か行     99年夏以降 劇場で観た新作映画の感想です(基本的にビデオ・DVD鑑賞した作品は含みません)

カールじいさんの空飛ぶ家

鍵泥棒のメソッド 
崖の上のポニョ
陰日向に咲く
過去のない男

華氏911
 
風の前奏曲
悲しみが乾くまで
カフーを待ちわびて
カポーティ
亀も空を飛ぶ
鴨川ホルモー
かもめ食堂
カルテット!人生のオペラハウス 
渇き。
川の底からこんにちは
歓喜の歌
鑑定士と顔のない依頼人 
がんばれリウム
 
カンフー・ダンク!
歓楽通り 
 

キープ・クール
 
黄色い涙
紀元前1万年前
キサラギ
ギター弾きの恋 
キッチン・ストーリー
きっと、うまくいく 
キッド  
キッドナッパー 
君に読む物語
  
君のためなら千回でも
君の名は。 
キャストアウェイ
 
嫌われ松子の一生
桐島、部活やめるってよ
キャプテン・フィッリプス 
キャラバン
 
救命士  
凶悪 
教授のおかしな妄想殺人 
きれいなおかあさん 
96時間/レクイエム 
キンキーブーツ
キングダム・オブ・ヘブン
キング 罪の王

銀のエンゼル
 






クィーン
クィーン・オブ・ザ・ヴァンパイア
 
空気人形
クーパー家の晩餐会 
苦役列車 
クワイエットルームへようこそ
ゲゲゲの鬼太郎
ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌
グスコーブドリの伝記 
グッモーエビアン! 
グリーン・マイル
 
クラッシュ
グラディエーター
グラン・トリノ
グリーンディスティニー 
ぐるりのこと。
クレイジーハート 
クローバーフィールド/HAKAISHA 
グローリー/明日への行進 
結婚しようよ
ゲットアチャンス 
ゲド戦記
幻影師アイゼンハイム 

恋しくて

恋するベーカリー 
恋のロンドン狂騒曲 
幸福な食卓
声をかくす人 
コーヒー&シガレッツ 
コードネーム U.N.C.L.E.   
コーラス

ゴーストライター 
ゴールデンスランバー
告白
孤高のメス
こころの湯
 
GODZILLA ゴジラ 
呉清源 極みの棋譜
ことの終わり 
この素晴らしき世界
この道は母へとつづく
今宵、フィッツジェラルド劇場で
コンスタンティン





2016/10/1 【 君の名は 】

君の名は。」を観た。
今年の顔ともいえる新海誠監督の超話題作。
お互いの心と身体が入れ替わった高校生を主人公にした青春ファンタジーなのだけれど、千年に一度の彗星来訪を絡め、物語のスケールは宇宙規模なものへと昇華していく。
とにかく背景描写が圧倒的に美しく、写真をベースにデジタル技術を駆使して丹念に描かれたという背景は実写と見まごうほどにリアル。この世のものと思えないほど美しい彗星の映像とそれがもたらすギャップも心を掴む。
監督がこれまでのテイストとの一番の違いを「東日本大震災の影響」と言っているだけあって、本作では津波ではなく彗星来訪とした壊滅的被災をなんとか防げないものかとの強い思いが伝わってくる。
加えて本作が素晴らしいのは何と言っても‘日本’を前面に出したことも大きいような。夢のお告げを受けた女の子が、赤い組紐や日本の伝統文化「口噛み酒」や神社の御神体といったものを通し信仰を聞いてもがきながらも町を災害から守る。
果たして彗星の到来は?果たして2人の関係は?と全く先が読めない展開も良かった。
RADWIMPSの楽曲は映像とシンクロしていると評判だけど大ヒット曲♪君の前前前世から♪でさえ♪君の全全全世界から♪だとばかり思い込んでおりました(^_^;) ってことで歌詞の解読が追いつかない身としてはコメントする立場にないかなぁ。
大切なのは「忘れること」を忘れないように。





2016/6/28 【 教授のおかしな妄想殺人 】

教授のおかしな妄想殺人」を観た。
東部を舞台にした素敵な街並みもファッションも音楽もウディ・アレン色満載ではあるけれど、近年のウディ・アレン作品の中でこれはいまひとつピンとこなかった。
主人公の教授エイブは‘人生は無意味’と地位もあってモテるのになんだかダメダメ要素満載で対人関係にも疲れた中年男。
ホアキン・フェニックスは体重を15kgも増やして望んだというのは、無気力おじさん像に加えて、美女と野獣的な要素を強めた上で若いオネエちゃんに好意を寄せられるギャップを出したかったからなのか。
魅力的な女子学生エマ・ストーンがなんで惹かれていくのか恋は不思議。
犯罪を犯すことでネガティブからポジティブに変化を遂げるのは分かりやすいけれどブラックさがビミョウ。
それにしてもなんだかこねくりまわした感のある変な邦題。原題はシンプルに「IRRATIONAL MAN」。直訳で「非合理的な男」のほうがずっとマシ。





2016/5/21 【 クーパー家の晩餐会 】
クーパー家の晩餐会」を観た。
豪華キャストによるアンサンブル群像劇。キャッチコピーは「年に1度の一族の晩餐会。どうかデザートまで、嘘がバレませんように」。
離婚を伏せて最後の一家団らんのためにこの1大イベントを成功させようとする完璧主義者の妻の下、アメリカ人にとっての“正しいクリスマスの過ごし方”が興味深い。
現実をカモフラージュして集まるのは、失業中の長男・不倫中の娘・万引きした叔母etc. 各自の嘘というか秘密に、姉妹の確執や母娘の確執など織り込み隠していたことが次々ばれて本音でぶつかり合っていく。
祖父(アラン・アーキン)とお気に入りのウェイトレス(アマンダ・セイフライド)との関係は微笑ましい。何故かこのアマンダ・セイフライトがまさかのラジー賞の最低助演女優賞にノミネートされていたけれど、もしそれを言うなら長女エレノア役のオリヴィア・ワイルドでしょ。キリスト教信者で共和党支持者の軍人に対するあの暴言も病院での暴走ぶりも規格外でドン引き。
この長女も含めて家族はキャラ的に感情移入しにくい面々がほとんどだった中、家族以外のメンバーで長女が空港で出会う軍人(ジェイク・レイシー)がかなりの好青年だし、それ以上にストライクだったのは万引きした叔母(マリサ・トメイ)を連行した寡黙な警察官を演じたアンソニー・マーキー。今後目が離せない。
それにしてもクリスマスディナーやプレゼントはもちろんだけれどkissがオープンなことや皆でクリスマスソングを歌い踊るってのがアメリカ流だって実感。ってか なんでみんなそろいも揃って踊れるの?お国柄かぁ。アメリカ人にはなれそうもない(^_^;)
日本では何故か2月から上映され順次全国公開。クリスマスシーズンにしなかったのは何故???





2015/11/21 【 コードネーム U.N.C.L.E. 】

コードネーム U.N.C.L.E.」を観た。
1960年代に大人気を博したTVシリーズ「0011 ナポレオン・ソロ」を、ガイ・リッチー監督が映画化。
タイトルのU.N.C.L.E.とはUnited Network Command for Law and Enforcement=法執行のための連合網司令部。
CIAエージェントのナポレオン・ソロ(ヘンリー・カヴィル)と、KGBエージェントのイリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)の米ソ2人組みスパイコンビが大活躍。
ソロは高級スーツを着こなしプレイボーイでお調子者、片やイリヤはタートルネックがトレードマークで生真面目な努力型で怒りっぽいとキャラ分けが出来ていてこの2人の掛け合いが楽しい。ヒロインは鮮やかなファッションが似合ってチャーミング。
3人ともそれぞれ魅力あるのだけれどなんと一番印象に残ったのが悪役のヴィクトリア(エリザベス・デビッキ)だった。すんごい存在感でパリス・ヒルトン系のお高くとまった顔立ちをゴージャスにした感じでその冷たい美しさに目が釘づけ。エゴイズムの塊みたいな悪女にモノトーンのファッションが似合ってるったらない。これもしシリーズ化されてもこの悪女にもう会えないのは寂しい限り。
1960年のおしゃれなファッション・レトロなヴィンテージカー・美しい街並み・豪華なホテルとどこを切り取ってもラグジュアリーな世界観が楽しめる。
ラストで明かされるのが、この映画がU.N.C.L.E.の結成秘話を描いているということでこれが「0011ナポレオン・ソロ」に繋がっていく。





2015/1/24 【 96時間/レクイエム 】
96時間/レクイエム」を観た。原題は「Taken3」
リーアム・ニーソンってここんとこ、何かに追われながら真相を突き止めるみたいな似たイメージの役柄が多くて、ある意味予定調和。
今回は娘を助ける父親という設定なのはわかるけど、じゃ娘さえ助けられたら何でもアリなのかというくらい一般人の犠牲には目もくれない。
どんな絶体絶命にも不死身なのも、そもそもでITに長けている元CIAが勝手にスマホをいじられるほど不用心なのもまぁご都合主義。
フォレスト・ウィテカー演じるドッツラー警部はなかなか味があるものの証拠のベーグルって食べちゃっていいの???だし、きりがないくらいこーいうつっこみどころは全般にわたっている。
映画の本筋とはちがう次元でこれはこれで楽しめるからまっいいかっ。





2015/1/13 【 グローリー/明日への行進 】
グローリー/明日への行進」を観た。
正確には滞在先のアメリカでの鑑賞なので原題は「Selma」。セルマといってもピンとこないのは確かながらも邦題が「グローリー 明日への行進」と仰々しいのが気になる。
たまたまこの鑑賞の半月前にアトランタのキング牧師国立歴史地区にて公民権運動時代の活動の写真などを見学し、その際にアカデミー賞にノミネートもされている本作についても耳にしていたので、これはまさにタイムリーだった。
1965年アラバマ州セルマで起きた血の日曜日事件を題材に描いた実話。
人種隔離政策が徹底されたセルマで黒人たちの命懸けの大行進。
ただ歩くということがどれほどほど当時困難で大きな勇気ある行動だったのか、この時代が今からほんの50年前ということに今更ながらショックを受ける。
教会の爆破シーンから始まる冒頭がインパクトあった。
敢えてラストにキング牧師に襲い掛かる悲しい暗殺事件を描かなかったことは、権利関係を所持する遺族の意向が関係していたのもしれないけれど意外。
最近も人種差別による事件が繰り返されるのを聞くに付け、これは大きな1歩であることは間違いないながら根の深さにやりきれなさを感じた。




2014/8/3 【 GODZILLA  ゴジラ 】
GODZILLA ゴジラ」を観た。
主人公は日本で起こった原子力発電所の事故で、母を失ったフォード。それにしても原発が地震で倒壊ってまるで福島なので、冒頭からその直球ぶりに驚く。親とフォードのエピソードが良いので妻子のドラマは余分だったかもしれない。
ムートーの出現で日本から始まる各地のパニックは原爆・水爆から原発事故まで、延々と罪深い過ちを繰り返す人類への警告。ムートーは放射能を食べるだけでなく常に電磁パルスを放っているという設定も見逃せない。
現在進行の原発を絡めギャレス・エドワーズ監督が「21世紀版ゴジラ」を作ってくれた。ただの怪獣映画としての娯楽性にだけ逃げ込まずに、そこにある現実的な問題と正面から取り組んだ。日本映画として描けそうにもない原発・核・東日本大震災とリンクするものを絡め踏み込んだ点はすごいことなのかも。
最新VFXを駆使したパニックシーンはド迫力でハワイの大惨事はまるで東日本大震災の津波シーンを彷彿させる。次々に街が飲み込まれて破壊されるシーンは震災直後だったら直視できなかったかもしれない。続いてラスベガス・サンフランシスコと馴染み深い街での大暴れはそりゃもう破壊の極み。
ゴジラが全身を現して咆哮するシーンは本当に迫力がありこれぞ「ザ・ゴジラ」という感慨にふける。
あっラストにゴジラが静かに海に戻るのだけれど、あのサンフランシスコは高放射能エリアとなったので、、同じく放射能で生きているゴジラが摂取してから姿を消していてくれたこと願います。





2014/7/4 【 渇き。 】
渇き。」を観た。
過去「下妻物語」「嫌われ松子の一生」「パコと魔法の絵本」「告白」などでも、毎回強烈なビジュアルとぶっとんだ演出を成功させてきた中島哲也監督だから期待も大だったのに・・・・・今回はどーしちゃったの???というくらい脱力。
父親が失踪した娘を探す中で知った「品行方正だと思っていた娘の裏の顔」という興味を引くモチーフなだけに失速感も大きい。
これまで成功してきた原作をポップな色彩と派手な暴力で味付けしてみたものも、今回ばかりは不快でしかなく、刺激の強いフラッシュ映像もくどい。
内容がヤバすぎて映像化不可能といわれた原作「果てしなき渇き」はまだ少しは歪んだ登場人物に人間味があったような気もするけれど、映画ではポンと狂人を存在させていて感情移入が難しい。
父親の尋常じゃない目線の理由にドラッグが絡むからといって納得できるハズもなく・・・全体的に暴走気味。ドラッグありきの世界観はやっぱ難しいのかも。
とってつけたようなラストも消化不良。
加奈子がドラッグのメタファーという説には納得。





2014/2/19 【 鑑定士と顔のない依頼人 】
鑑定士と顔のない依頼人」を観た。
冒頭、主人公の世界一流の美術鑑定家である主人公ヴァージルの食事のシーンでの一種異様さに独自の世界に引き込まれる。
主役のジェフリーラッシュが周囲に関心がなく偏屈で潔癖症で超一流の世界に生きる偏った天才的鑑定士像を見事に演じた。
そーいう観る目のプロが見抜けなかったものとは・・・というスタンスが面白いのだけれど、どうもすっきり楽しまないのは、老齢の主人公に対して、相対する側が若く魅力的だということに加え、性善説どころか圧倒的な性悪説を説くようで、なんとも「果たしてこれで良いのか」というモヤっとしたものが残るからかもしれない。
冒頭のレストラン同様にラストのプラハの歯車だらけのコーヒーショップも独特な世界観を描いたのは効果的。
強引な展開とカラクリ人形の登場も唐突感が否めないながら、あの美術品の数々は繰り返し鑑賞して堪能したいかも。





2013/11/30 【 キャプテン・フィリップス 】
キャプテン・フィリップス」を観た。
2009年に、アメリカ船籍のコンテナ船、マークス・アラバマ号がシージャックされた事件がベースとなって船員の救出と引き換えに4日間にわたって海賊の人質となった船長の運命と、海軍特殊部隊ネイビーシールズによる救出作戦。
ソマリア沖の海賊問題は今も現在進行中という意味でもその背景に何があるのか、何故漁師が海賊になるのかの裏事情も描かれている。
たまたま貧しいソマリアで生まれたための選択に「他に道はあるのでは」と言えてしまうのは富める国に生まれた者だからの言葉。「アメリカ国民なら」のその答えが全て。結局善悪や道徳を言えるのはその余裕があるということで、ソマリアの漁村で生きるには、選択肢がないという対極の立場の両者の事情を描くことで深みを与えている。
キャプテンを演じたトム・ハンクスの慟哭の演技もハンパないながら、ソマリア海賊を演じた面々の迫力が素晴らしい。特にリーダーのムセ役(バーカッド・アブディ)はリアリティさに圧倒される。なななんとこれが映画デビューというから驚く。実際にソマリア出身とのことなので命懸けの海賊を全霊で訴えた功績も大きく全編を通してスリリングで緊張感があふれている。アカデミー賞の助演男優賞ノミネートおめでとう!!!





