりも笑えたし、♪ニューヨークマラソン♪も何度も聞くうちに馴染んだし、パンクとエンディングの♪守ってあげたい のギャップ・・・要所要所は「真夜中の弥次さん喜多さん」に比べて雲泥の差。
なんだけど・・・な〜んか詰めが甘いかも。ハルオ演じた木村祐一の牛舎時との態度の変化の説明がないし、ジミーの突然の復活に関しても??のままというのはルール違反でしょ。
というワケで何でもご都合良くアリになってしまい展開が荒かったのがとっても残念。





2009/3/1 【 7つの贈り物  】
7つの贈り物」を観た。
7人の他人を選ぶ。そして、彼らの人生を変える。あなたなら受け取れますか?」となんとも意味深な内容。
主人公演じるウィル・スミス自身もインタビューで言っているように「彼が人生を変えるべき7人の他人を探し始めた当初の動機は、利己的で臆病といえるもの」。でも万人に受け入れられるとは思えないその行為に対しては、ストイックな人ならこういう選択も個人の自由の範疇と思えばアリなんじゃないかと・・・。罪人は幸せになってはいけないと思いこんで自らを罰する生き方?をすることが正しいとは思わないけれどそれも自分がそうと決めたら他人がとやかく言うことじゃない。
けれど、この映画でひっかかる最大のマイナスポイントは、自らの贖罪を償うことと、愛する人を助けることが混在している点。これじゃいくらなんでもテーマがぶれるでしょう。
でも二人が外で食事するシーンはそこにつかの間の幸せが確かにあってラブストーリーのワンシーンとしてはかなり好き。





2009/2/27 【 チェンジリング 】
イーストウッド映画「チェンジリング」を観た。
当初非道に迫害される主人公をいくらなんでもアクションのスーパーヒロイン且つ世界のセレブのアンジェリーナ・ジョリーを何故にキャスティングしたのか・・・という気持ちもあったけれど、意外にも不憫さがよくにじみ出ていた。
オープニングとエンディングの色の彩度を落とした街並みの映像がなんともクラシカルな1920年代の雰囲気を出していてため息がでるほど美しい。ここらへんがさすがのイーストウッド色なのかもしれない。
身の毛もよだつ猟奇殺人に引けをとらないほどに、純粋なハズの子供が・・・正義なハズの警察が・・・ 理不尽な裏切りは救いがない。
マルコビッチ牧師の長老派の助けがなかったら一体どうなっていたかと思うと戦慄が走る。辣腕弁護士の起用も含め、この強力な味方の存在感なくしては成り立たなかったかも。
疲れ果て絶望になるのではなく、それでも希望を失わないのが母親のゆるぎない愛だと描いている。





2009/2/14 【 英国王その給仕人に乾杯! 】

TOHOシネマズシャンテで「英国王その給仕人に乾杯!」を観た。
ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞したほか、本国チェコの映画賞を総なめにした話題作。
チェコ映画というと「この素晴らしき世界」という大大大好きな映画があるけれど、本作と共通しているのはチェコスロバキアという国がいかにナチス占領下で翻弄されたかということ。そして作品のテーマ「幸せと不幸は隣り合わせ」ってことも共通している。厳しい時代背景を決して暗く描かずユーモアをちりばめている点も共通。音楽はまさに同じ人が担当。ということでこの作品はかな〜りどんぴしゃに「この素晴らしき世界」と同様にとっても好み!!!
冒頭で「私の幸運はいつも不幸とドンデン返しだった」の言葉通りに、駅のソーセージ売りからスタートして色々な店を渡り歩いていく主人公ヤンの生涯をテンポ良く描く。
タイトルとは別でヤンは英国王の給仕人になることはなく、 ‘英国王の給仕人’だったというのは「ホテル・パリ」で客の注文を一瞬で察知した給仕長。この給仕長を始めとして登場人物がみ〜んな存在感があってとっても素晴らしいスパイスになっている。
小男ヤンのちょこまかした動きや軽やかな音楽もなんとなくチャップリン映画を彷彿しているよう。加えて素晴らしいお料理や魅力的な女性達との出会いが華を添えている。
ヤンに過大な影響を与えた行商人ヴェルデン氏が要所要所で登場するのだけれどラストシーンがもう最高!あくまで前向きなヤンの人生に乾杯!!!





