MOVIE      2012年映画館で観た感想 (基本的にレンタル等の鑑賞は含みません)

 

レ・ミゼラブル
「わたし」の人生(みち)我が命のタンゴ
アルゴ
白雪姫と鏡の女王
人生の特等席
おおかみこどもの雨と雪
最強のふたり
愛と誠
ロック・オブ・エイジズ
スープ〜生まれ変わりの物語〜
桐島、部活やめるってよ
ミッドナイト・イン・パリ
少年は残酷な弓を射る
ぼくたちのムッシュ・ラザール
ヘルタースケルター
ファミリー・ツリー
苦役列車
おとなのけんか
グスゴーブドリの伝記
ホタルノヒカリ
灼熱の魂
スノーホワイト
ブライズメイズ 史上最悪のウェデングプラン
ダーク・シャドウ
ももへの手紙
テルマエ・ロマエ
サラの鍵
HOME 愛しの座敷わらし
バトルシップ
永遠の僕たち
アーティスト
デビルズ・ダブル
ゴーストライター
ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜

僕達急行A列車で行こう
シャーロック・ホームズシャドウゲーム
人生はビギナーズ
昼下がり、ローマの恋
ヒューゴの不思議な発明
ヒミズ
50/50
ALWAYS三丁目の夕日’64
人生、ここにあり!
ドラゴン・タトゥの女
スリーデイズ





2012/2/8 【 スリーデイズ 】
スリーデイズ」を観た。
2008年フランス映画の「すべて彼女のために」という作品のリメイクだという。オリジナルは未見ながら、テンポの良いスリリングな展開はかなり楽しめた。妻の無実を信じ真犯人に迫るという話かと思いきやそうではなく、脱獄させるというのがポイントで、あくまで真犯人がどうこうより妻の無実を信じる家族の話。まぁファミリー版「プリズンブレイク」。
万策尽きかけながらそれでも命をかけ奮闘する夫を演じたラッセル・クロウの熱さは言うまでもないものの、ある意味必死過ぎて本当にうまくいくのか観ていてハラハラ。ほんのわずかながら登場のリーアム・ニーソンのセリフが、この無謀な計画に後々効いてくるのもGOOD。
ラストでの刑事が手がかりをつかみかけるシーンで気になる真相の謎は観客にゆだねるたままだけれどそはストレスにはならなかった。




2012/2/11 【 ドラゴン・タトゥーの女 】
ドラゴン・タトゥーの女」を観た。
世界的ベストセラーを映画化したスウェーデン映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の3部作の中で最もおもしろかった1を、デビッド・フィンチャー監督がハリウッドリメイク。1に関してはオリジナルが良かっただけにこちらのハードルもかなり高い・・・が、まずオープニングでかの名曲♪「移民の歌」をバックに作品を象徴するかのような不気味なCG画像がスタイリッシュで一気に引き込まれる。(ツッペリンではなくカレンOによるもの)。
allスウェーデンロケということでオリジナルの空気感を損なわないままパワーアップさせたという意味でも良かった。エンディングが少々異なった点についても、このミステリーをわかりやすくしたという意味でまったく違和感なく受け入れられた。主人公リスベット像はあまりにアナーキーで強烈だったせいもあって今回のルーニー・マーラはオリジナルをなぞった感もあるものの、ミカエル役のダニエル・クレイグはフツウのおじさん像からはるかにグレードアップ。
さて気になる続編は??? オリジナルは第2作以降でリスベットの秘密など明らかになっていくものの出来としてはイマイチだっただけに逆にハリウッド版に期待できるかも。




2012/2/15 【 人生ここにあり! 】
人生ここにあり!」を観た。
2008年イタリアで公開されるなり54週ロングランの大ヒットを記録し、イタリア・ゴールデングローブ賞を受賞。
1983年のミラノを舞台にバザリア法の制定によって精神病院が廃止され社会的変化を強いられた元精神障害患者とその協同組合を任された健常者のリーダーを描く。
かなりシリアスな内容をイタリアなならではの切り込みでドタバタとユーモアを絡めている。挫折や大きな悲しみも、合言葉の“SI PUO FARE!(やればできるさ!) の精神で何事も享受して進んでいく。
この映画で特筆すべきは何と言っても元患者による組合を任されたネッロのリーダーとしての資質。“元”患者とは言ってもどーみてもかなりの症状の部下達に、上下関係ではなく、どんな場合でも努力を惜しまず同じ目線で対等に振る舞いその一途さでみんなをまとめていく姿には胸をうつものがあった。「人を動かす」ってこういうことなのね。
この舞台がもし日本だったら奔走しているネッロに対して世間の目は厳しくどんな失敗でさえ見過ごさず容赦なく弾劾するかも・・・それに比べ、カリカリ尺定規に物事をとらえないこのラテンの空気感というのは、なぁんて良い意味でゆるくてほっとさせてくれるんだろう。
商品というより作品の寄木細工の床のクォリティは素晴らしい。ブラボー!




2012/2/18 【 ALWAYS 三丁目の夕日'64 】
ALWAYS 三丁目の夕日'64」を観た。
今回は昭和39年の高度経済成長に突き進む日本の姿がここにある。東京オリンピック・みゆき族・新幹線開業・カラーテレビの台頭・東洋の魔女の人気etc・・・うまくエピソードに絡め、やっと物質的な豊かさと心の豊かさを矜持できるようになったこの時代の人々の密な繋がりりを笑いと涙で描いている。それにしても「アタック!」シーンは秀悦で爆笑。
時代再現のクォリティは言うまでもなく安心してどっぷりノスタルジーに浸れる。もちろんベタと言ってしまえば確かにベタベタ・・・でもこの懐かしい情景は心の中に確かにあるもので琴線に触れまくり。
今回の軸は六ちゃんの結婚と淳之介の巣立ちということになるのだけれど、それにしてもこのシリーズを通して見る淳之介役の須賀健太に対しては成長を見守る親戚のような気分にさせてくる。
夕日町三丁目のお馴染みの住民たちにまた会いた〜い。