2013/11/28 【 きっと、うまくいく 】

きっと、うまくいく」を観た。
2010年インドアカデミー賞史上最多16部門独占しインド映画歴代興収No.1達成作。
スピルバーグが3回観るほど熱狂し、世界各地でリメイク決定だとか。評判の高さは気になっていたけれど地元での上映はなく、スクリーンでの鑑賞をあきらめかけていたら六本木シネマートで上映に間に合った。
世界中が感動したというだけあって、まちがいなくここ数年のbestムービー。
原題「3idiots」のまさに’3バカトリオのエリート大学生ランチョー・ファルハーン・ラージュにぐいぐい引き込まれて笑って泣いて観終わった時にはスピルバーグじゃないけれどまた観たくなる作品。
エリートエンジニアのタマゴが通う超難関理系大学を舞台に、ミステリー仕立ての10年後を同時に描く。
インドの学歴競争、格差社会、新入生の洗礼、親からのプレッシャー、花嫁の持参金、ボリウッドならではの踊りと歌、ラダックの湖etcどれもこれもインドならでは。
社会を厳しく描きながらユーモアとAal izz well=All is wellのおまじないで誰もが幸せになれる。
主役のランチョーを演じたアーミル・カーンは44歳で24歳の役を見事に演じきった。愛すべき3バカトリオとそれを囲む脇役の個性派揃いの面々も素晴らしい。
170分間(3時間弱)は飽きることもダレルこともなく過ぎて沢山のパワーをもらった。この映画に出会えて本当に良かった。
後日DVDも購入。





2013/11/4 【 凶悪 】

凶悪」を観た。
死刑囚の告発をもとに、未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。
凄惨な事件をおこしていくピエール瀧と影の首謀者リリーフランキーを中心にした悪行三昧がハンパない。
バレなくて金になるならという損得でしか世界を捉ていなく、この薄っぺらい価値観が的確に薄気味悪い現実の悪の本質を狙っている。
老人虐待シーンはハイテンションで不謹慎ながらまるでパーティー気分で進行。
ピエール瀧のキャスティングは申し分なく「ぶっこむ」という台詞が全編に効いていてインパクト大。被害者老人を演じたジジ・ぶぅが実年齢56歳とは思えない見事な迫真の演技でリアルにぶっこまれていた。
身内だけは大事にするというアットホーム的なシーンを交差させるのも、記者(山田孝之)の家庭の事情を盛り込んだのも、悪は日々の世界のすぐ隣に地続きの空間にいて、自分たちも必ずしも善サイドではないというメッセージと思われる。が、家庭の事情がちょっと説明的というか冗長すぎてあまりにくどかったのが残念。





2013/4/23 【 カルテット!人生のオペラハウス 】
カルテット!人生のオペラハウス」を観た。
かの名優ダスティン・ホフマンが75歳にしての初監督作。
TV番組でこの映画のモデルとなったミラノに実在する音楽家のための老人ホーム「音楽家のための憩いの家」が紹介されていた。そこでの‘見た目フツウ’のご老人達がバリバリの現役かと思うような美声で歌っていたりする様子に、プロの音楽家が最期まで自らの尊厳を保ち誇りを持って生活していることに感銘を受けた。
ダスティン・ホフマンもまさにここから「映画を作るならいまでしょう」のインスピレーションを得たというから期待大。
映画では舞台をイギリスに移し、英国の演技派俳優たち、本物のミュージシャンたちが豪華に集結している。
チラシでは「近々行われるコンサートが成功しなければ老人ホームがつぶれちゃう」とあったのだけれど、優雅な暮らしぶりばかりが優先していて存続にかけての危機感はあまり描かれていなかった。
確執のあった人間関係の気持ちの変化についても、アレレいつの間に?って流れで説得力に欠ける。
コメディタッチという点でも個々の味のあるキャラは活かされていたけれど、会話自体それほど面白くなかった。
コンサートは本物だけに素晴らしいものの・・・肝心の伝説の四重奏(カルテット)シーンは本来一番の見せ場となるはずが肩すかし。吹き替えでも良いから演出なんとかならなかったものか。
というわけで、ほのぼの系で良い材料がそろっているのにどうも詰めが甘いような。
エンドクレジットでの出演者の若い頃の写真を映し出すサプライズは監督の優しい目線も伝わってきて楽しめた。




2013/3/22 【 声をかくす人 】
「声をかくす人」を観た。
ロバートレッドフォード監督がリンカーン暗殺事件に関わったとしてアメリカで初めて死刑になった女性とその弁護士を通じて、民間人が軍法会議で裁かれ理不尽な扱いを受けた暗部を描く。
有罪か無罪かが問題ではなく、公平に裁かれたかどうかに重点を置いている。
母として息子が絡む引き合いに応じる証言をしないという意味で「声をかくす」という邦題はわからないでもないけれど原題は、「THE CONSPIRATOR (陰謀を企む人・共謀者)」なので、まるで正反対なニュアンスになっている。
彼女の台詞にあるようにこの弁護士の彼女を見る目が当初はいかにも敵対する人々と同じだったのが、次第にまさに身を挺して孤立無援の戦いに挑んでいく。
それにしても被告を無罪にすれば世間を敵に回し有罪にすれば弁護能力を問われるという四面楚歌状態で、いくら刑事事件における基本的な弁護士のあり方を説かれたとしてもこの時代背景でよく弁護を引き受けたもの。
後日談としてこの弁護士はその後ワシントン・ポスト紙の初代社会部部長になったという。そりゃそうだよね。こんな経験しちゃったらもう弁護士なんてやってらんないよね。
これがきっかけで改善された点はあるにしても国家の力に流される構図は現代でも起こり得るってことを声をかくすことなく語りかけている。




2012/1/21 【 グッモーエビアン! 】
グッモーエビアン!」を観た。
冒頭の「あなたが生まれたとき あなたは泣いて まわりはみんな笑っていたでしょうだからあなたが死ぬときは まわりが泣いて あなたが笑っているような そういう人生を歩みなさい」という言葉にぐっときた。
ヤグ(大泉洋)とアキ(麻生久美子)は事実婚しているらしいバカップルで、アキの娘ハツキを中心に家族を描く。
思春期の娘を演じたハツキがストレートに心情をぶつけられるのと反対で、おっとりして内に悩みをかかえている親友トモちゃんを演じた能年玲奈がとても良い。
麻生久美子のはじけ具合は自然体なのに、ヤグは大泉洋の本来のキャラを生かしたものながらやり過ぎ感がありいくら自由人といってもちょい鼻についた。
なんとなく全体的に説明的な台詞が多く説教くさいかも。
ラストのライブシーンは確かに楽しめるのだけれどTHE BLUE HEARTS」のものまねを見ているような気分もしなくもない。
これに比較するのもナンだけれど改めてバンドが登場する映画「フィッシュストーリー」の完成度の高さを実感。
タイトルは「グッドモーニング、エブリワン」をネイティヴ風の発音にしたもの。




2012/1/20 【 恋のロンドン狂騒曲 】
恋のロンドン狂騒曲」を観た。
ウディ・アレンがロンドンを舞台に老夫婦と、その娘夫婦の2組のカップルを軸に、いい大人たちが恋の幻想に振り回される様子を描く。それぞれ新しい恋に向けて現在の関係を解消していく先にあったものとは何だったのでしょう?
アンソニー・ホプキンス・アントニオ・バンデラス・ナオミ・ワッツetcとキャストが豪華。
ラブコメとしてかなり期待したのだけれど、これが予想に反してつまらなかった。若いオネエちゃんに走るにしても元妻への認識が甘過ぎる身勝手老人をよりによってあのレクター博士が演じちゃうところがツボなんだろうけどなんだかねぇ。娘は密かにあこがれるボスのこと勝手に妄想しているし、娘の旦那の売れない作家の自意識の甘さはそれ以上だし、それにほだされる女も女で、みんなそれぞれ墓穴ほっていく中で、意外な人物がちゃっかり良いポジションを確保するっていうところにウディアレンのシニカルな視点を感じるけれど、どうにもこうにも皆愚かなほど自己中でどうにも感情移入できなかった




2012/1/9 【 鍵泥棒のメソッド 】

鍵泥棒のメソッド」を観た。
几帳面なコンドウ(香川照之)、ズボラな桜井(堺雅人)、感情表現が苦手な婚活中の香苗(広末涼子)というちょっとズレ気味の3人が出会うことで始まった予測不可の物語。
ダメ男ながら根は良い人っていう境雅人も、無表情で「健康で、努力家の方であれば。」という広末涼子もはまり役だけれど、何と言っても記憶をなくす前と後でまったくの別人に変身する男を怪演した香川照之に尽きる。
「胸がキュン」というのもミソで実はラブストーリーとしても楽しめる。この先を読めない展開はかなり良いのだけれど、役名の水嶋香苗が木嶋佳苗に似ているだけに最後に更にもうひとひねりあると思ったのは私だけ?





2012/10/1 【 桐島、部活やめるってよ 】
桐島、部活やめるってよ」を観た。
学校のカリスマの人気者桐島君が、部活を辞めるという噂が出た金曜日を起点に、同じ時間を何人ものそれぞれの視点で描く。これは「バンテージポイント」などで活かされていたもので結構好きな手法なのだけれど・・・。この映画に関しては視点を変えた効果はさほと感じられなかった。
学校のスター桐島の取り巻きという所謂人気者グループとそれ以外という暗に引かれた優劣・女子同志のチクチクした衝突・体育会系の上下関係etcここで描かれているものは確かにリアリティがある。といってもそれが面白いかというと話は別で内容がただただ退屈にしか思えなかった。
桐島に振り回されたり熱くなる生徒の中でその流れに属しない我が道を行く野球部のキャプテンの淡々としたキャラが意外にほっとさせられた。




2012/7/22 【 苦役列車 】
苦役列車」を観た。第144回芥川賞を受賞した西村賢太の小説の映画化。
まさに私小説という西村賢太そのものを映す主人公の北町貫多はプライドが高く卑屈で被害妄想で自堕落で自己中でホント迷惑な存在。近くにいたらかかわりあいたくないのだけどその露骨なストレートさに目が離せなく,気が付くと西村賢太の小説を読みまくっていた。最近はマスコミの露出度も増えて穏やかな笑顔を見る機会が多いけれど深く関わったらやばいってことまで全部私小説で吐露しちゃっているのでそのギャップがまた興味深い。
なぜこの貫多がこうも気になってしかたないのかというとその圧倒的な孤独感や疎外感と同時に人とのかかわりを強く求めているその人間臭さに共感できるからかもしれない。
この面倒な人格を森山未来が見事に演じている。原作にない本屋の店員演じた前田敦子が話題となっているけれど今回脇役で印象深かったのは、カラオケ自慢の高橋岩男役のマキタスポーツ。この人の芸達者なこと!!キーパーソンだしこの映画のスパイスとして絶妙。




2012/7/14 【 グスコーブドリの伝記 】
グスコーブドリの伝記」を観た。
宮沢賢治の童話を映画化したアニメーション。映像は美しいし主人公ブドリと妹のネリもかわいいし・・・と、宮沢賢治の桃源郷のような世界観に酔えるのは前半30分程度のみ。
当初このテーマと思われたのは兄妹の絆だったのだけれどいつの間にかそっちは自然消滅???いつの間にかテーマは環境へ???というのも中途半端。
どうやら原作では大人になったネリが登場するらしいのだけれど本作でネリのその後はあいまいなまま。そもそもネリをさらった謎の男コトリは物語のカギを握る存在で時折ブドリの前に現れるのだけれど正体は謎のまま。ここがやっぱり消化不良の一番の原因かも。
「銀河鉄道の夜」を映画化した杉井ギサブロー監督と、キャラクター原案担当のますむら・ひろしのコンビが復活ということで期待していたんだけれど観客にゆだねて察しろというにはあまりにも不親切。




