MOVIE      2016年映画館で観た感想 (基本的にレンタル等の鑑賞は含みません)

 


君の名は。
怒り 
ジェイソン・ボーン 
シン・ゴジラ 
ルーム 
 
 
日本で一番悪い奴ら 
教授のおかしな妄想殺人 
マネーモンスター 
デッドプール 
リリーのすべて 
クーパー家の晩餐会 
アイアムアヒーロー
 
レヴェナント:蘇えりし者 
スポットライト 世紀のスクープ 
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 
オデッセイ 
スティーブ・ジョブス 
ヘイトフルエイト 
Xミッション 






2016/10/1 【 君の名は 】

君の名は。」を観た。
今年の顔ともいえる新海誠監督の超話題作。
お互いの心と身体が入れ替わった高校生を主人公にした青春ファンタジーなのだけれど、千年に一度の彗星来訪を絡め、物語のスケールは宇宙規模なものへと昇華していく。
とにかく背景描写が圧倒的に美しく、写真をベースにデジタル技術を駆使して丹念に描かれたという背景は実写と見まごうほどにリアル。この世のものと思えないほど美しい彗星の映像とそれがもたらすギャップも心を掴む。
監督がこれまでのテイストとの一番の違いを「東日本大震災の影響」と言っているだけあって、本作では津波ではなく彗星来訪とした壊滅的被災をなんとか防げないものかとの強い思いが伝わってくる。
加えて本作が素晴らしいのは何と言っても‘日本’を前面に出したことも大きいような。夢のお告げを受けた女の子が、赤い組紐や日本の伝統文化「口噛み酒」や神社の御神体といったものを通し信仰を聞いてもがきながらも町を災害から守る。
果たして彗星の到来は?果たして2人の関係は?と全く先が読めない展開も良かった。
RADWIMPSの楽曲は映像とシンクロしていると評判だけど大ヒット曲♪君の前前前世から♪でさえ♪君の全全全世界から♪だとばかり思い込んでおりました(^_^;) ってことで歌詞の解読が追いつかない身としてはコメントする立場にないかなぁ。
大切なのは「忘れること」を忘れないように。





2016/9/28 【 怒り 】

「怒り」を観た。
悪人」を手掛けた原作者の吉田修一と、李相日監督が6年振りにタッグを組んだ作品。いやぁ今回も2時間20分だれることなく圧倒される。
東京八王子で発生した未解決の凄惨な一家惨殺事件。壁には「怒」の血文字が残され犯人は整形して逃亡。
そんな時、千葉・東京・沖縄に現れた身元不明の男をめぐるそれぞれの状況は全く別であるけれど「人を信じること」の意味を問いかける。信じるということは疑うことの対極にあって、疑いを持ち始めてからの苦悩を赤裸々に描き出す。
千葉では偽名を使っている青年と恋に落ちる愛娘へのビミョウな父の距離感が秀悦。東京で描かれるゲイカップルの住所不定無職という片方のなんとも線の細いはかなさが印象的。沖縄では高校生と無人島で暮らす謎のバックパッカーとの交流に心が切り裂かれそうになる米軍基地の問題を絡めている。
キャストが豪華で交差する3つのドラマから人間の揺れ動く感情がむき出しとなって強いメッセージを投げかけてくるなんともヘビーな力作だった。





2016/9/13 【 ジェイソン・ボーン 】

ジェイソン・ボーン」を観た。
旅先のTorontoで時間的にパーフェクトだったのでたまたまの鑑賞。
それにしてもカナダでCAD$20ってなんでそんなに映画代高いのよって思いながら向かうと、VIPシアターだった。超おされなbarラウンジあるしシートもお一人様用でっぷり型?でリクライニングも。これは字幕無しでついていけなかったら寝心地良い最高のbed。まぁそれもいいかぁ(^_^;)

