や行     99年夏以降 劇場で観た新作映画の感想です (基本的にビデオ・DVD鑑賞した作品は含みません)



やさしい嘘と贈り物
靖国YASUKUNI
山の郵便配達
 
闇金ウシジマくん 
闇の子供たち
誘拐犯
 
U-571

夢売るふたり 
ゆれる
妖怪大戦争
容疑者 
善き人のためのソナタ
ヨコハマメリー
夜になるまえに
4ヶ月、3週と2日














2013/3/19 【 夢売るふたり 】

夢売るふたり」を観た。
阿部サダヲと松たか子の夫婦による結婚詐欺。冒頭にこれから騙されるであろう女性たちが次々に登場。
シリアスながらもだます男が阿部サダヲという真面目がゆえのとぼけたユーモアのキャラということもあって憎めない。
被害者側は結婚に憧れる寂しい心の隙があるとはいえ各自ある意味自立していて、加害者側は台詞にもあるように妻でありながら「夫の人生に乗っかっている」という対比も興味深い。
本音を吐露しない妻に「お前の足りんは、金やなくて腹いせの足りんたい」という核心にせまる夫からの一言が重い。
特に印象深いのが、自転車で出かけた夫に何かただならぬ焦燥感を感じた妻が後ろ姿を追うシーン。何かの変化を予言しているかのように振り向いた夫の姿を重ねることでお互いのざわざわ波立つ心情を描きあげる。
かもめを見上げるラストシーンもしかりで、「ゆれる」の西川美和監督だけあって、大事なところは、敢えて饒舌なセリフに頼らないで描く手法が際立っているし、タイトルも上手い。





2013/3/15 【 闇金ウシジマくん 】

闇金ウシジマくん」を観た。
真鍋昌平原作の累計600万部のベストセラーコミックの映画化。
闇金というアングラな題材で、追い詰められた人間圧倒的なリアリティで日本社会の現実を描く。深夜放送のドラマ版も見ていたし、原作はかなりはまって全巻突破(*_*)
映画は原作の「ギャル汚くん」と「テレクラくん」と「出会いカフェくん」をmixさせたような内容になっていた。
ギャル汚くんの話では演じた林遣都がイメージよりフツウっぽかったのでもっと盛って欲しかったけれど、原作の強烈な気持ち悪いラストが映画でもそのまんま再現されていてちょっと感動()
それに比べえ汚れ役にもかかわらずきわどいシーンが皆無にせざるおえなくなった大島優子のキャスティングは残念としか言いようがない。「ヒミズ」に続いてのロクでもない母親を演じた黒沢あすかは、まさかのたるみ気味のお腹からして体当りだっただけに、娘役は黒沢あすかに見合うだけのキャスティングにして欲しかった。
主人公の丑嶋君の山田孝之に対峙する相手として申し分なかったのが肉蝮を怪演した新井浩文。特殊メイクだというけれどボロボロの歯といい不気味なたたずまいも忠実で完璧に原作のキャラを再現してくれた。
それにしても原作にある丑嶋社長の迷言「俺は客を粗末に扱ったりはしねェ。最後の一滴までキッチリ搾り取る」の通り非情ながら一貫してぶれない冷静沈着なそのキャラに美学のようなものまで感じ目が離せない。





2010/9/12 【 やさしい嘘と贈り物 】
やさしい嘘と贈り物」を観た。
鑑賞前は良い邦題だなって思ったけれど、‘やさしい嘘’の部分がある意味サスペンス風になっているのでそこをタイトル=ネタバレにしちゃうのはダメでしょう。原題「LOVRLY,STILL」から悪い意味でニュアンス広げ過ぎ。
実は単なる老人のラブストーリーではないので、とても現実はそう甘くないのかもしれないけれど、悪い人間が1人も登場しないのも悪意のない嘘も含めて、映像はそり遊び・馬車・雪・イルミネーションetcクリスマスシーズンの淡い時間を絵本の世界のようにあくまでファンタジックに描いている。
デジタルな映像で表現した錯綜する脳が現実なのかもしれなく哀しくシリアスな背景がありながらも家族の願いが暖かく満ちあふれている。




2008/11/23 【 闇の子供たち 】
闇の子供たち」を観た。
梁石日(ヤン・ソギル)原作は既読済み。読み進めるのが苦痛な程に原作に描かれる内容があまりにショッキングで救いがない。
映画では主人公がNGOの女性から男性の新聞記者になり、主人公自身の闇を付け加えているのが大きな違い。
原作のあのどうしようもない凄惨な状況下の子供たちを映像で見るのは拷問のような苦しかと思いきや、子役への精神的配慮・圧力ある中での命がけの撮影etcということで、予想したものよりかなり抑えられた作品になっていた。
臓器移植についてはフィクションということながら、決して起きてはならないこととして一石を投じている。
子供たちを移送するブローカーの男が幼い時に虐待された被害者でもあったと描くことで、悲劇が繰り返されている闇の根深さを物語っていた。