2012/4/6 【 ゴーストライター 】
ゴーストライター」を観た。
元英国首相の自叙伝の代筆者=ゴーストライターを依頼された主人公(ユアン・マクレガー)が、前任者のライターの不可解な死の謎から国家をゆるがす秘密に迫っていくというサスペンス。
ポランスキー監督ならではの深くダークな映像美が堪能できる。珍しいのは「君は誰だね」の問いにも「ゴーストです」と答えるように主人公に名前がない点。そのゴーストライターの主人公が素人探偵となって真相にせまっていく様子がスリリングに描かれる。あやしいといえばあやしい人だらけだし、カーナビに誘導されるシーンやメモの手渡しのシーンなどドキドキ感もあってなかなか良いにもかかわらず、観終わってどうにもモヤッとした感じ。
結局「だから何がどーだったか」がなんだかよくわからない。謎が謎のままで腑に落ちないままなので後味がイマイチ。




2010/7/28 【 告白 】
告白」を観た。
2009年本屋大賞に輝いた湊かなえの同名ベストセラー小説を映画化。先を読むのがもったいないほど引き込まれた原作+独創的な映像と大胆な演出によるもの中島哲也監督ということで期待度マックス。
冒頭の教室のシーンでほとんど誰も話を聞いていなく自分勝手なことをしていた生徒達が次第に静まり返っていくそのシャープな空気感ったらすすすごぃ!それだけにラストの体育館の2人の対峙シーンのリアリティのなさが残念。でも、中島監督が与えたという原作にはない台詞は効果的だったような。
全体的に極めて原作に忠実ながらも映画はぐっと血なまぐさいシーンが多くこの生理的恐怖はある意味ホラーに通じるかも。なぜこんな事件が起きてしまったのかなぜこんなつかみどころのない子供達なのかを母親との関係から説得力をもってあぶりだしている。
憎しみや復讐といった人間の暗部がテーマなので晴れやかな後味とは程遠いけれど、それにもかかわらずテンポ良く色濃くスタイリッシュな音楽と共に進行していく映像は満足度が高い。




2010/7/10 【 クロッシング 】
クロッシング」を観た。
本作は、脱北者に冷淡だったノムヒョン政権下で危険を冒しながら極秘裏に撮影され、イ・ミョウンバク大統領に政権交代した後、20086月ようやく韓国で公開し、ついに2010年に待望の日本公開に至ったもので100人近い脱北者への取材を基にしたという。
あまりに救いようのない北朝鮮の実態に近いものや脱北者の味わう苦難の数々を描いたことも話題になっていたので、実は鑑賞するかに迷いがあった。悲惨な史実を映画で観る時にどこかで過去となったことに救われることも少なくないけれど、今回は現在進行ing形というのがあまりにヘヴィなのよね。同じように感じていたという方からのお誘いがあって鑑賞に至った。
これまでも北朝鮮の生活については報道等で目にすることもあったけれど、それにしても生きること自体が困難な生々しさに言葉を失う。この国をなんとか出来ないものでしょうか。
繰り返し使われる効果的な雨のシーンは、どんなに明るい人でも、寂しかったり、悔しかったり、辛かったり、人生の起点を表現する監督の人生観を表現し、また大変な思いをする主人公にいつでも空(神)から降り注ぐ雨があることを表現したものだという。砂漠の映像はあまりにも美しく残酷。




2010/6/12 【 クレイジーハート 】
TOHOシネマズシャンテにて「クレイジー・ハート」を観た。
アカデミー賞で主演男優賞(ジェフ・ブリッジス)と主題歌賞の2部門受賞作品。
かつての栄光にすがる落ち目のもう若くはない主人公の再生っていう意味ではミッキー・ロークの「レスラー」に通じるものがあって、誰でもその気になれば人生を立て直すことができるっていう応援歌にはなってはいるものの・・・・・
どん底を経験したからこそ生まれた‘鍵’となる曲が、カントリー好きには最高かもしれないけれど・・・良い歌詞ながらも大感動とまではいかなかったのがネック。ジェフ・ブリッジスとコリン・ファレルは実際に歌声を披露していて確かに上手なのも評価高い一因なのかもしれないけれど、プロレスと違って音楽って感性に訴えかけるものだからそーいう意味では難しいわねぇ。とやっぱり個人的には「レスラー」ほどインパクトなかったような。
意外にも心残りを感じるようなちょっとほろ苦いハッピーエンドのラストは賛否両論かもしれないながら もしかしたら最も現実的なのかも。




2010/6/11 【 孤高のメス 】
孤高のメス」を観た。
07年に出版され累計90万部を超えるベストセラーとなった同名小説を映画化。脳死肝移植というタブーに挑む1人の医師の信念を描いた医療ドラマ。思い切り正統派人間ドラマを真正面から描いている。
看護婦が「美しい」と表現した主人公当麻(堤真一)のその見事な手際の良さも印象的で臓器もきっちり映す手術シーンは順天堂医学部の完全協力があったそうで嘘っぽさを感じさせず見ごたえある。
看護婦(夏川結衣)の視点から当時の日記により20年前を回想するという手法で、当麻の仕事ぶりに触発されこの看護婦自身が仕事に対してポジティブになっていくというのがリアリティをもって描かれ、1989年版‘赤ひげ先生’当麻を鮮明に浮き彫りにしていく。
この当時法が未整備でタブーとされた脳死肝移植も ‘患者の命を最優先’であれば淡々と挑むのみ という医療のかかえる問題に警鐘をならす直球の社会派ドラマだった。




2010/6/6 【 川の底からこんにちは 】
川の底からこんにちは」を観た。
都会で働くOLが実家の家業‘しじみ工場’を継ぐことを余議なくされる。まぁよく聞く話ではあるけれど、この主人公のキャラが鍵。口癖の「しょ〜がない、大した女じゃないし、どーせ中の下だし」が、このキャラをわかりや〜すく表している。まるで上昇思考とは縁遠い主人公だけにどう対応していくか興味が持たれる。
結局主人公がこれまでの自分を反省し変わっていくというありがちなサクセスストーリーではないのがミソ。あくまでダメ人間の自分を受け入れそのまま‘開き直り’で「頑張るしかない」となることがある意味自然な説得力を持っている。
独特のユーモアもちりばめられていてクスクス。冒頭の腸内洗浄と実家での汲み取り肥料ってリンクしているのだろうけれどちょっとわかり難かった。
主人公を実力派の満島ひかりが演じているのも魅力ながら、まぁ唯一の難点は「中の下」が全く説得力ないほど可愛いこと。しじみ工場のおばちゃん達は納得したけれど「どーせ私たちは中の下」もそのカワイイ顔には言われたくないって気がしちゃうけど(-_-;)




2010/4/18 【 ゴールデンスランバー 】
ゴールデンスランバー」を観た。
「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」に続き伊坂作品を中村義洋監督が映画化。脇を固める濱田岳・大森南朋・渋川清彦のお馴染みメンバー出演もうれしい。
首相暗殺の濡れ衣を着せられた宅配ドライバー青柳(堺雅人)の決死の逃亡劇。
今回は何故1市民がスケープゴードに仕立てられたのかその事情がどうもなんだかよくわからないままだったのが消化不良で逃亡劇のサスペンスとしては疑問が残る残念な部分もあったけれど、前記の2作品同様にラストのラストまでパズルが合わさっていくような面白さも健在。
伊坂作品には多い学生の描写に今回は70年代のCMソングや「よくできました」のスタンプetc懐かしいアイテムも効果的に加わりノスタルジックな気分にも浸れるあたりがポイント。
現在と過去を交差させながら伏線をめぐらしちゃんとオチもあるあたりもさすが。




2010/3/30 【 恋するベーカリー 】

エア・カナダの機中にて「恋するベーカリー」を観た。
それにしても原題「It's Complicated」がどーしてこういうセンスない邦題になっちゃうんだろ。ベーカリーの経営者が主人公と言ってもそれが重要とは思えないしぃ。登場人物が50〜60代ということからもComplicatedな人間関係と経験ってことを強調した方が良いのに。
メリル・ストリープ、アレック・ボールドウィン、スティーブ・マーティンが主要キャストの本作は熟年者のラブコメとしてかなりあけすけながらも、がっついていない分「セックス・アンド・ザ・シティ」ほどの品のなさでもなくセーフ。
老いを感じながらも三角関係を恨み辛みや罪悪感ではなく純粋に楽しむというのも歳を重ねたからこそ生まれた余裕かも。コメディ色の強いスティーブ・マーティンより実生活ではドロドロのイメージあるアレック・ボールドウィンが笑いをとってくれた。
それにしても若いおネエちゃんとの浮気で破局した元夫の浮気相手になるっていうのはある意味‘かたき討ち’ の要素もあってかメリル・ストリープがなんとも楽しそうだった()





2009/12/11 【 カールじいさんの空飛ぶ家 】

ディズニー・ピクサーのアニメ「カールじいさんの空飛ぶ家」を観た。
同時上映の短編「晴れ ときどき くもり」は、雲が産み出す色々な赤ちゃんをコウノトリが運ぶという話でクスクス笑える和み系。
そして続いて始まった本編は冒頭の10分で家が浮く前のカールじいさんが妻エリーと子供の頃に出会ってから共に過ごしやがて妻を見送り1人残されるまでを 一切の台詞もなく描ききっている。この台詞のない走馬灯のような約10分の映像にジ〜ンとなってしまう。
いくらカールじいさんが偏屈そうでも少年カールが重なってしまって感情移入しまくり。妻との思い出がつまった我家を出るくらいないならと家に風船をつけて冒険に出るということ自体が切なくて。
特筆すべきはカラフルな風船をつけた空飛ぶ家の映像がとってもとっても印象的に描かれていること。加えてまぼろしの鳥をめぐっての探検家とのファイトに登場するワンチャン達を描くにあたって犬の習性をここまで観察できているとはたいしたもの。
妻を失った喪失感を乗り越えたカールじいさんは力強い。大事なのは決して思い出の詰まったモノじゃないってのはとても教訓に!!あの空飛ぶ家がラストに落ち着く先のドラマチックさもうれしい。





2009/12/1 【 空気人形 】

空気人形」を観た。
ラブドール登場といえば今年観た中で「ラースとその彼女」があった。あちらはラブドールを取り巻く人々を描いていたけれど、今作はそのラブドールからの視点で描いている。
この人形を演じたのが韓国人女優ペ・ドゥナ。出演作「リンダ リンダ リンダ」ではさほど印象的でもなかったけれど、本作での存在感といったらまさに人形と言えるモデル体型といい無垢な表情といい他にこの役を演じられる女優はいないのではというくらいのはまり役だった。
その人形と対照的に描かれているのが都会で取り残されたような人々。その中で人形の持ち主(板尾創路)が、人形が人形でなくなったと知った時の「面倒くさい」という台詞は予想外で驚いてしまったけれど、孤独だけれど煩わしい関わりを嫌う人々の本音を的確に表していて妙にリアルで印象的。
多分この映画のテーマに沿っていると思われる老人の詩と、人形が心を寄せる青年像(ARATA)が共に抽象的でよく伝わらなかったのが残念。青年が何気なく言った「自分も同じようなものだ」という言葉の末路についても自然の流れというには抵抗がある。
人間と人形の差を‘燃えるゴミ’‘燃えないゴミ’で分けちゃうあたりがシュール。





2009/5/29 【 グラン・トリノ 】

監督・主演がクリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」を観た。
本作で俳優業のリタイヤということで、ラストにふさわしい素晴らしい作品だった。
イーストウッド演じるウォルト・コワルスキーは朝鮮戦争に行き、フォードの工場で働き、いまは年金暮らしをしている。最初毛嫌いしていたお隣のモン族の少年とかかわっていく。
白人vs移民・フォードvsトヨタという象徴的な偏見や差別感を敢えて出し誰にも媚びない姿に今は失われつつある古きアメリカの魂を描く。これに通じるのが信頼に裏打ちされた友人達との悪口の応酬の会話。優しくて誰にでも好かれるタイプと対極なのに偏屈な頑固ジジイの気骨にぐいぐい引き込まれていく。終わりが見えない暴力に未来ある少年がさらされていることを直視し鉄拳を振り下ろすようなウォルトはカッコ良すぎてただただ敬服。
脱線するかもだけれど、実は15年ほど前に知人が口論の末にアメリカの退役軍人に撃たれ事件となった。アメリカの退役軍人を怒らせたらコワい。
タイトルの「グラン・トリノ」はウォルトが40年間勤務したフォード社の名車。そのカッコ良さは主人公の姿と重なる。





2009/5/18 【 カフーを待ちわびて 】
カフーを待ちわびて」を観た。
1回日本ラブストーリー大賞を受賞した小説を映画化。
「カフー」とは沖縄の方言で‘しあわせ’‘良い知らせ’という意味で、主人公の愛犬の名前も「カフー」。
沖縄の離島を舞台にの〜んびりしたなんともファンタジックなラブストーリーを島が抱える問題も絡めて描く。
不器用で純朴な主人公をさらっと演じている玉山鉄二がとってもナチュラル。方言がまた素朴さをかもし出す中、特に字幕がないと全くわからないおばあの方言が強烈。ふわっとした幸福感につつまれるような優しい映画。
それにしても・・・「60歳のラブレター」の原田美枝子の富良野のシーンもそうだったけど、ここぞ というシーンではやっぱ女性は白い衣装なのね。この作品ではヒロインが登場シーンの白い衣装がとっても印象的。
モノクロの画面にブルーの字のエンドロール+その後を描いたカラーのエピローグの色彩の変化も効果抜群。