2012/2/22 【 50/50 フィフティ・フィフティ 】
50/50 フィフティ・フィフティ」を観た。
27歳生存率50%のガン宣告を受けた青年が主人公。と言ってもいわゆる闘病映画とは異なり、明るさが特徴。
これは主人公アダム役のジョセフ・ゴードン=レヴィットのひょうひょうとしたケロっとしたキャラによるところが大きいのだけれど、この映画は何と言っても主人公の友人カイル役セス・ローゲンに尽きる。シリアスな闘病中にあるアダムに対してよそよしくなる周囲の中、ただ一人変わらないカイルの悪ふざけなやりとりは不謹慎なようでいて実は重苦しくなりがちな空気を未然に防ぎ、この行動の裏にあった深い友人への思いに胸がつまった。
なんでもこのセス・ローゲンの親友がガンを克服したこの作品の脚本家だというから男同士の友情は実体験ということで説得力があったのかも。
自分が同じことをできるかというと難しいケド、こんな親友がいたらなぁと思わずにいられない。後味ばつぐんのハートフルな作品だった。




2012/2/26 【 ヒミズ 】
ヒミズ」を観た。
冒頭に1年前のあの大震災の荒廃した街と瓦礫の山が映し出される。
タイトルの「ヒミズ」とは不見日土竜(ひみずもぐら)。実際主人公の住田少年がモグラのように泥まみれになってもがくシーンもある。
大震災と重なるのは救いようのない境遇にこれでもかとたたみかける悪の連鎖で15歳の住田少年の底知れない絶望感を象徴している。それにしても先のヴェネツィア国際映画祭にて新人俳優賞を獲得した主演の住田(染谷将太)と茶沢(二階堂ふみ)は見事。
大震災以降、教師が授業で話した「夢や希望」が空々しく薄っぺらに思えるのと同じで、「頑張れ!」っていうのはともすれば言葉だけが上すべりする可能性もありとてもセンシティブなものだけれど、本作でのラストシーンでの住田と茶沢の2人による「頑張れ!」の叫びと全力疾走は、確かに底知れない力強さで魂に響くものがあった。
「頑張れ住田」は「頑張れ被災地」「頑張れ東北」「頑張れ日本」を投影している。全身全霊で表現したこのような重みのある「頑張れ」に圧倒された。




2012/3/3 【 ヒューゴの不思議な発明 】
ヒューゴの不思議な発明」を観た。
冒頭のシーンに一瞬にして引き込まれた。駅の時計台・歯車・パリの街並み・駅構内・・・縦横無尽の滑るようなカメラワークはまるで遊園地のアトラクションのような錯覚さえ覚える。
前半の少年ヒューゴの日常風景と機械人形の謎にどんな冒険がはじまるかと期待も高まるのだけれど、次第にと映画のSF映画の先駆者「映画の父」ジョルジュ・メリエス監督のエピソードが描かれていき、ファミリー向けファンタジーというより往年の大人の映画ファン向けとなっていく。この後半こそがスコセッシ監督の映画への敬意ともいえるその思いを描いたものかもしれない けれど ストーリー的には面白さが減速し、冒頭であんなに心をわしづかみされたにもかかわらず途中何度も眠気が襲ってきてしまった・・・。
邦題の「ヒューゴの不思議な発明」はヒューゴは何も発明していないのでイメージだけが先走った感。原題は「Hugo」。




2012/3/8 【 昼下がり、ローマの恋 】
昼下がり、ローマの恋」を観た。
若者、中年、老年と世代の違う3つの恋の物語。1話目で結婚間近の弁護士の出張先のトスカーナでの恋・2話目が有名キャスターと精神的に壊れた女との恋・3話目が元歴史学者とその親友の娘との恋。
話題性から言っても、ロバート・デ・ニーロとモニカ・ベルッチの共演の第3話目が最大のアピール所なんだろうけれど、個人的には第2話のストーカー女性のイカレ具合に翻弄されるキャスターの受難コメディが一番面白かった。本作はデ・ニーロにとって記念すべき純イタリア映画の初主演だそうで、ベルッチとの年の差も違和感なくとてもお似合いだったのはさすが。
どの話もストーリー重視ではなく、恋ならではの楽しさや空気感をあくまでさら〜っと軽やかに描いている。




2012/3/9 【 人生はビギナーズ 】
人生はビギナーズ」を観た。
本作で第84回アカデミー賞助演男優賞をクリストファー・プラマーが歴代の受賞者では最高齢である82歳で受賞。
予告編の「75歳の父親がある日息子にゲイをカミングアウトしてきたら・・・」の件を観てかなり面白そうだと期待も大きかったのだけれど・・・う〜ん その部分以外は淡々としていて何度も眠気におそわれた。
カミングアウトした解放感いっぱいの前向きなお父さんと、内気で殻に閉じこもるような息子の対比はわかりやすいながら、息子のナイーブでもんもんとした姿に関してはちょっと不自然に深刻ぶり過ぎているような。父の人生を謳歌するシーン・父の病床シーン・父の死後息子が人生を歩みだすシーンが時系列を入れ替えて交差しているのもなんだかわかりにくい。




2012/3/10 【 シャーロック・ホームズ シャドウゲーム 】
シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」を観た。
ホームズ(ロバート・ダウニー・ジュニア)とワトソン(ジュード・ロウ)の掛け合いが魅力とはいえマシンガントークは無駄に長く感じたし、ホームズがあれよあれよという間に真相を説明しちゃうので観客に推理させる間もなくというか観客置いてけぼり状態なのでスピーディーな展開にもかかわらず眠気が・・・。
推理物というよりほとんどアクション映画の域。とはいえホームズは不死身のヒーロー化しているのでまぁ安心して観ていられる。
森の中を敵の銃撃が飛んでくる様子をスローモーションで描いているシーンやホームズの綺麗とは言い難い女装も含むカメレオンのような七変化は楽しめた。




2012/3/24 【 僕達急行 A列車で行こう 】
僕達急行 A列車で行こう」を観た。
昨年201112月に61歳で亡くなった森田芳光監督の遺作。主演の松山ケンイチと瑛太が人の好い鉄道オタクを演じる。
「ドラゴン・タトゥーの女」のオープニングで毒々しく流れた♪移民の歌がこちらでは松山ケンイチ演じる鉄ちゃんが列車風景と音楽をコラボするきっかけのジェットコースターシーンで流れるのは嬉しいサプライズ(本作では本家のby Led Zeppelin)。どんな映画でもこのカッコ良くてインパクトある名曲が流れるとテンションが上がるというもの。ここで鉄道にそれほど興味はないながらつかみはOK
登場人物の勤務先名が「のぞみ地所」「コダマ鉄工所」加えて各役名が小町・小玉・北斗・いなほ・あずさetcネーミングまでこだわっている。出来過ぎ感のあるストーリー展開なのでつっこみどころ満載ながらあくまでほのぼの系なので安心して観ていられる。たまにはのんびりローカル列車の旅を楽しむようなゆる〜い空気感が心地良い。