2008/10/26 【 靖国YASUKUNI 】
上映中止騒動で話題になった「靖国YASUKUNI」を観た。
あの騒動が注目を集めることになったせいか観客が多かったような。つい数ヶ月前に靖国神社に行った時に、襟を正した参拝者の様子に特別な場所ということを意識せざるおえなかったことを思い出した。
冒頭で8月15日という特別な日にここに参拝する方々を映し出す。それぞれの深い英霊への想いと対照的に、これに反する「靖国反対」の人々の想いも描かれる。ここらへんは双方を描くことでドキュメンタリーとして成り立っていると思われる。
靖国反対の日本人学生が中国人と間違われて「中国へ帰れ」callに遭うシーンはものすごい緊迫感。これに立ち会った監督の複雑な気持ちもわかるし、監督が特に反日のスタンスではなかったにしろ、やはり問題はやはり敗戦まで神社境内の鍛錬所で作られていた靖国刀の製作を再現する現役最後の刀匠・刈谷直治の映像。おそらく善意でインタビューに応じた刀匠がシンプルな質問等にもほとんど何も答えないながら、このシーンと交錯される‘100人切り’などの映像はいくらなんでも意図的としか思えず刀匠がなんか気の毒。
この刀匠以外にも出演許諾で解決していない方もいるとか・・・加えてこれに文化庁からの資金援助があったとか・・・物議には事欠かない。異例の問題作なのは間違いないみたい。




2008/6/28 【 4ヶ月、3週と2日 】
2007年カンヌ国際映画賞パルムドール受賞作の「4ヶ月、3週と2日」を観た。
1987年のルーマニアでの中絶事情は1950年のロンドンを舞台にしたイギリス映画「ヴィラドレイク」を思い出させ、違法行為と知りつつこれに関わった人もがどんなに危険だったかをつきつけてくる。
この映画では主人公がルームメイトの為に奔走した1日を描く。
ルームメイト・闇手術をする医者・主人公の彼氏・ホテルの従業員etc救いようがなく描かれていて、特にルームメイトの自分勝手さに呆れるばかり。まぁ冒頭の「キャンプに行くみたいね」の台詞からこのルームメイトの人間的ズレは予感できたけれど・・・。
融通のきかない管理された社会背景とともにルーマニアという国の閉塞感に息が苦しくなってくる。一体何回「ID」という言葉が出てきたことだろう。しょ〜もない人々&しょ〜もない状況だけに、それでも1人駆けずり回る主人公にチャウシェスク大統領による独裁政権の異常さを感じた。
テーブルを挟んで座った2人のなんでもない会話で唐突のエンド。そして映画の救いのない雰囲気とかけ離れたエンドロールで流れるラブソングはあまりに‘ノー天気’。このラブソングこそが私達のお気楽な現実の象徴なのかも。




2007/7/22 【 善き人のためのソナタ 】

2007年アカデミー外国語映画賞のドイツ映画「善き人のためのソナタ」を観た。

主人公ヴィスラー大尉は旧東ドイツの国家保安省(シュタージ)の職員で、家族もなく、職務に忠実で、感情のかけらも表情に出さない。孤独な堅物といったところか・・・。(ちなみにシュタージは、10万人の職員、17万人民間の協力者がいたとされる秘密警察)

ヴィスラーは、成功すれば出世という前提で、芸術家ドライマンを監視する。国家に忠実な主人公がヘッドフォン越しで知る監視相手の豊かな会話・西側の国の本・上司の卑劣な行動etcによりおきた心の変化。それと対照的に、どんな時代や状況でも変わらないのが、余計な事を言わず背筋を伸ばし良心に従って生きる主人公の高潔さ。

このタイトルの「善き人のためのソナタ」に関しては、監視される側のドライマンがこれをピアノで弾き「この曲を本気で聴いた人は悪人になれない。」という台詞が印象的で、これはこの作品のエンディングの付箋となっている。

このエンディングでのヴィスラーの「 This is forme これはわたしの本だ」の台詞と小さいながら晴れ晴れとした表情は圧巻。

たった20年前の監視国家の恐ろしい真実を描きながら深く感動的な余韻を残したなんとも素晴らしい作品だった。

このヴィスラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエ自身が彼の女優である妻により、10数年間自らの行動を密告され国家保安省(シュタージ)の監視下に置かれていたという。そんな彼がこの作品で逆に国家保安省(シュタージ)の職員を演じたというのは驚く。そう 実人生で彼はドライマンだったとは・・・。