2009/5/5 【 鴨川ホルモー 】
鴨川ホルモー」を観た。
京都に住む大学生が「ゲロンチョリー・グェゲボー・フギュルッパ・パゴンチョリーetc」の意味不明の『オニ語』を言いながらお独特のポーズで対戦するという・・・オニ?ん〜この発想は何なんでしょうねぇ・・・なんというか おバカ映画。大体「ホルモー」って何? 
という訳で観る人を選ぶかなぁと思いきや、京都市内の名所やらお祭りやらのシーンが満載な上に、いかにものボロい大学寮(京都大の現存で日本最古の学生寮とされる吉田寮)やレトロなアパートや、趣ある居酒屋「べろべろばあ」でのサークルのコンパの雰囲気があまりに懐かしくてなんだか胸をくすぐられた。くだらないことにムキになるこころになんか通じるものがあるのよね。
「アヒルと鴨の・・」「フィッシュストーリー」に続き今回もヘタレ大学生役として濱田岳が好演。
何故に大木凡人?何故にちょんまげ?と小ネタがちりばめられ、発想もやっていることもクダラナイんだけれど・・・この面々が憎めない。ラストは「アビーロード風」でなんとも青春って感じ。




2008/10/4 【 崖の上のポニョ 】 

崖の上のポニョ」観た。
ジブリ映画は「ゲド戦記」で失望し、「ハウルの動く城」は声優に超苦手な人がキャステングされていたので未見。今回も声優陣については不満の声をよく聞くが、ポニョの父親のフジモトの所ジョージがさすがにヒドイがそれ以外はそれほど気にならなかった。
CGなしの手作業という絵は海の中の浮遊感とかポニョのぽにょぽにょ感?とかお見事というしかない。誰にもマネができないさすが宮崎駿の世界。
ファンタジーだしつっこみは野暮かとも思うのだけれど、ポニョの両親の正体とか父親が作っている水とかポニョの存在についても説明が無さすぎ。世界のバランスとか魔法の力とかの説得力がどうも欠けているような。水没した町には悲壮感はなくあくまで神秘的・・・これは対象を大人ではなくあくまで子供にしていると言う宮崎駿の意図した通りの子供の為の映画。





2008/9/7 【 ぐるりのこと。 】
「ハッシュ!」から6年振りの橋口亮輔監督の「ぐるりのこと。」を観た。
監督自身が前作の後にうつ病になっていたそうで、その経験で本作が生まれたらしい。うつ病になった妻と支える夫の10年を描く。
しっかり者で「ちゃんとしなくちゃ」型の妻を支える夫(リリ-フランキー)が飄々としてなんだか頼りなさそうなところが面白い。
夫の法廷画家という仕事場である法廷シーンでの、連続幼女誘拐殺人事件・オウム地下鉄サリン事件・音羽幼女殺害事件・池田小児童殺傷事件の重大事件の被告と犯罪被害者の関係者などをはりつめた緊張感でくっきりと描く。
これらの犯罪の関係者や傷ついた人々と同じ月日の中で病んだ妻に加えてバブル時代から崩壊後まで時代を象徴するような不動産屋の兄夫婦も描くという手法が冴えている。
涙と鼻水でボロボロになりながらの妻を受け止める夫を描く雨の日のシーンは演技とは思えず圧巻。




2008/8/22 【 カンフー・ダンク! 】
カンフー・ダンク!」を観た。
主演はレンタルで鑑賞した「頭文字D」に出演していたジェイ・チュウ。
とは言ってもあまりピンとこなかったけれど、このジェイ・チュウって実はアジアの天才シンガーソングライターということでミラクルが付くスーパースターらしい。
この作品ではなんか冴えない天然ボケキャラなのがなんか好印象。脇を囲むバスケメンバーがイケメン集合だけに、なんかほっとするキャラってことで・・・() 
カンフーとバスケの融合ってことで、アクションは大満足。
悪者はこれでもかと分かりやすく描く演出はクスクス笑える範囲ながら、カンフー師匠の荒唐無稽な登場や反則相手に返す反則のえげつさやいつの間にかチェンジしているユニフォームetc・・・やり過ぎ感も(-_-;)。加えてテーマがあまりにもあれもこれも盛り込みし過ぎた感は残った。
主人公を見出すホームレス役をエリック・ツァンが演じていたのがサプライズ。「インファナル」のマフィアのボスとは違った人情を前面に出していて二人のディナーシーンは大好き。
既に続編が決まっているということだけれどよりバスケのルールにより副ったものになっていることに期待。




2008/8/8 【 ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 】
昨年の「ゲゲゲの鬼太郎」から1年経って、2作目「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」を観た。
前回の最大の不満は後半からSFアクションになった点だったけれど、今回も怨霊の塊がまるでトランスフォーマーにでも出てきてもおかしくないような‘がい骨ロボット’になってしまったのにはがっかり。
‘ウロコ’の描き方もぬるい。もっとキモク背筋がざわぁ〜っとするくらいじゃなきゃ。それでも‘濡れ女’の恨みを軸にしたストーリー展開は良かった。演じた寺島しのぶはイメージ的にもピッタリで‘蛇骨女’は佐野史郎だと気づかないほどで感心した反面、大御所緒方拳の‘ぬらりひょん’のインパクトがなかったような。
本木克英監督は前作と同じなので、前作カラーと似たようになったのは仕方ないことかもしれないけれど、3作目はこのオリジナルメンバーのキャステングはそのままに、もっとおどろおどろしく描いて欲しい。




2008/6/12 【 君のためなら千回でも 】

君のためなら千回でも」を観た。

観終わって動けなくなるほどの映画は年に何本もないけれどこれはその貴重な1本。なんて深い作品なんだろう。この映画を振り返る度に胸がつまってくる。
原題は「The Kite Runner」で凧を走らせる者。これは主人公アミールの親友であり召使のハッサンのこと。前半今まで見た事がないような激しい凧上げ合戦にかなりの時間を割いているがこれが後の伏線となる重要なシーンになっていてる。
邦題の「君のためなら千回でも」は本編では台詞として2回登場し、特に2回目は紆余曲折の後だけにグサッと突き刺さる。でも日本語ではこの言い回しはフツウしないでしょ。ニュアンスは‘君のために生きる’‘君を見守る’って感じでしょうか。
悲劇の舞台となるアフガニスタンをソビエトへの嫌悪感+タリバンへの恐怖感を絡めて描く。恒例なイベントだった凧揚げ合戦さえ失われたアフガニスタンという国がタイバンの武装兵士にどんな風に支配されていたのかに愕然となる。
主たる3人の子供達はカブールで暮らす一般人で本作が俳優デビューだというから驚く。そしてアミールの強い父はもちろんのこと 出番は少ないながら人種を超越したプライドあるハッサンの父親にも感嘆させられる。
豊かなアメリカで昔の贖罪をつぐなうべく1歩を踏み出した主人公に向けられた孤児院の経営者の「1人を助けても残り200人の子供は見捨てるのか・・・or1人の犠牲で200人を助けるのか」という厳しい台詞と、タリバンの1人から投げつけられた「本国に留まらず他国へ逃げた人間」という台詞がそれぞれ痛烈。
良心に目覚めた主人公の内面にメスを入れこれでもかと深くえぐり出そうとしていてお見事。





2008/6/2 【 幻影師アイゼンハイム 】
シャンテシネで「幻影師アイゼンハイム」を観た。
原題「The Illusionist」とあるように所謂イルージョンなのだけれど敢えて‘幻影師’と言っているのがピッタリくるのが納得のような時代を感じさせる時代的な重厚感のある作品だった。
映画では幻影師の目線ではなく、第3者の警部の目線なのでマジックは観客目線。なのでイルージョンを楽しむ立場ということで種明かし無くて良いという設定なのかもしれないけれど、私はなんかひっかかると言うかスッキリできなかった。というのも映画の中での主人公のマジックショーがどんだけ凄くても目の前で見ているワケじゃないのでCGとかあらゆる技術がある映画で見せられても驚かないし、最後まで種明かしのないマジックにはフラストレーションが溜まっちゃう。
今でもあの客席を歩く少年の霊はどーやったのか分からないし知りたくてしょーがない。イルージョンはわからないから面白いとも言えるからこの点では意見は分かれるのかも。
総じてこの作品の満足度が高いのはラストの警部の表情の意味によるものと思われ自分が何を観てきたのかを問われるということに起因しているのでしょう。手法は面白いながらどうも中途半端感が残っちゃった。全体の流れを知った上でもう1度観たい。





2008/5/11 【 歓喜の歌 】
 歓喜の歌」を観た。
原作は立川志の輔の最高傑作に数えられる新作落語「歓喜の歌」。
安定にあぐらをかき事なかれ主義で上から目線の公務員のマイナスイメージそのものを小林薫が演じている。ちゃらんぽらんな自業自得のミスによる‘ダブルブッキング’のトラブルを引き起こす。このことで、家庭不和+金銭トラブルに新たに仕事のミスが加わりまさに三重苦。
職場の市民会館での金魚の餌やりも重要な仕事という冒頭のシーンが象徴的。この金魚も後々ちゃんとリンクしてくるから面白い。
立川志の輔も師匠の談志もゲスト出演しているが、登場人物の絡み方がよく練られていると思った。2つのコーラスグループの「セレブ奥様」vs「パート主婦」の対比が面白く、11人のキャラが身近に「こーいう人いるいる」と思われなんか笑える。市井の人々をよくここまでリアルに描き出したものだ。
窮地の中、なんとか解決すべく市民会館の外へ出ることで徐々に自身にも変化が起きてくる。どことなくとぼけた主人公のアタフタに笑いながらもささやかな日常の奇跡にあったかくなった。




2008/5/1 【 紀元前1万年前 】

紀元前1万年前」を観た。
構想に15年という紀元前1万年前の‘誰も見たことのない世界’。壮大な世界でマンモスやサーベルタイガーや恐鳥がCG技術で迫力で登場。あの時代よく人類は戦えたものだと勇気に感心。この映画はタイトルから想像する歴史的なことよりも、1人の若者の成長を描いた英雄伝説となっている。頼りなかった主人公がこの時代に奪われたヒロインを求めて戦いの旅に出ていく。何故か他の多くの民族はそれらしい中、どう見ても主人公は英語を話す西洋人というのは腑に落ちないけれどまぁ映画ではよくあるパターン。肝心の「青い目の子供の伝説」が青い目のヒロインの子供が王となっていくことを暗示しているのだろうけれどイマイチ中途半端だったような。
映画史上最大規模のセットという巨大なピラミッド建設ではマンモスを使っていたりとビックリ映像も登場。全体的にストーリーは分かりやすいが、当時の預言者の巫母が絡む終盤の驚く展開にはそんなのあり?と思ったが「伝説」として受け止めあまりつっこまないほうが良いのかも。





2008/4/24 【 悲しみが乾くまで 】

悲しみが乾くまで」を観た。
「チョコレート」を彷彿させるようにハル・ベリーがここでも家族を失った悲しみを演じている。ハル・ベリーの夫=デルトロの親友。ということでハル・ベリーの喪失感を分かち合える存在として親友を失ったヤク中の男をデルトロが演じている。
それにしてもなんかこの邦題「悲しみが乾くまで」はセンスない上に、キャッチコピー「そう、きっとあなたを利用した」も違和感がある。原題はTHINGS WE LOST IN THE FIRE。この「火事で失くしたもの」 については深く触れているシーンがあるので感慨深い。
てっきり「親友の妻」と「夫の親友」というラブ・ロマンスかと思っていたけれど、良い意味で期待を裏切ってくれた。これはそんな軽いもんじゃなく、終始人間の喪失と再生を描いているのが素晴らしい。
身勝手に当り散らす未亡人の行動は確かに行き過ぎているけれど大事な人を失うと人間は壊れるもの。それが我が身に理解できるからこそデルチオはそれを受け入れられる。二人の迫真の演技はあまりにリアルであまりに悲しくピリピリした空気がはりつめている。大事な人を失うとここまで残されたものの心は悲鳴をあげるものなのだ。
遺品を捨てるに捨てられないハル・ベリーの姿は私達にそのまま当てはまる。こーいう映画を観るにつけ思うのは、自分が逝った後、遺品を片付ける人の負担を軽くしてあげたいとか・・。生きているうちに身辺整理しようかな・・・とか。あまりに身につまされるシーンに圧倒された。
そしてヤク中のデルトロは、ドラッグの後遺症や廃人同様の姿を圧巻でみせてくれた。「Accept the good」 善は受け入れろをフツウに言える人でありたい。





2008/4/12 【 クローバーフィールド/HAKAISHA 】

クローバーフィールド/HAKAISHA」を観た。
徹底した秘密主義の下、映画史上初めてタイトルも隠した映画としても話題になっている。
この素人ビデオ撮影に関しては「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」が引き合いに出されているようで85分間手振れのホームビデオ映像はこの段階でダメな人にはダメでしょう。私はこの手振れ画像はもちろん得意ではないながらあまりの臨場感あるコワさに酔うことも忘れた。「ブレア・ウィッチ」との違いをハリウッド大作が見せ付けてくれたような。
命の危険を感じながら何が起きているのか分からないながらパニックになる様子はNYで9.11のテロともリンクする。
冒頭の人物紹介も兼ねたパーティーシーンの後、怪獣?巨大生物?の正体が一切わからないままラストまで極限の緊張感が続く。
結局アレは何だったのかわからないけれど、この映画に感してはそれが謎のままで良い。わけわからないのが一番コワいんだもの。こーいう体感型映画が今年風なのかも。「良い1日だった」というラストの台詞も秀悦。





