「リリーのすべて」を観た。 原題は「The Danish girl」。 結婚から6年後にトランスジェンダーで変わっていく夫とそれを支える妻を描く。 主演のエディ・レッドメインは前年の「博士と彼女のセオリー」でホーキンス博士を演じてオスカーを受賞しているけれど、もしディカプリオの「レヴェナント」がなければ2年連続の受賞もあり得たのではないかと思うほど繊細な見事な演技だった。鏡の前で全裸になって体のラインを見るシーンなどは、えっここまでやるの?の領域。 妻ゲルダ役のアリシア・ヴィキャンデルは見事オスカー受賞ということで両者演技面では申し分ない。
でも・・・現在でも偏見はあるのだから1920年代においての苦悩は計り知れないし世界初の性別適合手術受けるリスクも現在とは比べようもないのは理解した上で、どうもこの主人公に感情移入できなかった。 主人公はリリーとして女性になる願望に目覚めてから女性のしぐさを研究したりおしゃれを楽しんだりデートしたりと自分の本能のまま行動していく。社会的な苦悩はあったとしても妻の葛藤を思いやる気持ちがどうも欠けているとしか思えなかった。 一方妻は自分が作ったきっかけで女性になることへ目覚めさせた負い目と愛する夫が消えていく幾重にも交差する思いを経てそれでも愛するゆえにサポートしていくと決める。献身的な支えは自己犠牲といえるものだけに、‘わが道を行く’主人公があまりに自分愛が強いのが対照的でなんかしっくりこなかった。 劇場はすすり泣きも聞こえたけれど私は泣けなかった。リリーとゲルダのどちらサイドで鑑賞するかによって意見が分かれそう。
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