2012/3/31 【 ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜 】
ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」を観た。
どーしても観たかったのはなんと言ってもミシシッピーだから。20代で1年ほど暮らしたミシシッピーで去年懐かしい友人との再会を果たし、その待ち合わせはこの映画の舞台のまさにミシシッピー州の州都ジャクソンだった。
1960年代にはKKK絡みの事件も起こっている人種差別の根強い地域での白人家庭で仕事をする黒人メイド達の実態を暴いた実在する同名の本が出版されるまでの経緯を描いた作品。
白人のトイレを使った疑惑で解雇される家政婦を演じたオクタヴィア・スペンサーが第84回アカデミー賞で助演女優賞を受賞。
白人主婦が黒人家政婦を差別し黒人家政婦は家で夫に虐げられているという差別の連鎖社会。この図式にとどまらずにさらに白人女性間での仲間外れや母娘の確執も描き、ちゃんとしたリベラル派も登場させることで、白人主婦=allビッチ とならないよう全体的に均衡を保てるようにもなっている。
問題の根は深いし女性の陰湿さはドロドロしがちだけれどあくまで押しつけがましくなくユーモアも交え描いている。60年代のファッションもそして美味しそうな南部料理も見どころ。
子育ても家事も黒人家政婦に任せながら、黒人メイド専用屋外トイレという発想自体が矛盾しているけれど、こーいう曲がった価値観がまかり通った時代があったことを忘れてはならない。




2012/4/6 【 ゴーストライター 】
ゴーストライター」を観た。
元英国首相の自叙伝の代筆者=ゴーストライターを依頼された主人公(ユアン・マクレガー)が、前任者のライターの不可解な死の謎から国家をゆるがす秘密に迫っていくというサスペンス。
ポランスキー監督ならではの深くダークな映像美が堪能できる。珍しいのは「君は誰だね」の問いにも「ゴーストです」と答えるように主人公に名前がない点。そのゴーストライターの主人公が素人探偵となって真相にせまっていく様子がスリリングに描かれる。あやしいといえばあやしい人だらけだし、カーナビに誘導されるシーンやメモの手渡しのシーンなどドキドキ感もあってなかなか良いにもかかわらず、観終わってどうにもモヤッとした感じ。
結局「だから何がどーだったか」がなんだかよくわからない。謎が謎のままで腑に落ちないままなので後味がイマイチ。




2012/4/7 【 デビルズ・ダブル‐ある影武者の物語- 】
デビルズ・ダブル-ある影武者の物語-」を観た。
イラクのフセインの息子、ウダイの影武者だったラティフ・ヤヒアの自伝を映画化した作品。これまで色んなタイプの実話に基づいた翻弄された人生を描いた映画を見てきたけれどこここれは想定外。こんなことで人生を翻弄されるような落とし穴がこの世にあるなんて・・・。
2003年のイラク戦争からまだ10年・・・戦争とは別の次元でこんなとんでもない境遇を背負わされたのはつい十数年前だとは・・・。
顔が似ているということでラティフが影武者として選ばれてしまったウダイとは?次々に明らかになる常軌を逸したエピソードに稀代の悪魔ウダイの本性が明らかになり唖然。非常な独裁者として知られる父フセインが息子ウダイに向ける厳しい目は極めてまともで「生まれた時に殺しとくべきだったな」と呆れるほど。このウダイの欲望むき出しの暴走を目の前に従うしかないとは生き地獄。 壮絶な人生に言葉を失う。
何よりもどちらかが登場するとそれがどちらかすぐ分かるほどで、同じ顔をしながら別人格のウダイとラティフを完璧に演じ分けた、12役を演じたドミニク・クーパーが圧巻。
後日談として、ラティフは亡命後もCIAへ協力を拒んで拷問にあったという。そのようなアメリカに対しての複雑な思いから、この映画はアメリカではなくベルギー映画として制作されている。




2012/4/11 【 アーティスト 】
アーティスト」を観た。
1920年代のハリウッドを舞台にしたフランス映画。第84回アカデミー賞にて作品賞、主演男優賞etc最多5部門受賞。
D映像が話題の中で、当時のままにサイレントの手法をとっていて画面もモノクロなのが大きな特徴。映画がサイレント(無声)からトーキー(発声)へと移行していくまさにその時代を描いているとしても、トーキー時代になってもこの映画はずっとサイレントのまま。今の時代だからこそサイレントからトーキーへの変化を臨場感をもって映画いて欲しかった。まぁそこらへんの変化をまだかまだかと期待した分すかされて少し中だるみした感。
ラストの軽快なタップダンスはそれまでの不満を一蹴するくらい楽しかったけど・・・。主人公のパートナーのアギーに関しては“犬”版アカデミー賞受賞し世界中から引っ張りだこというその人気も納得!特に印象的なのが「BANG!」のテロップと名犬アギーの死んだふり・・・。古典だけれどツボでした。




2012/4/20 【 永遠の僕たち 】
永遠の僕たち」を観た。死に取りつかれた少年と、余命いくばくもない少女と、その友人?の既に死んだ特攻隊の日本兵、そんなそれぞれ形は違っても「死」で不思議な繋がりをもった3人が描かれる。少年が唯一心を許している幽霊役を加瀬亮が好演。
他人の葬儀巡りを繰り返す少年のどこに少女が魅かれていったのか全くわからないし、全体的に淡々としていて悪い意味でふわふわした浮遊感がどうにも退屈。
少女を演じたスリムでベリーショートのミア・ワシコウスカのキュートな透明感だけが印象に残った。





2012/4/22 【 バトルシップ 】
バトルシップ」を観た。
ユニバーサル映画100周年記念作品だけあって超ど派手なエイリアンvs人類の海洋SFアクション大作は、浅野忠信やらリアーナなど話題性のあるキャスティングも興味深い。冒頭に主人公が一目ぼれする美女ブルックリン・デッカーの登場が、去年観た「ウソツキは結婚のはじまり/JUST GO WITH IT」にそっくりなのが笑えた。印象的な脇役の戦場で両足を失った兵士役のグレゴリー・D・ガドソンは、実際に戦場で大ケガを負いあの義足はほんものだという。
まぁ、エイリアンの出てくる映画にリアリティを求めるのもどうかというワケで、全体的に無茶ぶりのある大味のアメリカン色全開モードで突っ走っていながらも、いくつかの張られた付せんもちゃんと回収されていて想像以上に楽しめた。伏せんのひとつとしてちらっと映った退役軍人たちの姿も後に活かされていて戦艦「ミズーリ」がミソ。真珠湾を舞台にアメリカの海軍と日本の海上自衛隊が手を組むというのも良かった。