2008/2/5 【 陰日向に咲く 】

劇団ひとりのベストセラー処女小説が原作の「陰日向に咲く」を観た。
原作はついに発行部数100万部を超えた大ベストラー。

のっけのジャムパン・とろけるマンゴー・ビックコミックスピリッツで拍手!小市民ネタをしっかり抑えているではないの。(因みにビックコミックスピリッツではテレビドラマ化映画化された作品が多く掲載されていた。例 あすなろ白書・いいひと・最終兵器彼女・鉄コン筋クリート・東京大学物語・東京ラブストーリー・奈緒子・永沢君・ピンポン・ぼくんち・めぞん一刻・YAWARA!etc
タイトルの「陰日向」のごとく、東京で生きるどこか日の当たらない人々の群像劇。心に何かをかかえた不器用な各々はどこかほっておけない。サブタイトルに「ひとりじゃない」とあるように1人じゃないと思える奇跡が起きていくそれぞれのエピソードに切なくなった。
そんな中、秋葉系アイドルヨタとアイドルのエピソードだけ独立していることに違和感が残った。しかもこれで終わりのような思わせぶりのシーンが何度もあり、エンディングに何度もフェイントをかけられている気も。全体的にはまとまりに欠けるような印象。
帰宅して原作を読んだ。
改めて気がついたのは原作の表紙の強烈な印象を残す古いアパートがちゃんと映画でも使われていたこと。
なんと・・・映画で違和感があったモロモロの点が原作ではきっちり消化される。原作では秋葉系アイドルヨタとホームレス系の面々がうまくリンクされている。
主人公を賭け事から足を洗えないシンヤにし岡田准一を起用したのはともかく、アイドルヨタを一見イケメンの塚本高史にしたのはミスキャストではないかと思える。もっとヨタっぽければ原作にあるホームレスとの接点も描けたのかもしれない。
ということで逆に原作の巧さを実感した。





2008/2/3 【 結婚しようよ 】

佐々部清監督が全編を吉田拓郎ソングで綴りたいという30年来の夢を実現した「結婚しようよ」を観た。
三宅裕司演じる平凡なサラリーマン一家の物語。
♪落葉♪から始まり、全編を通して吉田拓郎本人の曲以外にも、拓郎を歌うストリートミュージシャン、バンド活動している次女役の‘中ノ森BAND’のAYAKOさんらの20曲の拓郎ソングが流れる。♪やさしい悪魔♪も拓郎だったとは知らなかった。2006年秋、31年ぶりに行われ35000人のファンを集めた‘つま恋コンサート’のステージもおまけ。
映画館で隣のお父さんが、主人公の姿に共感してか、何度も鼻をすすって泣いていたので、そっちばかり気になってしまった。
まぁ監督はジョークでR45と拓郎世代を推奨しているだけあって、家族のために働き詰めで生きてきたお父さんや年頃の娘を持つお父さんにはたまらないのかも。
青春時代に拓郎が流れていた時代ならまだしも、初対面の他人を招き入れる・家族揃っての夕食・好きな人への手弁当・仕事の顧客との個人的交流などの各エピソードも現代ではなかなかあるようでないような・・・、その時代の違和感を緩和してくれているのが全編に流れる拓郎ソングかもしれない。残念だったのが真野響子のウェディングドレス。髪型といいまるで卑弥呼みたい(-_-;)で変だった。
私自身は特にファンではないけれど、中学時代に仲の良かった友達が拓郎の大ファンで、彼女がギターを弾きながら歌っていたのをよく聞いた思い出がある。ということで特に往年のファンでなくても、親世代が青春時代をどう過ごし、今何を大切に生きているか、そして老後をどう生きるかまでを感じることができる作品になっている。





2007/11/18 【 呉清源 極みの棋譜 】

20世紀最高の天才棋士、呉清源を描いた「呉清源 極みの棋譜」を観た。
冒頭、93歳を迎えれたというご本人・奥様・主演のチャン・チェンらとご自宅で談笑するシーンが映し出される。川端康成・坂口安吾・谷崎潤一郎からもその存在感を支持され続けたという吾清源の凛とした気品が感じられる。
中国から14歳で日本に渡り、日本人棋士に勝ち続ける一方で、緊迫した日中関係の狭間での苦悩や宗教に走る様子が静かに淡々と描かれ、ところどころ字幕のト書きにて本人の心情を表しているが、チャン・チェンのたどたどしい日本語も他の日本人俳優陣も総じて台詞が聞き取り難い。
ご本人のイメージを大切にした色あいの作品だということは伝わったがあまりにあまりに抑えて描いているためうとうとしてしまうかも。





2007/10/29 【 この道は母へとつづく 】

ロシア映画「この道は母へとつづく」を観た。

「母をたずねて三千里」が代表的で‘母を訪ねて・・・’というのは物語の原形。「お涙ちょうだい」要素が濃いとおもいきや、この作品はわざとらしい泣かせは無く、子供達の目を通して現代ロシアの暗い社会問題をリアルに織り込んでいるのが意外だった。

独学で読み書きを覚え、孤児院を脱走した顔も知らない母親を探し求めた少年の実話を、ロシアの新鋭アンドレイ・クラフチューク監督が映画化した感動作。

寒々とした景色が広がるロシアを舞台に6歳の少年が一人で顔も知らない母親を探し求めた旅をする。現実に負けることなくひたむきな少年の姿にジンとなる。金銭絡みで少年を追いかける養子仲介業のマダムでさえ、養子に出して幸せにしてあげたいという気持ちもあるので、この作品には救いのない悪人が出てこないのも良かった。





2007/10/28 【 クワイエットルームへようこそ 】

松尾スズキが、芥川賞候補となった自身の同名小説を映画化した「クワイエットルームにようこそ」を観た。
精神科の病棟といえば「カッコーの巣の上で」「17歳のカルテ」があるが、こーいう難しい世界をなんとも上手くリアリティを出しながらもコメディーに仕上げている。
内田有紀演じる主人公が睡眠薬とお酒を一緒に飲んで意識不明となり、目覚めたら手足を拘束され、点滴されながら精神病院の閉鎖病棟の一室に居た。周囲の人々の無理解や診断ミスによって自分自身がここにいるのだという主人公が、少しずつ記憶を戻して次第に現実が明らかになっていく14日間が描かれる。コミカルに描きながら反面切ない入院生活は個性的な患者たちの‘正常’‘異常’のビミョウさが興味深く、主人公に翻弄される相手役の宮藤官九郎も好演。
行き詰って「クワイエットルーム」に行くことは誰にでもかけ離れたことではないようだ。





2007/8/19 【 黄色い涙 】
永島慎二のマンガを映画化した「黄色い涙」を観た。
「嵐」のメンバー揃ってと言っても2人くらいしか知らないので目的はそちらではなくあくまで昭和30年代のノスタルジーな青春群像がお目当て。
東京オリンピックを翌年にひかえた1963年の東京で、漫画家志望・歌手志望・小説家志望・画家志望の夢を追う4人とそれを見守る勤労青年の話。
日本が高度成長に沸いていた頃に、世間と折り合いをつけられるギリギリまで夢を求める若者の姿はこの「あの頃の僕らはいつもいつでも笑っていた 涙がこぼれないように」の言葉が凝縮している。
ラストの夢を追った側と、それを見守りながら堅実に地道に生きた側のその後が対照的だった。
昭和の描き方は良かったけれど全体的に淡々としてインパクトが弱く間延びした感があり長く感じた。




2007/8/12 【 キサラギ 】

キサラギ」を観た。タイトルは自殺したとされたアイドルの名前「如月ミキ(キサラギミキ)」に拠ると思われ。

予告編を観た時は、全く興味を惹かなかったので公開してもパスするかなぁと思っていたケド、予想に反したネットでの評判の高さに、半信半疑で映画館へ。

売れないアイドルの一周忌にネットのファンサイトを通じて集まった香川照之、ユースケ・サンタマリア、小栗旬、小出恵介、塚地武雅の5人による密室会話劇。

アイドルオタクの生態を描きながら、彼らだからこそ生み出せる笑いをちりばめている。

なんでも脚本は「ALWAYS 三丁目の夕日」で日本アカデミー賞獲っている古沢良太氏によるものだとか...。まるでゲームに入り込んだように次々テンポ良くはりめぐらされた伏線二転三転する展開を楽しめる。すす  すごい!
もしかしたらこれは・・・」と自分で読める箇所があっても、更にその先はどうなるかという期待につながる。評判の高さの意味はこれだったかぁ・・・。

ミキちゃんの歌もビミョウ〜だけに逆になんかクスクス(^^)。今まで類がないような無駄な台詞を省いた会話と申し分ないキャスト陣の演技は意外性在り過ぎでレベルがとってもと〜〜〜っても高い





2007/6/17 【 恋しくて 】

中江裕司監督の「ナビィの恋」「ホテル・ハイビスカス」に続く沖縄を舞台にした最新作「恋しくて」を観た。

沖縄色を出すにかけて中江監督とBEGINがタッグルを組んだら最強よね。

これは決してBEGINの成功を語る提灯持ち作品ではなく、中江監督が創作した架空のバンド「ビギニング」の石垣島での青春物語だ。

加那子、栄順、マコト、浩の4人を演じるのは、3500人のオーディションで選ばれた沖縄県在住の現役の高校生で、演技はもちろんギターもキーボードも触ったことがなかったというから驚く。

ゆっくりと流れる心地よいユルイ空気感の中、健康的で天真爛漫な加那子と栄順の恋を絡めて、バンドメンバーの成長を描いている。

懐かしい70年代歌謡曲・奄美民謡・♪What a Wonderful WorldBEGINと全編に音楽が溢れ、伝説の深夜番組「イカ天」が三宅裕司本人の司会で観れたのはうれしいサプライズ。ナビィおばぁの平良とみも今回も健在でほっとした。

今回も、沖縄の方言が手ごわく全然わからない箇所が沢山あったので、是非是非字幕を付けてぇ〜。お願いでスっ。





2007/5/11 【 ゲゲゲの鬼太郎 】

子どもの頃にかかさず見ていたアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」が映画化。

鬼太郎のウェンツはともかく(-_-;)キャストのねずみ男・猫娘・砂かけ婆・子泣き爺等申し分なかった。

そして目玉おやじ・一反木綿・ぬりかべもよく描いていた。が、が、が、これはあの怪しくおどろおどろしいアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」とは別物だ。

そういえば妖怪大戦争も後半からSFアクションになったのが不満だったけど今回もそのパターン。中盤からアクション映画になっているし、だいたいポップな曲に合わせてファンキーなダンスをする鬼太郎なんて見たくもないのよ。もっともっと重厚に描いてよぉ。

♪カラ〜ン コロ〜ン カランコロン♪の主題歌by憂歌団もそれなりながら やっぱここはオリジナルと言えるby熊倉一雄できて欲しかった。





2007/4/28 【 クィーン 】
2007年アカデミーでヘレン・ミレンが主演女優賞に輝いた「クィーン」を観た。ダイアナ元妃の悲劇の事故からまだ10年も経っていなく、登場する人物が存命している中で、どーやってこの映画が作れたのか・・・お..おそるべしイギリス。
王室の威厳を守ること最善と考え頑なに生きてきたエリザベス女王は、スキャンダルにまみれた元嫁を毛嫌いし、葬儀についても「王室とは無関係」と黙殺する。ブレア首相や夫のエディンバラ公との会話を通しても埋まることのない嫁姑の溝がうかがい知れる。
国民が「称号がなくてもプリンセス」と言ったのはダイアナ元妃 という世論を目の当たりにしたエリザベス女王の苦悩を描き、結果的に女王とブレア首相の株は上がっているのはすごい。
あまりに冷たく辛辣に描いているエディンバラ公やチャールズ皇太子やブレア首相夫人のイメージはダウンしたが、それにしても女王のヘレン・ミレンも首相のマイケル・シーンもチャールズ皇太子もまぁ実物に良く似ていた。英王室の日常を垣間見るというワイドショーを観るような面白さもあって興味深かった。




2007/4/5 【 今宵、フィッツジェラルド劇場で 】
2006年に亡くなったロバート・アルトマン監督の遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」を観た。
ミネソタのフィッツジェラルド劇場での最後のラジオ公開生放送番組「プレイリー・ホーム・コンパニオン」の様子と舞台裏を描いている。
これ書評ではかなり評判が良いのだが、アメリカンジョークは笑えないし曲のノリもイマイチで実は前半うとうと・・・。ハイ眠ってしましました・・・しかも熟睡(-_-;)。 面白さも良さも分からなかった。
現代の設定なのにラジオ・カントリー&ウエスタン・ハードボイルド・フォークとおおよそアナログでショーも一時代昔風な雰囲気。決して若くはないミュージシャン達のたわいのない楽屋裏を絡ませ淡々と描いた群像劇。失われゆくたそがれゆくアメリカの華やかさへの愛着だろう。メリル・ストリープの歌が上手いことも驚きだが、娘役のリンジー・ローハン♪はさすがに聞かせてくれる。
劇中登場する死神が、老シンガーの死の際に言う「老人の死は悲劇じゃない」という台詞があるが、これは監督の心情だったのだろうか




2007/3/18 【 キング 罪の王 】

キング 罪の王」を観た。

まだ見ぬ実の父親に会いに行った青年が、父に拒絶されたのを機に復讐していくスキャンダラスなサスペンスドラマ。

主人公演じるガエル・ガルシアの瞳はなんて強くて綺麗なんだろう。正常ではありえない邪悪さと無邪気さを兼ね備えた心に闇を持った主人公はつかみどころがなく、不気味さもあいまって大変な存在感だ。あくまでも無表情ながら一点の曇の無い透明な瞳がものすごい冷酷さをあらわしているかのよう。