さて、9年振り復活だというジェイソン・ボーンは変わらずのムキムキでストリートファイター姿で登場。マット・ディモンは猿顔だしこの身体に台詞少ないしますますゴリラ系に近くなったかも(^_^;)
今回もスピード感とバイク&カーチェイスは期待を裏切らなくアクションは年齢を感じさせない。
これまでの協力者ニッキーに変わるように登場するのが、ボーンを追跡する側に回るアリシア・ヴィキャンデル演じるCIA長官の下で働くアナリストのヘザー・リー。魅力的だし彼女が敵か味方が最後までわからないというサスペンスの緊張感はあるけれどキャスティングとしてちょっと若いかなぁ。
記憶を失っているという背景において衝撃の事実として自分の父親は「分析医」と聞かされていたが、実はそうではなかったことが判明するのがミソ。
こーいう映画で言うことじゃないけれど銃弾受けた後も動ける姿はたくましいにもほどがある。それこそが孤高の最強〜〜の暗殺者ってことだろうけど。
次作はジェイソン・ボーンvsヘザー・リーかな?





2016/8/24 【 シン・ゴジラ 】

シン・ゴジラ」を観た。
日本発のゴジラとして初めてフルCGで制作。怪獣同士のバトルではなく、今回はゴジラvs人間、もっと言えばゴジラvsニッポン。これが期待以上。
余計なものを排除して、現在の政府・自衛隊なら未確認生物に対してどう対処するのかというシュミレーションになっている。今どきSFチックにど派手な攻撃シーンはいくらでも作れるのに敢えて現実路線。
見慣れた風景を一瞬にして破壊尽く巨大生物像は未曾有の被害をもたらした東日本大震災とリンクしてしまう。霞ヶ関では非常事態でもすぐに動けない体質になっているってことはあの東日本大震災でもそうだったんだろうなって思われるのがなんだかねぇ。
今年の話題作「君の名は。」の映像が話題になっているけれど、こちらの映像もリアルさではひけをとらない。実によくできていて現実の世界観の中、虚構なのはゴジラだけ。
英知を集めて一丸となって向かっていく状況の中、役者さんの苦労が想像できるくらい台詞は専門用語が多く早口でついていけない。でもまぁこれも含めて緊迫感と臨場感がいっぱい。
核攻撃を使いたがる某国と使わせたくない日本サイドの攻防もよく出来ている。ゴジラに凝固剤をゴクゴク飲ませるヤシリオ作戦以上に印象深かったのが、ゴジラにかかればひとたまりもないハズの電車による攻撃でその大活躍には唸った。
キャストの中、米国大統領特使を演じる石原さとみのハイテンションぶりだけが妙に浮いていた。華を添えたかったのかもしれないけれど、エモーショナルともいえる存在感はシンプルなプロットにしただけに余計な違和感となったのが唯一残念。





2016/7/8 【 ルーム 】

ルーム」を観た。
長年拉致監禁された母親ジョイを演じたブリー・ラーソンがアカデミー賞主演女優のオスカー受賞。それ以上に印象的だったのが子供ジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイ。天才子役として今後も目が離せない。
ヒントになった実話「フリッツル事件」以降も世界中で似た拉致監禁事件が後を絶たないこともありリアリティさを増している。
隔絶された環境下でも体操をしてTVを観てケーキを焼いて物語を読み聞かせるなど可能な限り息子へ日常を過ごさせようとする母の愛の豊かさに胸がつまる。
ジャックが逃げた後、果たしてジョイが無事でいられるのか冷や冷やしたこともあり、焦った犯人が捕まるまでのタイムラグが気になるところだけれど事件は収束へ。
この監禁時代と解放後の二つの世界で対峙することになる違う形の苦悩を描く。当然ながら事件発覚で「良かった良かった」ではないのだ。
やっと帰れた家で待っていたのは既に破綻した家族。寄り添う祖母の一方、孫の顔をまともにみられない祖父の対比はまるで復帰後の世界観そのものの象徴のよう。
好奇の目の中「こーすることもできたはず。あーすることもできたはず。」と容赦ないコメントでさらそうとする人々に次第に追い詰められていく様はまぁ想定内とはいえかなりキツイ。
本当に人生を歩みだすことがどれだけ難しいことかしみじみ思い知る。