2012/4/28 【 HOME 愛しの座敷わらし 】
HOME 愛しの座敷わらし」を観た。
原作は朝日新聞に連載された荻原浩の小説「愛しの座敷わらし」で、東京でぎくしゃくしていた家族が田舎の古民家で暮らすうちに絆を取り戻す物語。
見どころはやはり岩手の遠野にあるという築200年の古民家。去年「遠野ふるさと村」に行ったことがあるけれど、あんなに立派だったかと改めて黒光りのする柱や梁・磨きかけられた板の間・囲炉裏・茅葺屋根etcその味わい深い佇まいに魅かれてしまった。
座敷わらしとはこの世にうまれながら間引かれた子どもの化身だという。子供らしくイタズラはするけれど遊びも美味しいお菓子の味も知らず、その運命のゆえか、その家の人たちに福をもたらすという。オーディションで選ばれたという無邪気さと哀しい過去もった座敷わらし役の子供がとても愛らしい。
父親の左遷・母親のストレス・娘のいじめ・息子の喘息・祖母の認知症とそれぞれかかえる問題についてちょっと中途半端。岩手の自然についても、牧歌的なきれいどころだけ映しているけれど、東北は厳しい冬もあってこそ本来なのでどうにも片手落ち。




2012/5/3 【 サラの鍵 】
サラの鍵」を観た。
1942年ナチス占領下のパリでユダヤ人一斉検挙ヴェルディヴ事件と、2009年に事件を調べ始めた女性記者の話を並行して描いていく。
弟の安全のため納戸に隠し「必ず戻るから」と鍵をかけたサラの苦悩と強い想いに胸がつまる。収容されたユダヤ人が味わう地獄は何度観てもショッキング。この悲劇のサラの少女時代を演じたメリュジーヌ・マヤンスは10歳が背負うには重すぎるものを見事に演じ圧巻。冒頭ベッドで幼い弟と戯れる無邪気なシーンがあることで、その後の暗転の対比がより衝撃的。
60年という年月を超えて、女性記者が仕事とプライベートが重なって導かれるようにサラに近づいていく様子はスリリングに描かれ、自身の妊娠問題がこの思いを馳せる悲劇の少女サラと知らず知らずに絡み、新たな人生のステップにつながっていく感動的社会派ドラマだった。




2012/5/5 【 テルマエ・ロマエ 】
テルマエ・ロマエ」を観た。古代ローマ帝国の浴場設計技師が現代日本の銭湯にタイムスリップするという人気コミックを実写映画化。発想は面白いのだけれど、楽しめたのは外国人目線からの日本の銭湯を面白く紹介している前半のみ。だんだんテンポ悪くなって後半はなんと寝てしまった。これって眠くなる映画だったとは・・・(-_-;) 阿部寛、北村一輝、宍戸開、市村正親という日本屈指の顔の濃い役者陣を揃えて古代ローマ人を演じていることも話題となっているけれど、果たして本場のイタリア人からもローマ人として見えたのでしょうか。もし顔の薄いイタリア人が日本人を演じたら日本人に見えるか???というのも気になるところ。ヒロインの実家の旅館の経営危機という付随するドラマも中途半端。っていうか実際に半分うとうとしていたからなんだかよくわからないまま鑑賞終了。




2012/5/9 【 ももへの手紙 】
ももへの手紙」を観た。
心にもない言葉を投げつけた父親が不慮の事故で突然亡くなり、母親の故郷に引っ越してきた少女ももを描く。
父が書きかけた「ももへ」とだけ記された手紙がキーポイントとなっている。最初新しい環境に馴染めず、後悔と喪失感を抱えた少女が、のどかな島で妖怪や人との出会いを通じて成長していく。
この島がホントに素敵。なんでも映画に登場する汐島は、広島県大崎下島がモデルだという。瀬戸内海の情緒たっぷりで古き良き日本にタイムスリップしたかのような懐かしく暖かい。
何より肉親の死ほど悲しいものはなくその深さは計り知れないものだけに主人公ももの心の葛藤を丁寧に描いているのが良い。イワ、カワ、マメという3人の妖怪とももの掛け合いも楽しく絶妙。ジブリに似てジブリじゃないとか 色々な声もあるようだけれど、十分丁寧で素敵な物語で大満足。




2012/5/26 【 ダーク・シャドウ 】
ダーク・シャドウ」を観た。
ティム・バートン監督の定番俳優であるジョニー・デップがヴァンパイアを演じる。白塗りでアメリカ文化についていけない時代遅れな吸血鬼という設定の発想は面白いと思うのだけれど、これはいくらんなでもまるでドタバタコントを見ているよう。
カーペンターズなど選曲も意外性はあるけれど、なんかティム・バートン監督のやりたい放題が度を越しているような。
渋い色調の映像は健在ながら、クライマックスの魔女とヴァンパイアの戦いもどこかで観たような戦いで中途半端で特筆すべきものはなかった。





2012/5/27 【 ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン 】
ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」を観た。
アカデミー賞では助演女優賞と脚本賞にノミネートされたというから楽しみにしていたんだけれど・・・。そもそもブライズメイドいう花嫁介添人の風習が日本にはないのでピンとこないのが根本的なネック。
ヒロインの心理葛藤や友情よりも、今回初めて知ることになったブライズメイズのあまりに大変な役割ばかりが強烈で「こんなにめんどうな風習が日本に無くて良かった〜」ということばかりが印象に残る。
女同士で本当の親友を競い合うってのもいかにもアメリカ的。女版「ハングオーバー 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」だそうで邦題もそっちを意識したものになっているけれどスカッと笑えるハングオーバーに比べて、女のプライドに焦点があってなんともいちいち面倒くさい。全体的に思ったほど笑えなく肩すかし。
ただ軽薄男VS警官という2人の対照的な男性を丁寧に描いていてこちらの対比は楽しめた。




2012/6/16 【 スノーホワイト 】
「スノーホワイト」を観た。
白雪姫のダークなアレンジバージョンということで映像に重みはあるのだけれど・・・まったく面白くない。
何より美しいハズのプリンセス スノーホワイトを演じたクリステン・スチュワートが魅力なさ過ぎる。「鏡よ鏡鏡さん世界で一番美しいのはダ〜レ〜」の女王が嫉妬するのも説得力なし。だいたい女王演じたのがシャーリーズ・セロンで今回もハンパなく美しいんだもん。このオーラを前にクリステン・スチュワートには気の毒だけれどこのヒロイン役は無理があったとしか思えない。
ハイホーハイホーの小人達に期待するもこちらも中途半端。ラストの甲冑姿の戦闘シーンはまるで「ジャンヌ・ダルク」ばり。が、本家のミラ・ジョヴォヴィッチの足元にも及ばない。ということでシャーリーズ・セロン意外は見どころなし。