偽善の象徴として描かれる父親の職業が牧師で聖職者もまた感情を持った人間であるということも含め、信仰そのものへの警鐘をならしている。キリスト教での「罪」の曖昧さも投げかけながら、罪を告白して懺悔すれば救われるんだという考え方へのアンチテーゼだ。

このような映画がアメリカで作られたというのは感慨深い。

「罪の子」として拒否され「神の子」として受け入れられたのだが、そもそも「罪」とは何なのだろうか?余計なものを省いて淡々と先が読めない展開も良くぐいぐい引き込まれた。





2007/2/22 【 幸福な食卓 】

幸福な食卓」を観た。

母親は家を出て、父親は「父さんをやめる」と宣言したフツウじゃない家庭で、それらを静かに受け入れる主人公の少女の中3から高校生までを描いている。

タイトルにあるように食事のシーンが印象的。この映画も朝食シーンから始まる。何があっても、この家族が守り続けている食卓を囲むということが、形はいびつでもそれぞれを尊重し合っているということを感じさせる。

学校のシーンも多いのでなんとなく「中学生日記」的な雰囲気。

彼氏役の勝地涼と母親役の石田ゆり子に明らかに年齢的な違和感を感じたけれど、あったかい存在感が良かった。

この作品の最大の特長は説明的じゃないところ。特にお風呂関係の場面に強く感じた。ヒロインがお風呂場を見るシーンが複数あったり、別居中の母が何故銭湯に行くかも台詞では一切説明がないのも良い。

兄の彼女の台詞「家族は作るのは大変でも、一旦出来たらそうそうなくならない。だから甘えたら良い」がとても深い意味がある。

高校入試用の勉強「切磋琢磨」と「臥薪嘗胆」が果たして私に書けるかな?ちょっと焦った。





2006/11/24 【 カポーティ 】

日比谷シャンテ・シネで「カポーティ」を観た。

2006年アカデミー賞でフィリップ・シーモア・ホフマンが主演男優賞受賞作品。

ソックリと言っても実物のカポーティを知らないし「冷血」も読んでいないので、観るまでかなり不安だったけれど、あまりそれは関係なかった。

ただし、カポーティの絶え間ないトークが子守唄になったのか、「太陽」に続きまたしても寝てしまった。
天才というのはやはりなんとかと紙一重という言葉があるように、なんだろーこの人の持つ性格の不気味さは・・・。いくら相手が殺人犯だとしても小説を書き上げるためにここまで別人格になりきれるものか。この人には良心というものが無いのだろうか。主人公の「犯人と自分は同じ家(環境)で育ったけれど、自分は表から出て行き、彼は裏口から出て行った」という台詞が印象的。
犯人からの話を元に書き上げた本のタイトルの「冷血」はそのままカポーティを表している。
後半、「助けられなかった」と感傷的になっている主人公に、同僚ネルが「あなたは助ける気なんてなかった」と返す台詞が良い。この会話がどう本人につきささったかは定かではないながら、何かが欠落したエゴな面とやっと良心の呵責を感じたカポーティの複数の角度からの人間性が描かれていて見応えあった。





2006/11/13 【 キンキーブーツ 】

仙台のチネ・ラヴィータで「キンキーブーツ」を観た。

因みにキンキーとは@変態のA奇妙な、変わり者のという意味。ってことは直訳するとなんと「変態ブーツ」!!なんて大胆なタイトル!

「どうすれば良い?」とばかり言っていた優柔不断の靴工場の跡継ぎチャーリーとドラッグクィーンのローラが殻から抜け出すように「自分らしく生きる」ってことを見せてくれた。このローラを演じたキウェテル・イジョフォーが複雑な心境を見事に演じていて素晴らしい。

悩める男性陣?に対して婚約者も老若の従業員も含めて女性陣がなんと強いことか・・・。保守的な地方での労働者を軸に偏見もきっちり描いているのはいかにもイギリス映画。そしてドラッグクィーンを含めて美男美女が1人も出てこないのもgood

ドラッククィーンと田舎の靴工場の跡継ぎの思わぬ出会いから始まるこの話が実話に基づいているというのが驚き。

工場の従業員にはピンとこなかった かの聖地‘ミラノ’でのクライマックスとなるステージは圧巻で泣けた。良いじゃんkinkyで・・・。
変態ブーツ最高!





2006/8/8 【 かもめ食堂 】

allフィンランドロケの「かもめ食堂」を観てきました。
フィンランドといえばそうやっぱりムーミンの国!! ということで、ちゃ〜んとムーミンネタもいくつかありました。
小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ の個性派女優はさすがの存在感。舞台挨拶でもたいまさこが「たる〜い映画です」と言ったのが、良い意味でうまく表現しているかも。終始淡々とした空気感がなんとも心地良い。
ふわふわのシナモンロールとおいしいコーヒーはもちろんのこと素朴な和食が飾り気のないヘルシンキという街にとっても合うみたい。一見ありきたりなおにぎり、焼き鮭、生姜焼き、から揚げ、肉じゃが、卵焼き、とんかつもとっても美味しそう。お店も主人公の部屋も食器もシンプルで、それが考え方や生き方にも通じていてステキ。ゆったりとした時間とおいしいごはんって幸せのキーワードかも。チラシにもある「ハラゴシラエして歩くのだ。」というサブタイトルもぴったり。
あっそうそうそうフィンランド映画「過去のない男」では絶妙な間で圧倒的な存在感を出していたマルック・ベルトラも出演しています。「過去のない男」で日本語のクレイジーケンバンドの曲が妙にマッチしていたことからも、フィンランドと日本ってやっぱり実は何かと通じるのかもネ。イイネ!!





2006/8/1 【 ゲド戦記 】
宮崎駿監督の長男である宮崎吾朗が初めて監督に挑戦したという話題作。宣伝効果もあって興業面では出足が良い割には評価は厳しいようです。
映画館で観損ねた「ハウルの動く城」を先日TVで観て、かなりがっかりしたのですが、このゲド戦記もハウル並にイマイチ。声そのものへの違和感はないものの「ハウル」ではキムタク「ゲド」では岡田君とジャニーズの起用も個人的には気に入らない。まぁ評判が良くないと知った上での鑑賞だったので、思ったよりは落胆しなかったのは果たして良かったのかどうか・・・。
原作が相当しっかりしているようなので、やり方によっては面白そうな内容です。ジブリ作品といえば文句なく面白さが保証されていたのは過去の話なのでしょうか?
既に原作を読んだ観客にはどう映ったかわかりませんが、原作を読んでいない身としては、説明不足が度を越していて、消化不良。文句言う前に原作読んだほうが良いかもしれませんが、アレンが父親を刺す過程、剣にまつわること、テルーと龍の関係、テナーとゲドの関係、モアとゲドの関係etc はどうなんじゃい。但しテルーの澄んだ歌声は良かったけど・・・。館内には幼児連れのファミリーも多かったようですが、泣き出す子もいたようです。トトロっぽさを期待していたのかもしれませんが少なくとも幼児向けではないでしょう。




2006/6/5 【 嫌われ松子の一生 】
「嫌われ松子の一生」を観ました。
山田宗樹の原作のオビに中島哲也監督の「松子の一生は、真珠夫人より100倍波乱万丈で、ヒロシより100倍不幸続きで・・・松子という人に会ってみたくなりました。どうすれば会える?これは自分で映画にするしかない!と決意しました。」という言葉があったので、やはり松子に会いたかった私は映画の公開を長く待ちわびていました。が、予告編を観てビックリ。な、な、なんだこれはぁ。壮絶な人生の光と影を描く傑作巨編がなんとまぁポップでファンキーでパンクでアートでサイケでキッチュでファンタジーなことか。これには、「なんで正統派で撮ってくれないのよぉ」とがっかりしたのですが、本編を観てその危惧もふっとびました。
期待しなかったのが功を奏したのか、CGや歌詞に説明を加えることでミュージッククリップ風に見せながら描く手法を使っているのが全然変じゃない、って言うか この監督凄いかも!!原作にはないラストの演出もとても良かった。
そして何より主演の中谷美紀は「私は松子を演じるために女優という仕事を続けてきたのかも知れません」と言うだけあってまさにはまり役。愛すべき松子=中谷美紀で心に深く刻み込まれました。




2006/5/8 【 クラッシュ 】

本命視されていた「ブロークバック・マウンテン」を破って、アカデミー作品賞に輝いた「クラッシュ」を観ました。

どこかの保守的な映画監視団体には「今年最も俗悪な映画」賞として選ばれたそうですが、ここまで暗部をえぐっているのは見事。色々な人生が交差しそれが連鎖していくという群像劇は見応えあってさすがにアカデミーで脚本賞を受賞しただけあります。

LAの黒人・白人・ヒスパニック・アジア・アラブ系etc人種差別を軸に、ののしり傷付け合う人間の醜さ怒り哀しみ憎しみ孤独を描きながら、みんな本当はふれあって何かを実感したい と絶望だけで終わっていないヒューマンドラマでした。ロスに降るあの雪には希望を象徴したいという監督の意図があるそうです。人間は他人を自分のものさしで判断しがちだけれどそれがどれだけ曖昧なものか・・・史記の「禍福は糾える縄のごとし」ってのが人間性にも言えるというところでしょうか。





2006/4/2 【 風の前奏曲 】
2004年タイのアカデミー賞と言われるスパンナホン賞で作品賞など主要7部門を受賞した「風の前奏曲」を観ました。主人公がタイの民族楽器の「ラナート」奏者として成長する過程と、晩年に音楽家としての地位を確立してからを同時進行で描いています。風のシーンそして雨のシーンと自然と一体化した音色が圧巻。ライバル役のクンインは実際のラナート奏者だそうでタイでは絶大な人気があるとか。確かに音楽だけでなく目力を始め全体からかもし出されるオーラは半端じゃないです。近代化イメージの為に古くさいとして伝統音楽を排除しようとする動きがあった中での主人公の凛とした態度が良かった。そういえば日本の伝統音楽というと雅楽ということになるのでしょうが、雅楽=東儀秀樹くらいしか思い浮かばない(-_-;)。東儀秀樹も現代音楽と雅楽のコラボをしていますが、主人公がピアノとコラボするシーンはとても印象的でした。



2005/10/22 【 亀も空を飛ぶ 】

岩波ホールで上映中の「亀も空を飛ぶ」がこちらの映画祭で上映されることになりました。岩波作品が500円で鑑賞できるとは嬉しいかぎりです。なんて不思議なタイトルかと思ったのですが、両腕がない少年ヘンゴウの泳ぐ姿、赤ちゃんを背負う少女アグリン、家財道具を背負って移動するクルディスタンに暮らす人々がやはり背負っている宿命を、亀の甲羅とリンクさせているそうです。前半大人と対等にやりあう子供たちはたくましくユーモアを交えていますが、自身が世界最大の少数民族のクルド人である監督の描いたものはあまりにリアルであまりにショッキングで言葉がみつかりません。肢体不自由な子供達が地雷を掘り出してそれを買ってもらって収入としなくてはならないのはもちろんですが子供が背負える限度を超えています。約100分の上映時間は胸が締め付けられどうしでした。出演している子供達は素人だそうですがすばらしい。また少年が恋した少女のアグリンの絶望した表情は子供とは思えませんでした。感想をまとめようとしても、現在の自分の生活を崩してまで何か行動に出ることもできないのにこの映画の惨状にコメントできるはずも資格もないように思います。帰宅してクルド人について検索して勉強しましたが自分にできるのはこの程度なのでしょうか?ひたすらやるせない。



2005/7/24 【 コ-ヒー&シガレッツ 】
11のショートストーリーで構成されています。 モノクロ映像がおしゃれ。「一杯のコーヒー、一服のタバコ、ほっと幸せな時間」ということでしたが、11話全部が登場人物のかみ合わない会話と気まずい空気のオンパレードでした。 それはそれで楽しめたけど。 出演者は豪華。 一作目のロベルト・ベニーニから始まってミュージシャンのイギーポップ、スティーブン・ブシュミ等。 この映画で初めてケイト・ブランシャットって実は美人なんだと思えました。 さて、私の一番のお目当ては、20歳頃に新宿の厚生年金会館でのコンサート以来となるイギーポップ!今回映画では素顔が観れましたが、当時は過激な化粧でステージでよくズボンを下ろすことでも有名でした。 因みに私が見た時はズボンは下ろしてもすれすれまでで半ケツ止まりでした。



2005/7/3 【 コーラス 】

仏映画。 アカデミーで外国映画賞と歌謡賞ノミネート。 本国では「アメリ」の観客動員数を超え870万人以上動員した作品。 かの「ニューシネマ・パラダイス」のジャック・ペランが製作・出演していることも大きな注目です。 その愛息子が可愛いペピノ役でデビュー。 文部科学省特別推薦ということで?次女と一緒に鑑賞。 話題にはなっていても内容的に地味だと予想していたので実はさほど期待はしていなかったのですが、しみじみと堪能できました。 問題児の役柄の少年は実際の厚生施設からの出演だったとか。 撮影現場では良いムードメーカになっていたようで、とても良いスパイスになっていました。 ラストが良いです。 これがハリウッドなら「ミュージック・オブ・ハート」的な展開になるのでしょうが、そこはフランス映画、大感動より余韻というところでしょうか。