2016/7/6 【 日本で一番悪い奴ら 】

日本で一番悪い奴ら」を観た。
2002年に北海道で起きた日本警察史上最大の不祥事・稲葉事件の著書『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』をベースに映画化。
柔道青年が北海道県警に入った後に、スパイ作りに目覚め、ヤクザと癒着し、覚醒剤を密輸した資金源で検挙拳銃の数を増やしのし上がっていく。
検察庁が銃器取締に力を入れて‘押収拳銃の量を増やす‘までは良いけれど、その目的のために覚醒剤を密売して拳銃を購入???となるともう本末転倒。マジかぁ。
これは個人のレベルじゃなく北海道警の上層部の腐敗。警察は数字が全ての世界っていうことでこんなあり得ない結果を招いたとは皮肉。
それにしてもこの主人公って善悪の見境をなくしてまでも警察という組織の為に生きただけあって、どこかで組織を信じて逮捕時に警察への恨みを一切吐かなかったのが哀れ。
主人公の諸星を演じた綾野剛は圧巻。純な青年が夜の街をのし歩くようになりシャブ中となっていく半世紀を壮絶に演じる。
逮捕から13年してこのモデルとなったご当人は北海道で「いなば探偵事務所」を立ち上げたらしい。ハンパない経験したことを踏まえての第二の人生応援したい。





2016/6/28 【 教授のおかしな妄想殺人 】

教授のおかしな妄想殺人」を観た。
東部を舞台にした素敵な街並みもファッションも音楽もウディ・アレン色満載ではあるけれど、近年のウディ・アレン作品の中でこれはいまひとつピンとこなかった。
主人公の教授エイブは‘人生は無意味’と地位もあってモテるのになんだかダメダメ要素満載で対人関係にも疲れた中年男。
ホアキン・フェニックスは体重を15kgも増やして望んだというのは、無気力おじさん像に加えて、美女と野獣的な要素を強めた上で若いオネエちゃんに好意を寄せられるギャップを出したかったからなのか。
魅力的な女子学生エマ・ストーンがなんで惹かれていくのか恋は不思議。
犯罪を犯すことでネガティブからポジティブに変化を遂げるのは分かりやすいけれどブラックさがビミョウ。
それにしてもなんだかこねくりまわした感のある変な邦題。原題はシンプルに「IRRATIONAL MAN」。直訳で「非合理的な男」のほうがずっとマシ。





2016/6/21 【 マネーモンスター 】
マネーモンスター」を観た。
ジョディ・フォスター監督。テレビの生放送に犯罪者から脅迫され視聴者を巻き込みアタフタ大騒ぎ となれば実況中継だけに目が離せない。
そもそもたまたま観ていた番組で偶然にも事件が同時進行となればまさに先が読めないスリリングさ満載で他のニュースはとたんに色あせちゃうくらいのインパクト。
司会者を信じて全財産を失ったという犯人の恨みが所詮自己責任なのは承知の上でも、格差社会の底辺で全てを賭けて失った惨めさと悔しさ等を察することができるのは、ジョージ・クルーニーが演じた司会者ゲイツがあまりにあまりな軽薄を絵に描いたような軽いノリの口先男だからかも。犯人の恋人のコメントもぶっとんでいて思わぬところで苦笑。
気の毒な犯人に同情できる要素をちりばめたことも作用し次第に周囲が共感をよんでいくようなストーリー展開は上手い。
危機的状況下で的確に指示を出すプロデューサーのパティ役ジュリアロバーツは監督のジョディ・フォスター像と重なってみえる。
次第に不自然な株価操作に気がつき奇妙な連帯感が生まれ物語はラストへ進んでいく。
展開が上手く行き過ぎる感も気になったけれどリアルタイム99分の実況を淀みなくみせてくれた。