2012/7/7 【 灼熱の魂 】
灼熱の魂」を観た。
いやぁ久しぶりに観終わって席が立てないほどの大傑作だった。
原作はレバノンから亡命して現在カナダのケベック州に住むワジディ・ムアワッドの戯曲「INCENDIES(火災)」とのことで邦題もこれに由来しているのかも。
カナダとレバノンを舞台に、母親が双子の子供に託した2通の手紙がキーポイントとなり、1通は存在しないハズの兄へ、もう1通は会ったことのない父へということで母親のルーツを巡る旅が始まる。
レバノンの乾いた空気感と母親がたどった筆舌に尽くしたいほどの不条理に圧倒されながら、悲劇の正体に迫っていく。断片的な事柄がラストで1本の線になって繋がっていくミステリー仕立ての構成力は圧巻。その真実を知らされた時の衝撃度はハンパなく打ちのめされた。なんて強烈で完成度の高い映画なんでしょう。
というわけで2010年第83回アカデミー賞の外国映画賞は「未来を生きる君たちへ」より本作に受賞して欲しかった。




2012/7/7 【 ホタルノヒカリ 】
ホタルノヒカリ」を観た。
原作はひうらさとるによる大人気コミック。TVドラマでめでたく結ばれたホタルとぶちょおのその後イタリア新婚旅行編が本作。
予告編でのスペイン広場の階段での「レッツごろごろ」を観た時点であれを面白いと思える人は、綾瀬はるかのウェディングドレス姿でのドジョウすくいも藤木直人の女装ダンスも楽しめるのかもしれないけれど・・・よくぞこんな役を引き受けたもんだと面白がっているのは製作者サイドだけであって、こっちからしたら、たいしたサプライズにはなっていない。
誘拐?覚せい剤?つっこみどころ満載でゆるゆるのストーリー。
あちこちのTV番組での映画宣伝だけはハデハデにやっていたけれどイタリアロケを活かされず観光地の映像を見てもイタリア旅行気分にさえ浸れない。
お揃いのストライプジャケットを着て勝手にズキュン、バキュンとか言ってローマ観光を楽しんで下さい。




2012/7/14 【 グスコーブドリの伝記 】
グスコーブドリの伝記」を観た。
宮沢賢治の童話を映画化したアニメーション。映像は美しいし主人公ブドリと妹のネリもかわいいし・・・と、宮沢賢治の桃源郷のような世界観に酔えるのは前半30分程度のみ。
当初このテーマと思われたのは兄妹の絆だったのだけれどいつの間にかそっちは自然消滅???いつの間にかテーマは環境へ???というのも中途半端。
どうやら原作では大人になったネリが登場するらしいのだけれど本作でネリのその後はあいまいなまま。そもそもネリをさらった謎の男コトリは物語のカギを握る存在で時折ブドリの前に現れるのだけれど正体は謎のまま。ここがやっぱり消化不良の一番の原因かも。
「銀河鉄道の夜」を映画化した杉井ギサブロー監督と、キャラクター原案担当のますむら・ひろしのコンビが復活ということで期待していたんだけれど観客にゆだねて察しろというにはあまりにも不親切。




2012/7/21 【 おとなのけんか 】
おとなのけんか」を観た。
ロマン・ポランスキー監督が怪我をさせた親と怪我をさせられた親のけんかを、上映時間79分というコンパクトな時間内に濃密に描く。
登場人物はほぼ2組の親ってか4人のみだし、密室だし、まるで舞台向きと思ったら、原作が舞台とのことで納得。
怪我をしたサイドは夫が人の良さそうな金物屋さん(ジョン・C・ライリー)妻が知識人(ジョディ・フォスター)、怪我させたサイドは夫が弁護士(クリストフ・ワルツ)妻が投資ブローカー(ケイト・ウィンスレット)。
庶民派Vおハイソの構図も面白く、子供の怪我からスタートしていつの間にか両家の争いどころ、夫婦喧嘩、そのうち携帯の件で弁護士がへなへなすると残りの3人があざ笑ったりとetc 22 どころか もはや敵味方関係なく、初心なんてすっとんだバトルになっていくのが面白い。
原題の「CARNAGE(殺戮)」より邦題が‘ズバリ’直球で上手い。まさに子どもそっちのけの大人ならではの大人の喧嘩でした。




2012/7/22 【 苦役列車 】
苦役列車」を観た。第144回芥川賞を受賞した西村賢太の小説の映画化。
まさに私小説という西村賢太そのものを映す主人公の北町貫多はプライドが高く卑屈で被害妄想で自堕落で自己中でホント迷惑な存在。近くにいたらかかわりあいたくないのだけどその露骨なストレートさに目が離せなく,気が付くと西村賢太の小説を読みまくっていた。最近はマスコミの露出度も増えて穏やかな笑顔を見る機会が多いけれど深く関わったらやばいってことまで全部私小説で吐露しちゃっているのでそのギャップがまた興味深い。
なぜこの貫多がこうも気になってしかたないのかというとその圧倒的な孤独感や疎外感と同時に人とのかかわりを強く求めているその人間臭さに共感できるからかもしれない。
この面倒な人格を森山未来が見事に演じている。原作にない本屋の店員演じた前田敦子が話題となっているけれど今回脇役で印象深かったのは、カラオケ自慢の高橋岩男役のマキタスポーツ。この人の芸達者なこと!!キーパーソンだしこの映画のスパイスとして絶妙。




2012/8/1 【 ファミリー・ツリー 】
ファミリー・ツリー」を観た。
妻の不慮の事故から人生を振り返り、再生していくストーリー。
仕事に追われる毎日とはいえ家には妻と二人の娘、仕事は弁護士だし住んでいるのはなんたってハワイだし ってことで一見は順風満帆に見える主人公が、妻の不慮の事故をきっかけに人生最大の危機を迎える。
ジョージ・クルーニーがあたふたと迷える優柔不断な中年男の主人公をうまく演じている。
これに先祖代々からの土地の問題をからめていてそれが妻の問題と絶妙にリンクしていく展開も、反抗的だった長女や軽薄なボーイフレンドも次第にその良さが出てなじんでくるあたりも自然で脚本が上手い。
なんといっても何気ない日常を映し出すラストシーンのさりげなさが絶妙で後味良好。