2009/2/11 【 わが教え子、ヒトラー 】
わが教え子、ヒトラー」を観た。
初めてヒトラーをユダヤ人監督が描くという。独裁者ヒトラーに演説を担当した教師がいたという史実を‘もしその教師がユダヤ人だったら・・・’という発想からコメディ形式にしたのだとか。
主演の教師役が「善き人のためのソナタ」のウルリッヒ・ミューエで本作が遺作いうことも注目。ヒトラーを演じたのが本国ドイツで有名なコメディアンだそうで、この俳優がヒトラーを演じたこと自体がビッグニュースだったそうだ。この心身ともにボロボロに疲れきってジャージ姿で引きこもっているヒトラー姿は見事。過度な敬礼のナチなども含めて 徹底的に茶化している・・・けれど、それほど笑えるものではなかったような。
ラストにつながる冒頭シーンの演出は良かった。




2009/2/6 【 20世紀少年(第2章)最後の希望 】
20世紀少年(第2章)最後の希望」を観た。
前作で残した謎がどこまで解明されるのかが楽しみだったが、それに今作の謎も加わり一層もやもや感。上映時間も結構長いのでここまでくると引っ張り過ぎの感。
今回のキャストの中で特に印象的だったのがサダキヨ演じたユースケ・サンタマリアとヒロインであるカンナの同級生役の木南晴夏の2人。木南晴夏は日テレのドラマ「銭ゲバ」で相当インパクトがある登場をしていたが、今作でも全く別の役作りで印象的だった。‘原作のまんま’ がウリのようなので、そういう意味では原作を先に読んだ方がそれぞれの役作りを含めて完成度を楽しめるのかも。
全編あり得ないシーンがちりばめられている中、古い家屋「ともだち博物館」には、当時の匂いそのままコミック誌やグッズがあふれていて懐かしさたっぷりで、「大阪万博」が妙に現実感たっぷり。春波夫先生の万博のテーマ曲♪も気色悪過ぎてなんだか笑える。
半年後公開の最終作第3章で何もかもスッキリ収束するのかどうか・・・やはり待ちきれない。




2009/2/2 【 チェ 28歳の革命 】
チェ 28歳の革命」を観た。
南米の伝説的革命家チェ・ゲバラの半生を描く2部作の前編。
キューバ革命の英雄といってもここで描かれるのはあくまで地道なリーダー。こう描くことがソダーバーグ監督の意図だとしたら相当肩すかしで、「彼を銅像にしないよう努めた」という監督の弁だけれど、淡々と描くことで全体的に盛り上がりに欠けていたような。
映画ではキューバ革命と1964年のNYでの国連総会でのゲバラの姿を交差して描いている。国連総会での批判への反論の鋭さはゲバラの頭脳明晰さが如実に表れていてさすがのカリスマ性だけに何故に逆に‘伝説のヒーロー’としてもっと劇場型に描かなかったのかと残念。
美男過ぎるゲバラを演じたベニチオ・デル・トロが実物には敵わないけれど良い線で似ていた。
ゲバラの同志で何度も出てくるフィデルはフィデル・カストロのことで、これは「ぜんぶ、フィデルのせい」という作品で既にインプット済。さて後編は・・・今回盛り上がりに欠けたせいかなんとも38歳編への鑑賞意欲をそがれるくらいテンションが下がっちゃった。