2005/6/4 【 キングダム・オブ・ヘブン 】

史劇映画に興味がある長女と一緒に観ました。 十字軍のことをある程度知っていないと、話がよくわからないかもしれません。 その意味では私より子供の方がはるかに理解度は深いせいか満足していました。当時はイスラムに比べ、キリスト教徒は戦い方も強盗さながら野蛮人だったということを敢えて、ハリウッド映画として、かなり忠実に描いたという点では評価されると思います。 反ブッシュの意識しているのか、舞台をイスラム・ユダヤ・キリスト教徒が共存していたエルサレムにしているのでパレスチナ問題やイラク戦争にリンクします。 巷ではオーランド・ブルームブーム(ややこしい)のようで来日時は大騒ぎだったようです。 実在した主人公のバリアンの要塞での戦いぶりを観るとどーしても「ロード・オブ・ザ・リング」の戦闘シーンとかぶってしまいました。 女王役のシビラは一見美しいのだけれどアップになると肌が汚いのが気になったしロマンスが中途半端だったかも。




 

2005/4/29 【 コンスタンティン 】
「マトリックス」さへ理解に欠ける私はこの映画にナンの興味も無かったのですが、宗教がかったものや悪魔とかおどろおどろしい系が好きな影武者さんがどーしても観たいらしく、テーブルの上にこの映画の書評の切り抜きを何気に置いていたりと、まるで子供のような「観たいよ〜」主張をしたので折れて一緒に観に行きました。エクソシストが主人公とあっておどろおどろしさや耽美な世界の宗教観を期待していたらしい影武者さんは観終わって「だめだこりゃ〜」。 だから言ったでしょ。 私はハナから観たくなかったのよ。 あそこまでCG全開でなんで悪魔と天使を超人間的にしてしまったのでしょう。 一気にコメディじゃないの。 悪魔と天使はあいまいな描き方のほうが良いしこの関係もキリスト教に馴染みの無い日本人にはピンとこないシチュエイションです。 ルシファーだとかミカエルだとかガブリエルとかいう名前自体が少女趣味かよ。 

 

 

2005/4/13  【 銀のエンゼル 】
マイナーな映画と思ったら意外にも映画館は半分うまっていました。映画を観終わって帰宅途中‘ローソン’の看板を思わず見上げてしまいました。今回は影武者さんに感想をお願いしました。
(以下 by影武者)脱サラ指向のある人なら一度は考えたことがあるでしょうコンビニ経営。しかしながら、まことしやかに伝え聞く、親が死んでも本部から応援を呼ばないとオーナーは店を離れられない等のうわさに、二の足を踏む人もいたでしょう。トラック運転手を志す人ひとなら、少量多品種配送、夜間運転など、その労働環境に関心を持ったひとも多いでしょう。そういった背景を面と向かって取り上げた映画はあまり記憶がありません。舞台は北海道 厳しい自然環境にやはり複雑になりえない家族関係など ひとつ間違えればくら〜い映画になりそうですが、そこは キャスティングがすばらしい。主役のコンビニ店主を演じる小日向文世さんは、この手のどこか情けないお父さん役が失礼ながらとてもよく似合う。明るく元気な配送トラック運転手の大泉洋さんは、ふだんのイメージにとても近くて自然。夜勤の店員役の西島秀俊さんもつかみどころのないこの役そのままのたたずまい。失礼ながらあまり予算が掛かっていないだろうなと思われるロケも、コンビニ一家を中心に繰り広げられるちょっと非日常的な日常と、そこに集い、懸命に生きる人々を温かく見つめた、銀のエンジェルのオマケを当てたようなドラマです。

  

 

2004/12/28 【 君に読む物語 】
ユナイテッド航空の機中で観ました。 NYタイムズベストセラーリストに1年以上ランクインしたヒット小説の映画化。 2004年夏、アメリカで大した広告もうたなかったのに口コミで人気が出て、全米で「マディソン郡の橋」「ブリジット・ジョーンズの日記」を超えたる興行収入を記録したという作品。これだけ全身全霊で愛するとは・・・今の純愛ブームにもぴったりな内容。 やっぱ最後は思わずホロリと涙が出ました。療養施設に暮らす女性にある男性が少しずつ物語をきかせるということからずばりこの邦題になったのでしょうがどーしてこーいうセンス無い邦題をつけるのでしょうか? 原題の「The Notebook」のままの方が断然良いと思うのですが・・・。 それとヒロインに恋する労働者階級の青年は真っ直ぐな性格も行動も素敵なのですが、肝心の物語のヒロインの女優さんがなにか今ひとつ魅力に欠けるのが気になりました。 この女優で物語を引っ張るのはちょっと無理を感じます。 2月5日公開予定。

 

 

2004/9/11 【 キッチン・ストーリー 】
スウェーデンの台所研究所からやってきた調査員が、ノルウェーの1人暮らしの老人の動線を、無言のまま観察するという奇妙な話。 でも実際このようなことが1950年代にあったというから驚きです。
北欧のそれぞれの国民性など知るよしもなかったのですが、右側通行・左側通行の違い以上に、気質がまるで違う。 普通に暮らしている中にきっちりかっちり型にはまった官僚的なスウェーデン人が入ってくるって想像するだけで息がつまりそう。 だいたい、ひと言も口をきかないで人の行動をじっと観察するっていう発想があるくらいだからスウェーデンって相当。 この二人のぎこちない空気に生まれる間がなんとも可笑しい。 鰊の酢漬けやチーズを食べるのは北欧らしいけど、それ以上に良かったのが、チョコレートをバリバリ食べたり、 バーボン飲みながらケーキ食べるシーン。 予告編での「北欧から届いた春のようなあたたかいお話」という言葉に、笑えるほのぼの映画かと思っていたのですが、観終わったら胸がキーンと切なくちょっと哀しくなりました。 

 

2004/9/5 【 華氏911 】
第57回カンヌ国際映画祭最高賞パルムドール、国際批評家連盟賞ダブル受賞。超話題作だけあって平日にもかかわらず混んでいました。
タイトルについては焚書・情報統制を描いた「華氏451」が紙の燃える温度(発火点)から付けた名前で、ならば9.11は自由が燃える温度だったろうという意味を込めて「華氏911」としたらしいです。今回もこわいもの知らずのマイケル・ムーアが頼もしく画面上の次から次へのデータは追いつけないほど膨大。
さて今回も感想は影武者さんにお願いしました。
(以下by影武者)
奇しくも 三回忌と言うことで TVでいろいろ特集されましたね。テレ朝でビートたけし司会番組「91テロ真相」が記憶に新しい。やっとここまで報道できるようになったか、遅きに逸したと言う感じで 数々の矛盾点を挙げていました。書籍の世界では 事件当初から指摘されていたことで 
コンノ ケンイチ氏などの刊行物にくわしいのですが、更に ユダヤの財閥 シンジケートの結びつきに詳しいですよ。要は軍事産業とユダヤの結びつきとか フリーメイソンとかの目から鱗の話が一杯です。真偽の程は皆さんの判断にまかせるとして、複雑な世の中の仕組みについて ちょっとは知ったつもりになれるかも知れません。

 

 

2004/5/3 【 コールド・マウンティン 】
先の第76回アカデミーでレニー・ゼルウィガーがハートフルで土着的な野生児というかひたすらたくましいカントリー娘を演じて助演女優賞を受賞しています。 たった一度のkissだけで恋人への一途な愛を貫くためどんな困難も乗り越えどんな誘いにも乗らないというまさに理想の男を演じているジュードロウは完璧でした。 もし「添え膳食わぬは男の恥」なーんてトンチキなことを言う方がおりましたらこの映画を観て出直して下さいませ。 おかげでジュードロウの株上がりっぱなし。 いつ帰るかわからない恋人を待つヒロインも似た者同士でひたすら一途。 裏切りも惑いもなく真っ直ぐで観ていて気持ち良い。 これぞ純愛でございます。 もう何も申し上げることはありませんと言いたいところですが、1967年生まれ37歳のニコールキッドマンが世間知らずの初心な箱入り娘っつうか深窓の令嬢を演じるには無理があるのではないでしょうか?化けるのが女優とはいえなんだかシックリきません・・・

 

 

2003/05/12 【 過去のない男 】
2002年カンヌ国際映画祭グランプリのフィンランド映画。 不幸にも暴漢に襲われたことで記憶をなくした過去のない男が「人生は後ろには進まない」ということを演じています。後ろを振り返らず前に進みたいのにそれを阻む無意味な過去やら名前やらを捨てるのが難しいだけに、この映画の予告編でみた「過去は手放せば良いのだ」というフレーズにとっても惹かれました。 「走るな、笑うな、どのみち死ぬのだから」が監督の口癖のようだったらしいですが、この映画では確かに笑顔もなければ走る事もなく終始無表情の演技が観ているこちらの笑顔を誘います。 これに加えて印象的なのが監督自身を投影するかのように登場人物が煙草を吸いまくること。 こーいうのがとっても分かりやすいこの監督のカラーなんでしょう。 カラーといえば地味な色彩が多い中での主人公の緑・赤・白・紫の鮮やかなシャツが効果的。 終始流れる音楽はイスケルマと呼ばれる歌謡曲だそうで日本語の歌詞の♪ハワイの夜♪もなんだか懐かしくてイイ感じ。 寿司をつまみながら日本酒を飲むシーンはまさに歌謡曲ていうか演歌だわ。 とりあえず私も過去より今を大事にしよ〜〜っと。

 

 

2003/04/21 【 キープ・クール 】
ここ2年の私のNo.1映画「初恋のきた道」「活きる」のチャン・イーモウ監督作品。だけど過去のこの監督のイメージを覆すような現代北京を舞台にしたコメディーだし実はこの監督だからというより主演のチアン・ウェン(姜文)目当てだす。もっさり具合?も奥深いキャラもそれはそれはタイプなのっ。失恋した男がヨリを戻そうと執念で女に付きまとうストーカーまがいの行為もこの人が演じると憎めないのよ。私もこーいう風にしつこくされたくなるわ。きっと笑っちゃって許しちゃいそう。追いかけられる女は中国国内で活躍しているトップ・モデルだそうですがむちゃくちゃカッコいい。ベリーショートのヘアに超ミニが似合うマネキンのようなスタイルにクールな顔立ち。これまでの中国映画の美人とはまた違ったタイプ。ラブストーリーじゃないのがミソで後半は男同士の奇妙な関係が主軸に。荒唐無稽な狂気をユーモアを交えハラハラさせて描いています。但し男同士の台詞の応酬が長すぎたのとハンドカメラでのめまぐるしい映像でちょっと疲れたのが残念。

 

 

2003/04/21 【 歓楽通り 】
ルコント監督。第2次大戦のフランスの娼館に生まれ育った男がある娼婦に一生を捧げようと決意するんだけどこの愛が人間イエ凡人の理解を超えてる。 彼女と結婚して幸せにとかじゃなくてその女の王子様となるべく男を世話するのよん。 「愛は与えるもの」ってか。ここまで尽くされりゃ女も本望だろうけどあんたの辞書には「嫉妬」って言葉がないわけね。 まぁ尽くすだけの人生は本人のご希望だから私がとやかく言う事じゃないけどサ。 学生時代フランスの娼婦の「夜よさようなら」っていう手記を読んで映画も観たけどなんかせっぱつまってもっと悲痛だったなぁ。 今回はランジェリーは乙女のようにラブリーだし、娼館はホントかよ〜って言いたくなるくらい香水と白粉の香りムンムンで華やかだしまるで大人のお伽噺。 ところでこの娼婦が愛する男は所謂ヒモ男で傍目から見てるとしょーもないんだけど愛は盲目ってことばを実感。 かの漫画家西原理恵子が 「ほんまもんの男ゆうたら顔かっ、身長かっ、収入かっ、ちゃうで、かいしょうや。ほしいもんはなんぼでももってきてくれはる、行きたいとこはどこへでもつれていってくれる、雨にも負けず、風にも負けず、女のワガママききたおす男や」 と述べていますが娼婦にとって尽くす男はまさにこれにぴったり。 こんな男がいながら恋愛は他の男とするなんてアンタは贅沢だわ。 全くタイプの違う男2人から愛されたっていうのは女冥利だけどこの2人の男は両極端すぎて私は辞退です。

 

 

2002/10/25 【 クィーン・オブ・ザ・ヴァンパイア 】
 アタシは別にファンじゃないけどトム・クルーズとブラピの「インタビュー・ウイズ・ヴァンパイア」から8年振りの続編。 今回はヴァンパイアが現代のロックスターとして蘇るというビックリもので前回の正当派ゴシックホラー性はかなり薄くなっちゃったのがレレレノレ〜???で戸惑いましたが本来こーいう耽美な世界は大好きなのよ。最近一家ではまっている西洋アンティークの極みだもんね。 ヴァンパイアとロックって一見意外な取り合わせなんだけど派手なメイク、セクシーさ、脱日常、ラディカルさ、自己陶酔etcと共通点ある世界かもね。 コンサートシーンもなかなかで今回久々にヘビメタ聴いてなんだかはまってしまいました。 これだけは納得できない不満は相手役の女優。 美男子を起用してなんぼの映画に添えるのにこのヒロインの顔はそれゃないでしょです。 それに比べ最強のバンパイア女王を演じている‘アリーヤ’は綺麗です。 昨年8月22歳の若さで飛行機事故による悲劇的な死を遂げたアメリカ音楽界R&Bの大スターだとか。 とはいっても聴いたことないですが・・・。 ともかく「アリーヤに捧ぐ」という字幕の意味もハイこれでおわかりぃですね。女王の過剰ともいえるエネルギッシュさと怪しい動きは並の人じゃないことがうかがえました。 なかなか引き締まったナイスバディがオーラを発しているんだけど胸は貧相なのね。ほっとしたっていうか良かったわ(笑)

 

 