そしてなんと 私がこの作品を映画館で観たのと同じ2007722日、ドイツ東部ザクセン州で胃がんのため54歳で亡くなったそうだ。残念としかいいようがない。御冥福を祈ります。






2006/12/15 【  】

韓国映画「弓」を観た。

弓は弓矢であり楽器であり老人の生き方そのもの。10年間も船上だけで暮らす少女と老人の物語。

メインの2人に台詞がないことと、幻というか霊的なものとの愛の成就という2点が前作の「うつせみ」と通じる。これが鬼才といわれるキム・ギドク監督の世界なのか。思いもよらない世界観を映し出すだけに先が読めなくことごとく意外な展開。この老人のエゴも少女の選択も全く理解の範疇を超えている。因みに「うつせみ」は酔えたけれど今回はあまりにセンセーショナル過ぎてついていけなかった。露出は少ないながらこれってR指定にならないのが不思議。

この監督は敬虔なクリスチャンだそうだ。もしこの映画の‘その後’があるならもしかしたら「処女懐胎」を描いていたかもしれない。





2006/10/26 【 ゆれる 】

ゆれる」を観ました。完成度の高さに圧倒され観終わってすぐに席を立てない程。
小さな町で家業を継いだ実直に生きる兄と東京で成功し自由奔放に生きる弟というこの対照的な2人の心の奥底に眠る羨望や嫉妬や罪悪感などの葛藤を軸に展開していく。鍵となる兄が背中を向け洗濯物をたたんでいるシーンも含めて香川照之はただただ圧巻。
この「ゆれる」というタイトルが作品全てを表している。洗面台の水、つり橋、川面、暗室の水、つり橋、ゆれる記憶、ゆれる兄弟の絆・・・。事件なのか事故なのか何が真実なのか最後まで観客の感情をゆらし、7年もの歳月を経た後に弟が見えたものとは。そして兄が見せたのあの表情は何を意味しあの後どうなったのか観客に判断をゆだねたまま終わるラスト・・・。
今回映画サークルのメンバーと一緒に鑑賞したら、なんと意外にも好き嫌いがはっきり分かれた。評価もゆれる ってことでしょうか。





2006/9/2 【 ヨコハマメリー 】
これは戦後50年横浜にいた伝説の娼婦のメリーさんを追ったドキュメンタリー映画です。
メリーさんが横浜から消えたのが1995年ということ。ということは一度だけ見かけたのは一体何年前のことか・・・。
関内駅の伊勢佐木町側ってなんか空気が違うせいか、映画館に行くときくらいしか足を踏み入れなかった。多分映画までの時間つぶしでふらふらしている時に、見かけたのが白い老婆。。ハマっこなら知っているらしいけど横浜生まれじゃない私はその人が有名なメリーさんとは知る由もなく、ぎょっとしてなんというか見てはいけないやばいものを見たという感じでした。それが何年も経ってこの映画で謎が解けていくとは・・・。感慨深い。
UDON
も地元出身の監督でしたが、この映画も横浜生まれの監督。街に対する愛情あればこその作品でしょう。
かつて横浜の風景の一部になっていたメリーさんをこうして映像に残してくれることで新たに見えてきたのが「伊勢佐木町」という街。ここって黄金町とか日の出町に通じるなんというか裏横浜の入り口みたいな感がありますが、メリーさんを人間として街の一部としてしまえるハマっこ気質が素晴らしい。
♪伊勢佐木町ブルース♪by渚ようこが このディープな街にぴったり(オリジナルの青江三奈のも聞きたくなりました)。そしてラストの素のメリーさんのシーンには胸が熱くなった。2004年にメリーさんを支え続けたシャンソン歌手永登元次郎氏、そして立て続けの昨年2005年に84歳で亡くなったメリーさんにご冥福を祈りたい。まさに「人に歴史あり」という作品でした




2005/8/14 【 妖怪大戦争 】
家族全員での鑑賞。 劇場は子供がいっぱい。 妖怪の第一人者の水木しげる、荒又宏、京極夏彦、宮部みゆきがプロデュースチーム「怪」を結成して参加していることだけでも期待大。 前半の「ゲゲゲの鬼太郎」でお馴染みの妖怪をはじめとするこれでもかという妖怪オンパレードは最高に楽しめました。 お化け屋敷最高!ところで「なまはげ」もいたようですが「なまはげ」って妖怪かよ。 残念だったのが対する悪霊軍団がメタリックでSF的だったこと。 全体的な雰囲気を前半のまま引っ張って欲しかった。 そうそう悪霊軍団の魔人の「加藤」は、帝都大戦で登場する「加藤」と同姓同名。 ある意味「加藤保憲」という悪役キャラが浸透したともいえるのでしょうが、ありがちな名前だけに困っている全国の加藤さんも多いかも。


    