2012/8/2 【 ヘルタースケルター 】
ヘルタースケルター」を観た。
良くも悪くもあれは演技なのか地なのか・・・という意味では「別に」発言で定着した沢尻エリカのイメージを更に圧縮したような役柄だった。
確かに露出的には体当たりなんだろうけれど、クランクアップ後に「役が抜けきれないとかで体調不良で仕事をお休み」というような報道があったけれど・・・これってそれこそ‘別に’のノリで特に役作りの必要もなく地そのままじゃなの・・・とも思えるキャラだった。・・・(-_-)/~~そーいう意味ではキャスティングは無難というか正解と言えるかも。
逆に主役以上に体当たりと思えたのがマネージャー役の寺島しのぶ。こちらこそよくぞあの役をしかもスッピンで引き受けたものだと感心。新井浩文さんのオネエも新鮮。
蜷川実花監督のあの強烈な色彩の世界観を背景に完璧な整形美女りりこの毒々しさが際立っていたのでバランスは良かったかも。タイトルの意味は「しっちゃかめっちゃか」だそう。




2012/8/6 【 ぼくたちのムッシュ・ラザール 】
ぼくたちのムッシュ・ラザール」を観た。
84回アカデミー賞外国映画賞にノミネートということで楽しみにしていたのだけれどなんとも地味な映画だった。
カナダのケベック州の小学校が舞台。教室で首を吊った先生の代わりにやってきた主人公のラザール先生は、アルジェリア出身。問題児扱いされている児童の心の傷に気が付き自殺の背景に正面から向き合おうとしていく。
時代遅れながら実直なラザール先生と、事なかれ主義の校長の対比が如実。
体罰禁止はもちろん体への接触(日焼け止めを塗ることすら)が極端に禁止され、担任より権威のあるカウンセラーのシステムなどカナダの先生も大変。「学校はしつけではなく勉強を教えて」という親などは日本にも通じて教育現場の問題的にもなっている。
アルジェリアでのラザールの哀しい背景も絡めていて、多文化・多民族国家. 「人種のモザイク」と呼ばれるカナダらしい映画ともいえるかも。




2012/8/7 【 少年は残酷な弓を射る 】
少年は残酷な弓を射る」を観た。
これってホラー?怖すぎるぅ。
冒頭スペインのトマト祭りがまるで血にまみれるようにおどろおどろしく映し出される。全編にこの赤の扱い方がミソで、ペンキ・ジャム・洋服・ボール・扉・ライト・芝刈り機・スーパーに積まれたトマト缶詰・ブラインド・ネイルetcと形を変えながらの様々な赤に共通するのは不穏な空気感。
赤以外でも落書きされた壁紙・投げつられた卵・ケーキに押し込まれたタバコetc次々と気分が悪くなるようなシーンも加わって、まぁよくここまで徹底して毒気のある世界観を描いたものと感心。
ノー天気な父親と無邪気で天使のような娘までが、逆に母と息子の尋常じゃない関係を色濃くさらにショッキングにあぶりだし、この母親の心理描写を細部まで伝える。
母親を演じたティルダ・スウィントンの狼狽の演技は圧巻。後半の母からの問いに息子からは明確な答がなかったのは、もやっとしたまま。でも、この作品の場合はそのあいまいさがどこまでもつかみきれない息子像とうまくリンクしているような。
ラストシーンには意表をつかれエンドロールが終わってもしばらく席を立てなかったほど衝撃的。
唯一の不満は邦題。サスペンスだけにこれはダメでしょう。原題は「We Need to Talk About Kevin」。




2012/9/3 【 ミッドナイト・イン・パリ 】
ミッドナイト・イン・パリ」を観た。
アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞、アメリカではウディ・アレン作品最高の興収を上げる大ヒットだという。
オーウェン・ウィルソンが売れっ子脚本家から一念発起し作家を目指すパリ大大大好きのパリに夢みる夢男ちゃんを演じている。
「朝のパリは美しい、昼のパリは魅力的、夕暮れのパリにはうっとり、真夜中のパリは魔法がかかる・・」このあたりのもって行き方もホント上手い。加えて「雨のパリも素敵〜〜〜」というのがミソで素敵なラストシーンに繋がっていく。
主人公が憧れる芸術の花開くゴールデンエイジと言われる1920年代の人々は、19世紀末のベル・エポックを憧れていて、その時代の人々はルネッサンス時代に憧れる.。
いつの時代も自分たちの今より過去に黄金時代を見出しているっていう過去への感傷がウディ・アレンらしいシニカルさとユーモアで描かれる。
1920年代のヘミングウェイ、ピカソ、ダリ、フィッツジェラルドetc… 19世紀末のロートレック、ゴーギャンetc…人物に興味ある人はもっと楽しめるのかも。
そういえば海外のことわざの「The golden age was never the present age. (黄金時代が現代であった試しはない)」これをそのまんま映画にするとこうなるという感じ。




2012/10/1 【 桐島、部活やめるってよ 】
桐島、部活やめるってよ」を観た。
学校のカリスマの人気者桐島君が、部活を辞めるという噂が出た金曜日を起点に、同じ時間を何人ものそれぞれの視点で描く。これは「バンテージポイント」などで活かされていたもので結構好きな手法なのだけれど・・・。この映画に関しては視点を変えた効果はさほと感じられなかった。
学校のスター桐島の取り巻きという所謂人気者グループとそれ以外という暗に引かれた優劣・女子同志のチクチクした衝突・体育会系の上下関係etcここで描かれているものは確かにリアリティがある。といってもそれが面白いかというと話は別で内容がただただ退屈にしか思えなかった。
桐島に振り回されたり熱くなる生徒の中でその流れに属しない我が道を行く野球部のキャプテンの淡々としたキャラが意外にほっとさせられた。




2012/10/1 【 スープ〜生まれ変わりの物語〜 】
スープ〜生まれ変わりの物語〜」を観た。
死んでしまった父を演じる個性派俳優の生瀬勝久がとにかく良い。冴えない中年男、死んでも死にきれない父親像がはまっている。
思春期の15歳の娘と父親との関係は難しくぎくしゃくしがちだけに、そんな中での突然の身内の不幸は双方にとって悔やんでも悔やみきれない心残りとなっていく。
この映画では苦悩するのをこの父娘に絞り、その他の登場人物も死後の世界もケロッと楽しく描いているので、本当に死後の世界がこの映画のようであったらと思わずにいられない。
生まれ変わる時、前世の記憶がなくなるというスープを、飲むか飲まないかがこのタイトルに繋がっているけれど、前世の記憶を持ったまま生まれ変わった人と、前世の記憶がないほうを選んだ人の再会のタッチがかなり面白く、その中に親子の絆をきっちり描いていた。