2016/6/3 【 デッドプール 】

デッドプール」を観た。
マーベルコミックスの破天荒ヒーローを実写映画化。
世界120カ国でナンバーワンを記録、R指定映画としては史上最高記録を達成。そうこの映画はアメコミのヒーローものなのになんと15R指定。
オープニングクレジットで雑誌peopleに掲載されたのライアン・レイノルズ自身の写真と”I’m a hot chick”「世界1セクシーな男」だの”produced by asshats””directed by an overpaid tool”「監督はギャラが高いだけで役立たず」etc・・・ブラックジョークを敢えて爽やな♪Angel of the Morning の曲に乗せるギャップに苦笑。
噂のクソ無責任ヒーローは、おしゃべり好きで自己中で強すぎるけどテキトー過ぎるというありえないほど規格外。
観客に話し掛ける演出もさることながら、演じるライアン・レイノルズの自虐ネタや他の映画「X-MEN」「127時間」「96時間」etcなどをイジっているので知っているネタに関してはたまらなく楽しめる。
あの赤いコスチュームにたどりつくまでや‘deadpool’という名前が決まるまでの‘そもそも’の過程もしっかり描いているので初心者に優しい。
というのも、数ヶ月前に鑑賞した「
バッドマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」が、ファンにしかついていけないあまりに説明不足の展開だっただけに、アメコミに何の知識がなくても問題がない‘門戸が広い’というのは(但し15歳未満はおあずけ)単純に嬉しい。
時系列を前後させているのも効果あり。
ヒーローものならではの戦いやらのアクションに加えて、恋人とのロマンスあり、ホラー?あり、に大人のおふざけコメディがmixされているのも魅力。
メロウな「CARELESS WHISPER」♪by WHAM!の曲がこんなに効果的に使われたのも想定外でポイントup





2016/5/22 【 リリーのすべて 】

リリーのすべて」を観た。
原題は「The Danish girl」。
結婚から6年後にトランスジェンダーで変わっていく夫とそれを支える妻を描く。
主演のエディ・レッドメインは前年の「博士と彼女のセオリー」でホーキンス博士を演じてオスカーを受賞しているけれど、もしディカプリオの「レヴェナント」がなければ2年連続の受賞もあり得たのではないかと思うほど繊細な見事な演技だった。鏡の前で全裸になって体のラインを見るシーンなどは、えっここまでやるの?の領域。
妻ゲルダ役のアリシア・ヴィキャンデルは見事オスカー受賞ということで両者演技面では申し分ない。

でも・・・現在でも偏見はあるのだから1920年代においての苦悩は計り知れないし世界初の性別適合手術受けるリスクも現在とは比べようもないのは理解した上で、どうもこの主人公に感情移入できなかった。
主人公はリリーとして女性になる願望に目覚めてから女性のしぐさを研究したりおしゃれを楽しんだりデートしたりと自分の本能のまま行動していく。社会的な苦悩はあったとしても妻の葛藤を思いやる気持ちがどうも欠けているとしか思えなかった。
一方妻は自分が作ったきっかけで女性になることへ目覚めさせた負い目と愛する夫が消えていく幾重にも交差する思いを経てそれでも愛するゆえにサポートしていくと決める。献身的な支えは自己犠牲といえるものだけに、‘わが道を行く’主人公があまりに自分愛が強いのが対照的でなんかしっくりこなかった。
劇場はすすり泣きも聞こえたけれど私は泣けなかった。リリーとゲルダのどちらサイドで鑑賞するかによって意見が分かれそう。





2016/5/21 【 クーパー家の晩餐会 】
クーパー家の晩餐会」を観た。
豪華キャストによるアンサンブル群像劇。キャッチコピーは「年に1度の一族の晩餐会。どうかデザートまで、嘘がバレませんように」。
離婚を伏せて最後の一家団らんのためにこの1大イベントを成功させようとする完璧主義者の妻の下、アメリカ人にとっての“正しいクリスマスの過ごし方”が興味深い。
現実をカモフラージュして集まるのは、失業中の長男・不倫中の娘・万引きした叔母etc. 各自の嘘というか秘密に、姉妹の確執や母娘の確執など織り込み隠していたことが次々ばれて本音でぶつかり合っていく。
祖父(アラン・アーキン)とお気に入りのウェイトレス(アマンダ・セイフライド)との関係は微笑ましい。何故かこのアマンダ・セイフライトがまさかのラジー賞の最低助演女優賞にノミネートされていたけれど、もしそれを言うなら長女エレノア役のオリヴィア・ワイルドでしょ。キリスト教信者で共和党支持者の軍人に対するあの暴言も病院での暴走ぶりも規格外でドン引き。
この長女も含めて家族はキャラ的に感情移入しにくい面々がほとんどだった中、家族以外のメンバーで長女が空港で出会う軍人(ジェイク・レイシー)がかなりの好青年だし、それ以上にストライクだったのは万引きした叔母(マリサ・トメイ)を連行した寡黙な警察官を演じたアンソニー・マーキー。今後目が離せない。
それにしてもクリスマスディナーやプレゼントはもちろんだけれどkissがオープンなことや皆でクリスマスソングを歌い踊るってのがアメリカ流だって実感。ってか なんでみんなそろいも揃って踊れるの?お国柄かぁ。アメリカ人にはなれそうもない(^_^;)
日本では何故か2月から上映され順次全国公開。クリスマスシーズンにしなかったのは何故???