2002/09/18 【 この素晴らしき世界 】
 本国のチェコ共和国では映画賞を独占しついには2000年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネートした作品。 6月から上映していてもう空いているだろうとタカをくくって行ったら・・・うへぇ〜満席。甘かった。映画を観て納得。だって何度でもリピートしたいくらい素晴らしかったんだもん。 第二次世界大戦下、チェコで暮らす夫婦がユダヤ人青年をかくまうことから生きるか死ぬか、まさに一寸先が読めない状況を生きる人々の姿をユーモアとウィットを満載して描いています。 背景に聖書があるのはこの不妊に悩む夫婦がヨゼフとマリエ(マリア)、青年がダビィデという名ってことでもわかります。 戦争に翻弄されなから生き延びようとする為にとった手法はちょっとやそっとじゃ動じないアタシでさえ胸がキリキリ断腸の思いがしたけれど(これネタばれになるから言えないの) まさにサブタイトルの「人はどうしてこんなに可笑しくて、哀しいのか」通りにラストでは涙が溢れてきました。加えてこの爽快感の正体は何なんだろう。ところでタイトルはかのサッチモの名曲♪この素晴らしき世界♪と同じね。大らかな気持ちにさせる曲だから両方「救い」ってことで共通するわん。

 

 

2002/06/30 【 きれいなおかあさん 】
 アイ・アム・サムは親に障害がありましたがこの映画は子供に障害がある設定。どちらも片親での子育ての苦悩という意味で一致。 こーいう映画を観るとあまりに登場人物が立派で足元にも及ばないワタシはなんだか親としての足りなさを実感するばかりです。 アイ・アム・サムでは現実離れした美形の子役でしたがこちらの子は本当に耳が聞えないとのこと。 理想的な母像のシーンばかりかと思いきや後半「あんたみたいな子さえ居なかったら・・・」っていう台詞があります。 よくぞ言ったよね。でもいいのよ。弱い面みせてもらって一挙にヒロインが身近になりました。 どんなに頑張っても八方ふさがりだと思ったら思い切り泣いて人生を恨めばいいのよ。 根底にゆるぎない愛情があるんだもん。 親が子供に近づく分子供も近づくものよね。今どきシングルマザーなんて珍しくもなんともないけど誰もがご立派にやっているわけじゃないでしょ。子供にメソメソ泣き顔見せてばかりのワタシだからこその言い訳かしら。 おかあさんのきれいさは化粧や服じゃなく愛ってことなんだろうけどそれにしてもこの邦題イマイチだなぁ。

 

2002/03/16 【 がんばれリウム 】
 1930年代のリバプールを舞台にある労働者一家がむかえる辛い大人の世界が子供の目を通してきっちりと描かれています。 リウム役のボロウズ君の困ったような泣きそうな無邪気な表情に思わず「がんばれリウム」と声をかけたくなるけれど 失業、対立する民族感情、家族の葛藤、複雑な宗教背景等これでもかと出口の見えない重い状況は当初予想していたハートフル映画とはちょっと違いました。薄暗い裏通りや狭い部屋にはノスタルジックな雰囲気もあり一層やるせなくなります。これまたここで終っちゃうの?というラストは子供をダシに使ったお涙映画ではないということかしら。

 

 

2001/10/25 【 GO 】
 直木賞受賞の同名小説が原作。在日韓国人の高校生が恋、友情、父親との葛藤を通じて差別と向き合いアイデンティティーを模索していく過程が描かれています。どの書評を見てもかなり評判良いしおすぎに至っては今年の邦画No.1とまで言っているみたいだけどそれほどでも・・・。 第一ラストが甘いのが気に入らない。これは主人公が私以上に心が広いってことなんでしょうけど。 ヒロインが父親から洗脳された国籍の価値観って普通なのでしょうか???この年齢の私でさえ親からそんなこと言われた事ないだけに今どきの女子高生がこだわることにかなり違和感が・・・。 良かったのが山崎努と大竹しのぶが演じる両親で一癖あるところがカッコイイ。たくましく育てるっていう意味じゃ類をみないかも・・・。 主人公の弁にあるように祖国だの民族だのにこだわるのは「ダサい」わよ。 この「ダッセー」って言葉が在日問題に対する前向きな第一歩のような気がします。  

 

 

2001/7/15 【 こころの湯 】
 下町で銭湯を営む老父と障害のある次男の元に都会に出た長男が帰郷して・・・という一家を中心にしてこの銭湯に集う常連さんがほのぼのと描かれています。 親子と兄弟それぞれの係わり合い方にとても心が温まります。 この父が語る 内陸で雨が降らない為入浴の習慣がない人々の話が良い。 花嫁が嫁ぐ前日に風呂で体を清めるという風習がある為親は穀物と引き換えにしてまで水を集め入浴させるというエピソードが私のつぼにはまりました。 さて皆さんは銭湯に通った経験がおありでしょうか?私は学生時代に同じアパートのメンバーとおしゃべりしながら通ったものです。帰りに桶を片手に濡れ髪でおでん屋さんに行ったっけ。 中国でも内風呂やら地域再開発の為にこんな憩いの場がなくなっていくという現実が残念です。
 

 

2001/6/13 【 ギター弾きの恋 】
 ウディアレン作品。 1930年代のレトロさが良い。 正しいミュージシャンの見本。 ギターでは天才なのに酒、博打、女にあけくれ盗癖があり金にだらしなく売春婦の元締めまでして自惚れが強く傲慢で人間としてダメ男。 「女とは遊ぶが必要じゃない」 「アーティストは自由であるべき」 「付いてきたければ来てもいい」etc・・・台詞もジャズマンはこーでなくっちゃのイメージ通り。 これでいいのだです。 失うまで本当に必要なものに気付かないのも主人公らしい。 打ち込めるものを持っている男はそれだけでカッコイイからこーいうダメ男に惹かれる女性心理もわかる気がする。 けど・・・自分に置き換えると仕事より何より一番に思われないとやってらんないなぁ。 現実は厳しいのだ。

 

2001/2/27 【 キャスト・アウェイ 】
 トム・ハンクス一人演技が1時間以上というのは評価されるべきだし壮絶な孤独感には絶句ですがつっこみたくなるシーンも・・・。今後火を起こすならマグライトのレンズ使ってちょ。 支えになってくれた相手は自分を過去に忘れ去ろうとするのにニックネームしか知らない相手にとっての自分の存在感はそのままとは人間の関わり合いの不思議さよね。 全くこの映画に新鮮味を感じないのは話は違えどかつて日本中を驚かせた横井さん小野田さんの件の方がショッキングだったからかもしれません。 是非北野武監督にでも映画化してもらいたいわ。 東西南北に伸びる広い交差点そのものが人生だと暗示しているかのような場面の後いっそ島に逆戻りしてくれたら別の意味で感動したかも。

  

 

2001/02/04 【 ゲット・ア・チャンス 】
 このHPの私の映画の嗜好から「もしや隠れジジ専ではないですか?」というふとどきなメールを頂戴して怒り心頭の記憶も新しいので言いたくないのですが・・・75歳のポールニューマンにメロメロです。 施設に送られてきた仮病を装う名うての銀行泥棒と看護婦がおりなす死んだようなうんざりした毎日からの逃避とは・・・この老人は本業となるとほれぼれする程余裕で仕事をこなすのよね。 カッコ良過ぎだよー。 昔よく聴いた♪TheCarsのリズムにこっちまでノリノリ。 思い切って手放したレコードの中にこの曲あったなぁ あーん後悔

 

 

2000/12/8 【 キャラバン 】


最高の収穫!
surprise gift
私のお守り

2000年度アカデミー外国語映画賞ノミネート作品。生きる為の物々交換の旅に出るキャラバン隊のロードムービーです。 1歩1歩ヒマラヤの苛酷な山を越える命懸けの旅が壮大なスケールの自然とともに圧倒してきます。 保守的長老と対照的な若者の葛藤という話は目新しさはないですが国を超え共通するものを感じます。 老人をばかにすることなかれ・・・知恵も強い精神も見習う事いっぱい。 これを観て曼荼羅の宗教画を前にお香を焚いて瞑想にふけりたいと思われた方も多いのでは? ネパール気分に浸っていたらお隣の国インド料理のお店の前でインド人に「ここ美味しいよ。ナン食べ放題」と声をかけられました。 チベット密教色とはちょっと違うけどまぁなんだか実にあやしい雰囲気に浸った1日でした。

ネパールのナガーリ文字で彫ってある真言付き指輪です  皆様も最愛の方とのペアリングにいかが?

 

 

2000/11/22 【 グリーン・ディステイニー 】
 アクションに関しては「マトリックス」より評価上です。 このタイトルは由緒正しい宝刀名ということですがこれを廻る武術対決がすごい。 ここまでやるかっていうくらいのワイヤーアクションの連発に度肝を抜かれました。 復讐・師弟・ラブも絡みもう胸いっぱいお腹いっぱいの盛沢山サービス。 特にこのラブは静かな大人向けで良いわ〜。 帰りのエレベーターで乗り合わせたおばちゃん集団が「まるで昔の日本のちゃんばらだったね」と言って盛り上っていましたが そーですか? その一言で終わってはすっごく失礼だと思うわん。 私は拍手喝采です。

 

 

2000/11/22 【 ことの終わり 】
 お客さんの年齢層が高かったのはヒロインも熟女だったせいかしら? 今秋一押しの大人の恋愛ムービーってのはエロイというだけじゃないの?全く当てハズレでした。 出会いからの展開が早過ぎだし何故そこまで惹かれあったかが見えてこないのよね。 まっ恋愛は当人にしかわからないものだけど・・・ 不倫の愛を終わらせた“第3の男”とは?で興味を引きつけておいてこの結末とはね これって他の国ではいざ知らず日本人には苦手な分野じゃないかなぁ この三角関係の当の皆さんにはあまり魅力を感じないけれど 「2度と会う事はなくても愛は終わらない」・・・この台詞だけは意義なし。  

 

 

2000/9/25 【 キッド 】
 TVCMの「おすぎです。赤い飛行機が飛んだ時・・ピーコも泣きました」につられて初日1時間前に行ったら完売ぎりぎりで全席指定だったから最前列しか取れなかったわ。 泣ける映画と言われると逆に泣けないのが私のパターンですがじんわりきます・・・私の両隣の男性は泣きがはいっていました。 特に男性はシンパシーを感じる映画かも。  「今のあなたはあの頃なりたかった大人ですか?」と聞かれると返事に困るのは私も同じ。 でも自分の思うようにいかないのが人生と達観するのはもう止めます。 主人公の年齢にはまだ達していないのだから私も充分別の人生を歩むことができるのかもしれません。 現状にながされがちでも気持ち次第で人生は何時からでもやり直しがきくのですね。 

 

 

2000/7/02 【  グラディエーター 】
 生身の戦闘とはこれほど残虐だと冒頭からガツンとやられました。 制作費の高さばかり先行して評判になっていますがローマ軍の闘いといいコロシアムのセットといい観れば納得の史劇スペクタクル。 見世物としての殺人に熱狂するローマ市民は理解を超えています。 何より大切な家族を理不尽に殺された将軍が奴隷そして剣闘士(グラディエーター)と流転の運命をたどりながらの復讐・・・。 男性に観て欲しい。 でも前の席のカップルの男性が鼻をすすっていたのが気になるわ。  本物の「男らしさ」ってものを教えてくれる映画だけに彼女が興冷めしても知〜らない。 

 

 

2000/4/07 【 救命士 】
  ・・ 場内を見てビックリ。 総勢8人のお客さんのほとんどが白髪の上品な年配の方なんだもん。 アレ?劇場番号間違えたかな?もしくは「救命士」って意外にも品のいい作品だったりする?と上映時間まで落ち付かない気持ちだったわ。 冒頭の都会の闇を見つめる主人公の語り口の演出が「タクシードライバー」にモロ似。 NYの中でもとびきり“いっちゃってる人々”の中で辛うじて仕事をこなすニコラスケイジの目の隈がすごい。 TVでよくある「大都会犯罪密着」とかいう特番を観ている気分でした。 帰りの化粧室で同じ作品を観たらしいおばさま同士が「救命士って大変なお仕事ですわねぇ」と談話していました。 ごもっともです。

 

2000/3/26 【 グリーン・マイル 】
 大感動の名作「ショーシャンクの空に」の原作者と監督のコンビとくれば前評判が高いのも当然。 超混みを予測していましたが上映2時間前で全席完売とは恐れ入りました。 私?大丈夫だったわ。 念のため3時間前にチケット買ったもーん。
 ホラーの帝王スティーブン・キングだけあって今回は超常現象ふんだんに取り入れたストーリーでした。 超常現象が嫌いな早稲田の大槻教授がご覧になったら鼻でお笑いになられるでしょうか。 でもお約束通り場内は鼻をすする音があちこちから聞こえました。 そういえば‘泣ける映画’として雑誌にランクインしていたなぁ。 ところであまりにも泣けるらしい映画としての先入観がありすぎてクライマックスではいよいよきたかー的感覚で純粋に没頭できなかったのが残念。
 人間は間違いと知りながらも流れに逆らえず葛藤 することは避けられないのかなぁ。 神からの使者は人間の原罪に翻弄される孤高の旅人でした。いい人がみんな幸せを保証されない点が悲しい。 だって私いい人だもーん...なーんてね。

 

 

2000/3/01 キッドナッパー
 ・・ 仏映画です。4人の強盗団の予測のつかないストーリーが面白かったです。 お金でつながっている人間関係というものを考えさせられます。 お金に執着するなんて嫌だわと言いたい心情ですがでもでも連日の映画館通いでお財布の中身も寂しくてビールどころかコーヒーさえ我慢して鑑賞してみてやっぱあるにこしたことはないなーって実感。(笑) ただ迫力あるシーンも少なくてスクリーンで観るほどのこともなかったかな。

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