2012/10/1 【 ロック・オブ・エイジズ 】
ロック・オブ・エイジズ」をアメリカに向かう機内にて鑑賞。
80年代のロック好き必見。
当時の名曲が聴けるだけでもうれしいしパット・ベネターの「強気で愛してHit Me With Your Best Shot」にのって、歌い踊るゼタ=ジョーンズや伝説のロッカーステイシー・ジャックスとしてガンズ・アンド・ローゼスの「パラダイス・シティ Paradise City」、スコーピオンズ 「ハリケーンRock You Like A Hurricaneetcをガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズの指導を受けたトム・クルーズがステージをわかせる。まぁハリウッドスターは何でもそれなりにこなすもんだと感心。
1987年のロサンゼルスを舞台に、音楽で成功を目指す若者の夢とロマンスを80年代のロック・ナンバーに乗せて映し出していく。シンプルなストーリーながら使用曲が良すぎるので何も不満はありません。と、当初は思ったのだけれど・・・、
実はこの数日後にニューヨークのブロードウェイで「ロック・オブ・エイジズ」を観たらこの映画の感想はかなり変わってきた。
映画ではトム・クルーズはぶっとんでいるけれど何気に実は良い人という設定だったけれどミュージカルではそんなフォローも一切無くて‘あぶない人’のままだったので、トム・クルーズよいしょ疑惑が芽生えてなんだかなぁ・・・
怒涛の楽曲、デフ・レパード、ジョーン・ジェット、ジャーニー、フォリナー、ボン・ジョヴィ、REOスピードワゴン、パット・ベネター、ホワイトスネイクetcも映画で見る以上にブロードウェイのステージの方がはるかに迫力あったし・・・加えて映画はいたって王道ともいえる脚本だったけれどブロードウェイはめっちゃ笑わせてくれて何倍も楽しめた・・・
比較するもんじゃないけれどミュージカルが良すぎてなんだか色あせてきてしまったような。
耳に残るクワイエット・ライオットの「Cum On Feel The Noize」はその完成度に改めて感動させられる。巷では一発やともいわれてもこの曲はやっぱ名曲だよ〜〜〜ん。




2012/10/1 【 愛と誠 】
愛と誠」をアメリカに行く機内にて鑑賞。
最初「ロック・オブ・エイジズ」を観てそのノリの良さにリピートしようかと思ったのだけれど気まぐれで観たこっちの「愛と誠」にめっちゃはまってこっちをリピート。帰りの便でもまた観ちゃうってくらいすっかりツボ。
三池監督作品の中でダントツの1位。歴代の「愛と誠」シリーズでもダントツ。
妻夫木聡の太賀誠度も合格点どころか完璧、武井咲の早乙女愛役も天然おとぼけキャラ全開。脇役の斉藤工の石清水も安藤サクラのガムコも 幼少期の誠役の加藤清史郎もまぁとにかくイメージ通りでキャスティングは申し分なし。
ロック・オブ・エイジズ」が80年代ロックミュージカルだとしたらこちらは昭和歌謡ミュージカル!って言っても昭和歌謡コメディーミュージカル。
西城秀樹の「激しい恋」、にしきのあきらの「空に太陽があるかぎり」、北山修と加藤和彦の「あの素晴しい愛をもう一度」、藤圭子「夢は夜ひらく」、河島英五の「酒と泪と男と女」尾崎紀世彦の「また逢う日まで」etcフルコーラスで歌わされるキャストを観ているとそれだけで笑いがこみ上げてきちゃう。
好き嫌いがかなりわかれているようだけれどここまで遊び心に満ちた大胆な演出には拍手!




2012/11/9 【 最強のふたり 】
最強のふたり」を観た。
事故で首から下が麻痺し車イス生活の大富豪フィリップの介護者として雇われた犯罪歴もあるスラム出身の青年ドリスという2人の人種や貧富の差も超えた人間関係が描かれている。
冒頭の猛スピードでのスリリングなドライブシーンでノリノリで歌うEW&Fの♪Septemberでもう一気に引き込まれる。無鉄砲な悪乗りにしか見えなかったこのドライブシーンが後半に再び登場する時、「俺に任せろ」と言ったドリスの台詞の重さも伝わって胸がいっぱいになった。
対照的な2人だけに一生の中でこれほどウマが合う人との出会いはまさに運命のいたずらというか奇跡。形は違っても自分の人生に先の見えない閉塞感が満ちていた2人だけに、人との出会いで人生はこんなにも良くなれるって前向きになれるような映画だった。
気を遣うということを知らないドリスのあけすけで奔放な言葉や行動はある意味ストレート過ぎて、すれすれのきわどさながら、逆にそれを楽しんでいるフィリップの表情に何度も苦笑させられた。常に紳士で冒険心旺盛で偏見をもたないフィリップと天真爛漫で同情も遠慮もないドリスだからこそお互いを思いやれた深い絆。
EW&Fboogie wonderlandのダンスシーンも、パラグライダーのシーンもどれもこれも嬉しいサプライズ。お屋敷で働く他の面々もドリスへ心を開いていく過程もとてもナチュラルに描かれていく。ラストの、泣きそうになりながら震えるフィリップと、レストランの外から手を振るドリスのシーンは圧巻。
この後のふたりが気になるだけに実際の映画のモデルになったご本人たちの映像と後日談のテロップが流れたエンディングも秀悦。




2012/11/14 【 おおかみこどもの雨と雪 】
おおかみこどもの雨と雪」を観た。
サマーウォーズ」の細田守監督が、またしても完成度の高い作品を作ってくれた。
ファンタジックな要素は父親が“おおかみおとこ”子供が“おおかみこども”の部分だけ。
地域とのかかわりやらを含めた子育て奮闘が現実的で、まるでシングルマザーバージョンの「北の国から」。母「花」が都会を離れ山深い田舎の荒れた家や土地に手を加え「雪」と「雨」という2人の子供を育てていく。失敗を繰り返しながらも周囲の人々に解けこみ子供を育てる母の姿は本当にたくましく子供の育児を通し母自身の成長も描ききる。
今年は「灼熱の魂」「少年は静かに弓を射る」といった母像を描いた衝撃作に恵まれたが本作の母もゆるぎなく真っ直ぐ愛情を注ぐ。並々ならない苦労をして子育てしているのに子供が旅立つ時に花が言った「私、まだあなたに何もしてあげれていない」には胸が熱くなり、思わず「もう十分やったよ。ご苦労さま」と声をかけたくなったのは私だけじゃないと思う。
子供の自立は親離れと表裏一体でその喜びと寂しさを見事に描ききっていた。