2016/5/13 【 アイアムアヒーロー 】
アイアムアヒーロー」を観た。
「ビッグコミックスピリッツ」で連載中の花沢健吾のベストセラーコミックを実写映画化。
ゾンビ映画ということでB級かとタカをくくっていたら、日本公開前に海外の映画祭で旋風をまきおこし受賞までしているとのこと。
冒頭の漫画家アシスタント仲間とのやりとりなどに、うだつの上がらない現実が描かれる。ここですっかり気を許して鑑賞していたので、英雄の彼女‘てっこ’のゾンビへの変貌シーンに、これはもしかしてホラーかとあまりの恐怖に凍り付いてしまった。このZQN(ゾキュン)化の後に終盤までこれでもかとZQNが大量発生するのだけれどここが一番怖かった。
その次の職場シーンでは漫画家アシスタント仲間のドランクドラゴンの塚地のおっとりしたキャラでのスプラッターはギャップがお見事。タクシーの中でのパニックはかなりスリリングで無事故無違反の運転手のZQNぶりはユーモラス。こうしてアウトレットモールにたどり着くまでの展開は息つく間もないくらいスピーディー。
ゾンビものではガンガン撃って撃退するのがお約束ながら主人公の英雄(大泉洋)が銃を持たない日本において趣味で猟銃所持の免許があるというのがミソ。
当初、街中で引き金を引くこともできなかった主人公が逃げる途中でたまたま出会った女子高生が感染者???という状況でも「君を守る」ことができるのかを、現実逃避的だったヒデオ→英雄→ヒーローという構図とうまくリンクさせていく。
人間同士の疑心暗鬼の要素も入れ、R15指定ということで容赦ない残虐さでグロい血どばっのシーンが続く。
ZQNが人間だった時の一番強い感情に縛られているというのも哀れで、ひとつひとつのZQNのクォリティはおそろしく高く、十把一絡げにしていないのは素晴らしい。





2016/4/30 【 レヴェナント:蘇えりし者 】
レヴェナント:蘇えりし者」を観た。
ディカプリオの悲願のアカデミー主演男優賞受賞作。
ここまでやるかというくらいの壮絶な役。熊に襲われ、瀕死で仲間から置き去りにされ、冬の川に流され、生の魚やレバーっぽい生肉にかぶりつき、馬ごと崖から落ち、馬の死体を寝袋にして寒さから身を守る。確かにお見事です。
ただでさえ厳しい極寒の撮影環境の中、よく頑張りました。歴代のアカデミーの中でもダントツの努力賞に値するかも。なんていうかひたすら参りました。
敢えて難を言わせてもらうなら、いくらなんでも生命力あり過ぎでしょ。実話をモチーフにしているのも驚きとはいえ、盛り過ぎ(^_^;) 映像は自然光のみを使い人工的な照明を排除したらしいけれど、この主人公のバイタリティというか蘇えりが人間離れしていて不自然でしょ。
奇跡のサバイバルをこれでもかこれでもかと描いた後は、復讐劇へと転じ、実際の撮影で鼻を折ったという程の体当たり肉弾戦の迫力もハンパない。
すごい映画だということはストレートに伝わってくるけれど許容限度を超したシーンが多くて156分スクリーンを見ているのが辛かった。
監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」に続き2年連続の監督賞で、カメラマンのエマニュエル・ルベツキにいたっては「ゼロ・グラビティ」「バードマンあるいは(無知が もたらす予期せぬ奇跡)」に続き3年連続の撮影賞ということで快挙。
実は個人的には「バードマン あるいは(無知が もたらす予期せぬ奇跡)」の良さが全くわからずアカデミーの作品賞自体を納得していないけれど、本作は良い意味で成果を出したので各3部門で受賞した3人の異才に拍手。