2002/10/25 【 容疑者 】
 ピューリッツァー賞の実話をもとにした作品。 殺人犯の息子が刑事でそのまた息子が殺人を犯すという設定。 同じく父子をテーマにしている「ロード・トゥ・パーディション」は宣伝も派手だしいかにもハリウッド様だぞ〜でしたがこちらはアメリカの正義とか拝金主義とは違うノリで実生活をすくいとったとてもドメステックなものでした。 井筒監督がこっちはアメリカの邦画だと表現していたけど同感。 小さい映画だけどしみじみした大人向け。 これモデルとなった本人が健在でこの映画も観たそうです。 なんでも撮影現場はデ・ニーロの即興メソッドに魅せられたアドリブのデ・ニーロ塾のようだったとか。 デ・ニーロはもちろんのこと息子役も演技しているとは思えないくらいリアルでした。 唯一の不満は邦題。 前の「ザ・ダイバー」もそうだったけど邦題つけた人どっかおかしいんじゃないの。 これじゃまるでサスペンスやアクションを想像しちゃうじゃん。 劇場ガラガラだったせいもこれに一因あるんじゃないかい?ぶつぶつぶつ・・・。原題は「浜辺の町(CityByTheSea)」。 これはかつて繁栄したけど今は荒廃してスラム化しているロングアイランドとこの親子の関係をクロスさせています。 こっちの方がまだ良いと思いませんか?

     

2001/10/01 【 夜になるまえに 】
 2001年アカデミー主演男優賞ノミネート作品。 予告編で観てもあまり惹かれなかったのに劇場へ行く気になったのはひとえに舞台がキューバだから。 細かいことはこだわらずおおらかに音楽やダンスに浸って人生を楽しもうという「サルサ」「ビバビバキューバ」では描かれなかったキューバの別の顔も知らされました。 独裁政権下だから自由な執筆ができない状況なのはまだわかるけれどホモセクシャルというだけでも同レベルの弾圧を受けここまでひどい辛酸をなめるとはねぇ・・・ ホモである罪って何でしょう? 何でもアリと思わせた楽天的な国のイメージが先行していただけにショッキングでした。  彼が死を目前に綴った自伝がこの映画のタイトルになっています。 あっJディップが二役演じていますが女装の方は強烈です。 やってくれるなぁ しかも綺麗! 今回ばかりは陽気に踊り歌う人々の映像がなんだか悲しく見えました。

   

2001/6/13 【 誘拐犯 】
 身代金目的で代理母の妊婦を誘拐する犯人の一人をアカデミー助演男優賞の記憶も新しい注目のベニチオ・デル・トロが演じています。登場人物が複雑と言うより意外な二人が実は仲良しだったり裏切りがあったりして全体が一筋縄ではいかない。 二人組犯人は罪悪感のカケラもなく苦悩も笑いも悲しみさえ表情から読み取れなくここではcoolと呼ばせてぇー。 ついでに敵対するすご腕の老いた殺し屋がフツウのおじいちゃんぽくてこれも味がある。 それにしても銃撃戦より妊婦の苦しみの叫び声が観ていて辛かったー。 出産シーンにたじろがないのはさすが根性の入った悪党よね。 立会い出産を拒絶する今どきのパパ達となんたる差かしら。

 

2001/4/23 【 山の郵便配達 】
 混んでいるとは聞いていましたが・・補助イスを出している映画館初めて。 お客さんの8割はシニアのようでアタシこの場ではyoungestかしら。 素朴な映画だけにより一層 山々や田園風景の美しさが目にしみるし人々の心の温かさが伝わります。 山道を一歩一歩踏みしめ3泊もかけて村を回るという 父親がたどってきた過酷な郵便配達という仕事を通して息子は父の側面を知り、一方父親はたくましくなった息子を見て感慨にふけります。 この父親がすごく良い。 父親の脳裏に浮かぶ回想シーンは私まで目頭があつくなりました。 近くに自称「想い余って言葉足らず」っていう人がいますがこの父親もまさにそう。 これってかなり高度な男の美学かもしれない。 華やかな生活とは無縁の実直なだけの生活ですがこの家族の絆の深さに感動。 蛇足ですが息子も母親も超美形でビジュアル的にもいけてます。 

   

2000/10/01 【 U−571 】
 第二次世界大戦中に敵艦Uボートに乗るはめになったアメリカ人という設定です。 頼りなげの副艦長が絶体絶命のピンチをどういう手腕で乗り越えていくのかとてもスリリングで面白かったです。 深い海にこだまする圧倒的な数の爆雷音は圧巻です。 でも敵駆逐艦とこのUボートの頑丈さのあまりの違いが気になります。あんなのあり??

home

Copyright(c)1999-2016 RYM Country Valley.All rights reserved.