2012/11/23 【 人生の特等席 】
人生の特等席」を観た。
クリント・イーストウッドが「グラン・トリノ」に続きまたもや頑固で不器用な昔気質な男を演じる。どういうワケかあのしゃがれ声と気難しい表情に再会すると安心した気持ちになれるのは82歳のイーストウッドここに見参って存在を実感できるからなのかも。
地味ながら奇をてらわない古き良きアメリカの心の風景が映しだされる。都会でキャリア志向の娘との対比、コンピューターのデータ分析による今時のスカウトとの対比も見事。
疎遠な2人がどう距離を縮めていくかというストーリーは王道で予想通りなのだけれど、安心感とじわっとした感動。ガスの長年の友との関係もなかなか良いし、話題のルーキーのいやったっらしさも効果的。
ただ、野球自体に興味がなくても大丈夫な内容とはいえ、野球愛に感情移入できなかったのは残念。
タイトルは、ガスが言った「おまえに苦労をさせたくなかった、こんな三等席の人生で」に娘が答えた「三等席じゃない。目覚めるといつもパパの野球を見て…。人生の特等席だった」というセリフからと思われる。原題は「Trouble with the Curve」。




2012/11/25 【 白雪姫と鏡の女王 】
白雪姫と鏡の女王」を観た。
今年「スノー・ホワイト」を観たし何故にまたも「白雪姫」と思ったら、グリム生誕200年とのこと。
「スノー・ホワイト」があまりにもイマイチだったのでこちらもそれほど期待しなかったら・・・。なんとすっごく面白いではないですか。
「スノー・ホワイト」のシャーリーズ・セロンの女王が鬼気迫るだけにジュリア・ロバーツは悪としてのインパクトは中途半端感はあるものの、随所にずっこけヘラヘラしたユーモアをちりばめ全体的にはすっごく楽しくスマートなアレンジになっている。
フィル・コリンズの娘という白雪姫演じたリリー・コリンズは当初違和感を感じたあのぶっとい眉毛が何故かだんだん気にならなくなりそのチャーミングさに魅了されちゃった。それに何と言っても7人の小人にきちんとスポットを当てているのが嬉しい。「毒りんごには、もう騙されない。」というキャッチコピーの通り現代風なアレンジも見てのお楽しみ。
エンドロールはまさかのボリウッド風。なんでもターセム・シン監督はインド人だとか。納得。これが楽しくて楽しくて。意表をつく演出で最後の最後まで楽しませてもらった。




2012/12/19 【 アルゴ 】
アルゴ」を観た。
1979年のイラン革命が激化する中、アメリカ大使館が襲撃され52人が人質になった事件の裏で、CIAによる脱出した6人の外交官の秘密の救出作戦を描く。
なななんと事件から18年経ってクリントン政権下でやっと機密指定が解除されたという。
タイトルにもある「アルゴ」とは偽のSF映画であり、6人をその映画スタッフに偽装させ救出させるという奇想天外なもの。これが実話ってすっごい。
CIAの工作員主人公トニー・メンデスは「最後の猿の惑星」を観ていてこの作戦をひらめいたということで、まぁこの突飛とも思える案を採用してハリウッドを巻き込んで実際に作戦が行われたというから、やっぱアメリカはスケールがハンパない。
結果はわかっていてもギリギリまで登場人物を追い詰める演出はスリリングでドキドキしっぱなし。
監督でもあるベン・アフレックは、自身でプレッシャーに耐えつつ任務をこなす寡黙な主人公を見事に演じている。ベン・アフレックのこれまでのイメージが払拭され、こんなに才能あったんだと再認識させられるような作品。
エンドロールに、当時のアメリカ大統領であるジミー・カーター氏のコメントが流れるのも感慨深い。




2012/12/25 【 「わたし」の人生(みち)我が命のタンゴ 】
シアタープレイタウンの閉館により最後の上映となった「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ を観た。
和田監督は精神科医として長年老年医療に取り組んできたということで実体験で得たと思われる認知症介護のリアルな問題が描かれる。父娘ともに大学教授という設定がミソで、現役バリバリの教授でも症状が進行することも、比較的理解ありそうな大学という組織の中で介護離職せざるおえなくなるというのもリアルでその怖さにはっとさせられる。
予定調和な展開ながら、各種手続き・介護する側のセラピー・介護施設のメリットなど監督ならではの提言が織り込まれている。
楽しく体を動かすタンゴが認知症患者に効果があるというのも納得できる。ただタイトルにあるような「我が命のタンゴ」という程、タンゴがメインに描かれているわけではないので、タイトルが硬いし仰々しい感も。
介護される橋爪功もする秋吉久美子もそれぞれのやり切れない葛藤や苦悩がひしひしと伝わる中で、小倉久寛が演じた施設での医師の存在がで全体をやわらかくほっとさせてくれて救いとなっている。




2012/12/30 【 レ・ミゼラブル 】
ヴィクトル・ユゴー原作でミュージカルの最高傑作の「レ・ミゼラブル」を観た。
冒頭の荒れた海で巨大な船を引く囚人のシーンで一気に引き込まれる。続くジャン・バルジャンがフランス国旗をかかげるシーンも強烈。
ジャン・バルジャンを演じたのはミュージカル・スターとしても活躍するヒュー・ジャックマンで囚人から市長までそして老いまでを見事に演じていた。
宿敵のジャンを生涯かけて追い続けるジャベール警部のラッセル・クロウや実際に髪を切ったアン・ハサウェイやその他の豪華な出演者も歌を聞かせてくれてさすがハリウッド俳優は演じて歌えてその幅の広さはたいしたもの。
そんな中、コゼットに好きな人を奪われてしまうエボニーヌ役のサマンサ・バークスは役的には地味ながら歌の上手さはダントツで他の出演者の歌が色あせたくらい圧巻。
社会の最下層で貧困にあえぐ人々の絶望と愛と慈悲を壮大に描き年末の1本としてふさわしい作品だった。





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