2016/4/19 【 スポットライト 世紀のスクープ 】
スポットライト 世紀のスクープ」を観た。
アカデミー賞作品賞受賞。昨年の受賞作「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は万人向けとは思えずちっとも面白くなかったけれど、本作のオスカー受賞も納得かというと少々言葉に詰まる。
カトリック聖職者による子どもたちへの性的虐待というスキャンダラスな内容ながら全体的にあまりに地味。
あくまでも過剰な演出は避け事実に忠実にという狙いなのでエンターテイメント性は低い。
ただただストレートに4人の記者が過去の関連記事や資料から地道に取材をし関係者に連絡を取って核心に近づいていく様子を描く。
地元ボストンっ子の4人の記者にひけをとらない存在感だったのがフロリダからやってきた新任局長。そもそもこの問題を提起した人物だし渋く静かながら強い佇まいにその有能さが伝わってくる。
タイトルの‘スポットライト’とは、ボストン・グローブ紙の独自調査に基づく特集記事欄のこと。
この記事が世の中に出るまでには、途中2001年の9.11テロ事件も起こり、社会的にも社内としても混沌としていたのを経ての20021月に全米を震撼させる記事が掲載され、まさに世紀のスクープ報道となった。
こーいう一途な正義感と最後までやりぬいた“スポットライト”取材チームの記者魂には敬服。派手さはないけれど見るべき作品。





2016/3/26 【 バッドマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 】
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」を観た。
前作のスーパーマン「マン・オブ・スティール」はLAで字幕なし鑑賞だったのでなんとな〜く観たカンジ(^_^;)だけだし、バッドマンは「ダークナイト」とAXNで放送中のTVドラマ「GOTHAM/ゴッサム」のみというこれまでのお付き合いがとっても浅い身にはわかり難い。
今更背景の説明の必要もないようなファン層をターゲットにしているとしか思えず、まるで一見さんお断りの常連さん向け作品。
バッドマンとスーパーマン以外になななんと‘ワンダーウーマン’なるお初のキャラの登場も「誰?」という謎のまま(^_^;)
スーパーマンの宿敵
レックス・ルーサーJr.役の金髪ロン毛のジェシーアイゼンバーグは、不自然にテンションが高くぺらぺらと早口でしゃべりまくる様子がウザくつかみどころがない。本作でのイメージを一新するラストのスキンヘッドでやっと馴染みの悪役キャラになった。
バッドマンとスーパーマンの母親の名前が両者の戦いで大きな鍵となるのもどうも説得力ないような。
ゴッサムシティ特有の暗鬱な世界観や2代ヒーローのビジュアルな映像は魅力的。




2016/3/20 【 オデッセイ

オデッセイ」を観た。
事故により一人火星に取り残されるという究極でサバイバルする主人公ワトニーをマットディモンが好演。
次に調査船が来るのは4年後で水もなく残された食料はわずか・・・絶望以外の何物でもない中、科学を武器に頭脳を駆使してハンパない行動力で難題をクリアしていく姿には魅せられる。
絶体絶命の大ピンチの時こそ人間の本性が表れるものだとしたら、ギャグをかましユーモアに溢れたキャラクターも別次元の頼りがいにも敬服。
仲間のクルーが残していったディスコ・ミュージックもストーリーとシンクロして功を奏している。
まさかこのサバイバル映画がこんなに明るいものだとは想像していなかったこともあって本当に味付けの上手さに感心。
試練を乗り越えようとする基盤が科学だからなんだか現実的かわからないながら説得力がある。
折れない心に元気がもらえるスーパーポジティブな作品。
ただ唯一アメリカのNASAと並んで描かれる世界最高の頭脳集団が中国というのはマーケットを意識したものだとしたらなんだかなぁ。ロシアじゃないなら昨年世界を驚かせたインドとかだったら良かったのに。