2009/2/1 【 007/慰めの報酬 】
007/慰めの報酬」を観た。
ダニエル・グレイグのボンドになって2作品目で、近作は前作「カジノ・ロワイヤル」のエンディングから1時間後という設定なのでまさに続編的作品。
前作を観て久々に007が面白く感じただけに今回もかなり楽しめた。
ロンドン→中米のハイチ→オーストリア→イタリアのトスカーナ→ボリビア→ロシアと次々に怒涛のように舞台が変わりスタイリッシュな冒険とアクションは飽きることがなく、しかもダニエル・クレイヴはリアリズムにこだわり、全編にわたりほぼスタントを使うことなく、実際に過酷なシーンを演じ切っているという。
ただ、従来の007といえばお楽しみの「改造新兵器」もなく、どちらかというとシリアスなアプローチだったので、似たようなスパイ映画やアクション映画と「007」との差別化を出すのは難しくなってきているのかもしれない。砂漠に建つ現代建築も違和感。
でもこの濃さでなななんと106分とコンパクトにまとまったのはお見事。邦題の「慰めの報酬」は原題「Quantum of Solace」をほぼ直訳したものらしい。
ボンドとボンドガールに共通するのが‘復讐’。その復讐が果たして慰めになるのか、それにより何の報酬を得るのか・・・となんともわかりにくいけれど、ラストのボンドの台詞「死者は復讐など求めない」に、それでも復讐を果たすボンドに抑えきれない強い感情を感じる。
たまたま歯医者の待合室で手に取ったGQ Japanが「007の秘密」という特集だった。007シリーズ全22作にわたっての、ボンドが愛したホテル、シャンパン、ファッション、クルマ・・・。
ボンドの徹底したライフスタイルを紹介していて興味深い!!




2009/1/31 【 マンマ・ミーア! 】
マンマ・ミーア!」を観た。
なんでもミュージカル映画として最高の出だしを記録したという。
アバの名曲に乗せて、有名俳優陣が美しいギリシャの島を舞台にはっちゃけて軽いノリで踊るっていうのが大ヒットにつながっているのかもしれない。
みんな楽しそうなので観ているほうも不快になるハズもなく・・・でもかと言ってつい笑ってしまえるほどでもなかった。
内容的には、当初の目的の「本当の父親」という点がピンボケのままだし、3人の父親候補の中でピアーズ・ブロスナンがなんだか突出していたので出来レースみたいな・・・。それぞれ父親の座を狙っている割には友情結ぶしなんだかよくわからないままハッピーエンドというのはご都合的かなぁ。
なんか舞台は良いけれど内容が浅くて消化不良。





2009/1/10 【 K-20 怪人二十面相・伝 】
Kー20 怪人二十面相・伝」を観た。
子供のころの愛読書はもちろん「怪人二十面相」。明智小五郎・二十面相と聞くだけで嬉しい。
この映画の前提となっている第2次世界大戦を回避してできた独自の社会は、富裕層と貧民層の2極化でまるでカースト制度そのもの。なんかこの不景気の社会ニュースとリンクするのよね。
貧民街で貧しいならがらも好きなサーカスをしていた主人公(金城武)が二十面相に騙されて二十面相として追われていく・・・という中で、明智小五郎(中村トオル)と組んだあたりからの展開はなかなか面白かった。
主人公に絡む泥棒指南役を演じたベテラン國村隼が良いっ!頭がきれてすばらしい技術者。発明した小道具がこの映画大活躍。去年の「パコと魔法の絵本」でぶっとびの女装をしていたけれどこちらでもさすがの存在感。
ただ世界征服の秘密兵器あたりが、どうしても超SFなので昭和のあの古〜い雰囲気がこれで吹き飛びそうになってしまいそうなのがなんかもったいない。
ということで江戸川乱歩のあの重い世界感とは別物だけれど意外にも楽しめた。




2009/1/4 【 ワールド・オブ・ライズ 】
ワールド・オブ・ライズ」を観た。
中東を舞台にCIAとテロの駆け引きを描くアクション映画。
ディカプリオとラッセル・クロウの「どちらの嘘が世界を救うか?」という宣伝文句に惹かれて見たのだけれど、このキャッチコピーなんか違うでしょ。この二人のそれぞれの嘘の駆け引きを期待すると逆に違和感が・・・。
どちらかというとディカプリオが間に挟まって苦労する上司のホフマン(ラッセル・クロウ)vsヨルダンの諜報機関のボスのハニ(マーク・ストロング)の対比の方が見どころで、外見も含め、CIAの最新諜報vsハニの原始的活動も対比は面白い。
スパイ活動のおそろしさは拷問シーンも含めてよく伝わってきた。拷問シーンの臨場感に心臓バクバク。
それにしてもディカプリオは「ブラッド・ダイアモンド」のタフガイを彷彿させるf路線で今回の役柄も体型もマッチョ感が増したなぁ。





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