2016/3/13 【 スティーブ・ジョブス 】
スティーブ・ジョブズ」を観た。
スラムドッグ$ミリオネア127時間」のダニー・ボイル監督というから期待したのに・・・完璧に期待ハズレ。
主演はマイケル・ファスベンダー。同じタイトルの映画(アシュトン・カッチャー版)もあるし、亡くなったのが2011年と新しいしアップルのカリスマとしての記憶も新しいだけにステーブ・ジョブスの人生や関わりのある人たちについては今更説明も不要というスタンスで制作した映画なのかしらないけれど、さほど知識がない身には、登場人物の誰が誰なのかもわからないし、名前しか出てこないダニエル・コトキやガイ・カワサキに至ってはましてチンプンカンプンで一言で言えば不親切。
1984年のMacintosh発表会直前、88年のNeXT Cube発表会直前、98年のiMac発表会直前のドタバタした舞台裏を描いている。1984年はMacintoshが「ハロー」と言わないだので怒鳴っているし、1988年はアップルで追い出された経過でもめてるし、1998年はスタッフへの謝辞を言う言わないで責めてるし、各年代に絡む娘との関係性の変化も特筆すべきものはない。
スティーブ・ジョブズの片腕としてマーケティング担当者を演じたケイト・ウィンスレットがアカデミー助演女優賞でノミネートされたけれど、彼女の台詞からは仕事でもプライベートでも何に対してどう思っているのか伝わってこないのも含め総じてわかり難い。
アップルの知識がない方は予習が必要。





2016/3/1 【 ヘイトフルエイト 】
ヘイトフル・エイト」を観た。
猛吹雪の中のロッジに居合わせた8人による密室ミステリー。
全部で3時間近い長尺で6章構成になっている。3章で店にたどりついて以降は各自の駆け引きで事態は思わぬ方向にという全く予測のつかないノンストップ展開ながら、2章までの店に着くまでの駅馬車シーンがあまりに長いのが残念。
癖者揃いで何が真実で何が嘘なのかわからない怪しさ満点の会話の応酬に加え、タランティーノ監督らしい血どばっのバイオレンス色いっぱい。
ちょっとした会話から糸がほぐれていくような過程で南北戦争という時代ならではの思わぬ繋がりのある各自の背景も過去と現在を巻き戻りながら描いている。
舞台となっている「ミニーの紳士服飾店」の不味いコーヒー・シチュー・主のない椅子・メキシコ人の留守番等々 それぞれが重要な役割をもっていて伏せんがきちんと回収される展開は見事。
賞金稼ぎのサミュエル・L・ジャクソンの「リンカーンの手紙」が効果的なスパイスとなってくる。
どの登場人物も存在感たっぷりで見ごたえ十分な中、紅一点のお尋ね者ジェニファー・ジェイソ・リーの演技は圧巻でアカデミー助演女優賞にノミネートされたのも納得なだけにどーせならオスカー受って欲しかった。




2016/2/21 【  Xミッション 】
X-ミッション」を観た。
「世界トップアスリートによる、至上最もガチなアクション!」というだけあって、モトクロス、サーフィン、スノーボード、ウィングスーツフライング、ロッククライミングなど全てが、まぁとてもCGなしとは思えなく超超超人間離れしたアクションは本当にお見事。
休む間もなく仲間が一人また一人と脱落していくプロットが想定できるのでハラハラドキドキでもう怖くて正視できない。
FBI捜査官がアスリートチームによる犯罪集団に潜入するプロットにおいてその犯罪目的となっている8つの修練というのがどうもぼやけているのが難点。
多数のダイアモンドをを盗んでインド・ムンバイの貧民窟に撒き散らし、空飛ぶ現金輸送機から札束をメキシコの村の上空で解き放つなど、当初は貧しい地域へ向けた意図のある犯罪かとおもいきや、亡き活動家オザキが目指していた修養でそれは環境保全がどうのこうのだとかわかりにくい。
「オザキ8」が「フォースの噴出」「空の誕生」「大地の覚醒」「荒れ狂う水」「風の躍動」「氷の生命」「六命の極意」「究極の信頼」というものらしいけれどそれも観念的でさっぱり伝わってこない。
とってつけたようなストーリーが邪魔なのでただただアクションと自然の迫力を堪能するのが正しい鑑賞かも。








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